第6章 警察活動の支え

3 警察の情報通信

(1)警察の情報通信

① 警察活動を支える警察情報通信基盤

警察の情報通信は、警察活動を支える不可欠な基盤であり、事件、事故及び災害がどこでどのように発生しても対応できるよう、警察では、各種の情報通信システムを開発し、それらを全国に整備するとともに、システムの高度化に努めている。

具体的には、独自に整備・維持管理している無線多重回線、電気通信事業者の専用回線、衛星通信回線等により構成される全国的なネットワークにより、警察庁、管区警察局、警察本部、警察署、交番等を結ぶほか、

・ 車載通信系(警察本部を中心に警察署、パトカー、警察用航空機等を結ぶ無線通信系)

・ 署活系(警察署を中心に所属する警察官を結ぶ無線通信系)

・ 携帯通信系(機動隊による部隊活動等、局所的な警察活動での無線通信系)

といった各種の移動通信システムを構築することにより、警察業務を遂行する上で不可欠な情報の伝達を実現している。

また、盗難車両、行方不明者等に関する情報を警察庁に登録することにより、第一線の警察官からの照会に即時に回答したり、運転免許証に関する情報を全国一元管理することにより、運転免許証の不正取得を防止したりするための警察情報管理システムを全国に構築することで、第一線の警察活動の支援や各種業務の効率化を図っている。

 
図表6-9 警察活動を支える警察情報通信基盤
図表6-9 警察活動を支える警察情報通信基盤
② 警察の情報通信を担う情報通信職員

警察では、各種情報通信システムの管理、運営等のため、国の機関である全国の情報通信部(注)に、情報通信に関する専門的な技術を有した職員を配置している。これらの職員は、災害等の発生時に警察通信施設に緊急で出動し、代替用のアンテナを設置するなどの通信対策や停電による電力の供給停止を防ぐための給電対策等を講ずるなど、警察情報通信の機能を維持・確保するための各種業務に従事している。

注:管区警察局情報通信部、東京都警察情報通信部、北海道警察情報通信部、府県情報通信部及び方面情報通信部
 
緊急出動する情報通信職員
緊急出動する情報通信職員

(2)各種事案への機動警察通信隊による対処

全国の情報通信部には機動警察通信隊が設置されており、事件、事故又は災害発生時等に、警察本部と現場警察官との間の指揮命令や連絡等が円滑に行われるよう、現場映像の伝送や無線の不感地帯対策など、各種情報通信対策を講じている。

事例

 平成26年8月、広島県情報通信部及び中国管区警察局情報通信部の機動警察通信隊は、広島市における土砂災害において、発災直後からデジタル映像モバイル伝送システム(注)等を活用して被災現場の土砂流出状況、国道の崩壊状況や捜索救助活動等の映像をリアルタイムで警備本部に伝送するなどした。

注:撮影した高解像度のデジタル映像を伝送するシステム
 
被災現場映像の伝送
被災現場映像の伝送

事例

26年9月、長野県情報通信部の機動警察通信隊は、御嶽山の噴火において、発災翌日から徒歩で上山し、デジタル映像モバイル伝送システムを活用して、噴火状況や山上での捜索活動の状況の映像をリアルタイムで伝送したほか、臨時に無線中継所の設置を行うなどした。

 
捜索活動映像の伝送
捜索活動映像の伝送

(3)情報管理の徹底

警察では多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(注1)を策定するなどして、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を進めている。具体的には、警察内部ネットワークの外部ネットワークからの分離、外部記録媒体の利用制限等の情報流出等を防ぐための技術的環境を整備するとともに、警察職員の情報の取扱いに係る規範意識の向上のための取組を推進している。

また、警察庁及び都道府県警察にCSIRT(注2)を設置し、警察情報管理システム等において情報セキュリティインシデント(注3)が発生した場合に、迅速かつ的確な情報の集約・分析、被害拡大の防止等を実施することとしている。さらに、これらの取組の実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした監査を継続的に実施している。

注1:警察情報セキュリティに関する規範の体系
注2:Computer Security Incident Response Teamの略
注3:不正プログラム感染事案等情報セキュリティの維持を困難とする事案

コラム 未来技術遺産(注)への登録

平成26年9月、警察本部とパトカー間等の無線通話を確保するために開発された我が国初の国産によるFM方式移動無線機であるPR-1形超短波無線電話装置が、無線通信業界の活性化や技術普及に貢献したとして評価され、未来技術遺産に登録された。本機の導入により、警察本部とパトカー間等の意思疎通が可能となり、警察の機能が飛躍的に高度化した。

注:独立行政法人国立科学博物館が20年に開始した登録制度である「重要科学技術史資料」の通称
 
PR-1形超短波無線電話装置
PR-1形超短波無線電話装置


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