特集 組織犯罪対策の歩みと展望

特集 組織犯罪対策の歩みと展望

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「組織犯罪対策の歩みと展望」です。

我が国の刑法犯認知件数は、平成8年から14年にかけて増加し続け、同年には戦後最多の約285万件を記録しました。このような当時の治安情勢の悪化の背景の一つには、来日外国人グループによる犯罪、薬物・銃器の密輸・密売事犯、暴力団犯罪等の組織を背景とした犯罪の深刻化が挙げられます。

警察では、組織犯罪に的確に対応するため、16年4月、警察庁に組織犯罪対策部を新設するなど、組織犯罪対策を強化し、

○ 組織犯罪に係る情報の収集、集約及び分析に基づく戦略的な取締り

○ 暴力団排除活動の推進や犯罪組織の資金源対策

○ 国内外の関係機関と連携した水際対策

等の様々な取組を行ってきました。

近年の組織犯罪情勢をみると、大規模な暴力団の末端組織や中小規模の暴力団を中心に、組織を支える資金や人材が不足している状況がみられるほか、来日外国人犯罪が検挙件数・人員ともに減少傾向にあるなど、これまでの取組による一定の成果がみられます。

他方で、犯罪組織は、警察による取締りを逃れつつ、より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るために、その活動を変化させており、依然として社会に対する大きな脅威となっています。特に、暴力団は、主要団体の中枢組織を中心に、暴力団関係企業や共生者を利用することなどにより、その活動実態を不透明化させるとともに、経済・社会の発展等に対応して、資金獲得活動を多様化させており、強固な人的・経済的基盤を維持しているとみられます。また、覚醒剤を中心とした根強い薬物需要と安定的な薬物供給が依然として存在しているほか、最近では、危険ドラッグの影響によるとみられる事件・事故の発生や、巧妙に組織化されたグループにより敢行される特殊詐欺といった新たな問題も浮上しており、これらへの対応が喫緊の課題となっています。

犯罪組織を弱体化・壊滅し、組織犯罪を撲滅するためには、末端の構成員を検挙するだけでなく、首領その他の主要幹部を検挙するとともに、徹底した犯罪収益の剥奪と資金源の遮断により、犯罪組織の中枢を切り崩すことが重要です。警察では、組織犯罪情勢の変化を的確に捉えた実効ある対策を推進するため、情報収集・分析能力の強化と戦略的な組織犯罪対策の推進に取り組むとともに、組織犯罪の取締りに有効な捜査手法の積極的活用や、関係部門・関係機関等との連携の強化を推進していくこととしています。

この特集では、まず第1節で近年の組織犯罪情勢の推移や犯罪組織の特徴的な動向を概観し、第2節で組織犯罪に対する警察の取組を紹介します。最後に、第3節では、今後の組織犯罪対策の展望について記述します。

犯罪組織は、暴力、威力と詐欺的手法を駆使しながら様々な経済・社会活動に寄生して組織の維持・拡大を図っており、その弱体化・壊滅は、社会全体で取り組むべき課題でもあります。この特集が、国民の皆様の警察の取組に対する理解を深めるとともに、今後の組織犯罪対策について考えていただく一助となれば幸いです。



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