第6章 警察活動の支え

第6章 警察活動の支え

第1節 警察活動の基盤

1 警察の体制

(1)定員

平成27年度の警察職員の定員は総数29万4,669人(注)であり、このうち7,741人が警察庁の定員、28万6,928人が都道府県警察の定員である。

注:27年度地方警察官増員に伴う警察法施行令の一部を改正する政令が施行された。27年4月10日現在、岩手県及び福島県において、27年度地方警察官増員に伴う県警察職員の定員を定める条例が改正されていない。
 
図表6-1 警察職員の定員(平成27年度)
図表6-1 警察職員の定員(平成27年度)
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(2)警察力強化のための取組

地方警察官については、平成13年度から25年度までの間に合計2万8,811人の増員を行ってきた(注)。刑法犯認知件数が15年以降12年連続して減少するなど、地方警察官の増員は、他の施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。

しかし、我が国の治安は、刑法犯認知件数等の指標が改善する一方で、ストーカー事案・配偶者からの暴力事案や特殊詐欺を始めとする女性や高齢者が被害者となる犯罪が多発するなど、依然として厳しい情勢にある。また、我が国を取り巻く国際情勢への的確な対応を図るとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けて、警察の事態対処能力を強化することが必要となっており、引き続き、あらゆる角度から警察力の強化に努める必要がある。そのため、警察では、大量退職期が到来していることを踏まえつつ、次のような警察力強化のための取組を強力に推進し、厳しい治安情勢に的確に対応することとしている。

注:東日本大震災に伴う、岩手県、宮城県及び福島県警察に対する750人の増員(23年度)を含む。
 
図表6-2 地方警察官の退職者数の推移(平成12~26年度)
図表6-2 地方警察官の退職者数の推移(平成12~26年度)
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図表6-3 警察官採用試験実施状況(平成17~26年度)
図表6-3 警察官採用試験実施状況(平成17~26年度)
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① 地方警察官の増員

人身安全関連事案対策(注)の強化、特殊詐欺対策の強化及び我が国を取り巻く国際情勢の変化に対応するための事案対処能力の強化を図るため、27年度には地方警察官1,020人の増員を行った。

注:98頁参照
② 退職警察職員の積極的活用

交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員を拡充し、また、再任用制度を積極的に活用することで、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能を若手警察職員に伝承している。

③ 優秀な人材確保のための採用募集活動の強化

警察庁では、警察官という職業の魅力をアピールするため、合同企業説明会への参加、警察庁ウェブサイトや民間の就職サイトを通じた情報提供等を行い、都道府県警察の採用募集活動を支援している。

(3)女性警察官の採用・登用の拡大

警察では、女性警察官の採用に積極的に取り組んでいる。毎年度1,000人を超える女性警察官を採用し、女性警察官数は年々増加している。平成26年度には約1,663人(新規採用者総数に占める比率は15.2%)の女性警察官が採用された。

女性警察官の幹部への登用も進んでおり、都道府県警察で採用され、警部以上の階級にある女性警察官は、27年4月1日現在、349人で、警察署長や警察署の刑事課長等にも登用されている。

女性が被害者となる性犯罪や配偶者からの暴力事案等の捜査、被害者支援等、女性警察官の能力や特性をいかした分野のほか、暴力団対策、警衛・警護等の分野でも活躍するなど、女性警察官の職域は全ての分野に拡大している。

また、都道府県警察では、25年5月に「警察における女性の視点を一層反映した対策の推進に関する検討会」から受けた提言を踏まえ、女性の声を積極的にくみ上げる推進体制を構築し、女性用仮眠施設の整備や装備資機材の改良、仕事と育児の両立を支援する制度の整備・拡充等の女性が活躍できる環境の整備に向けた様々な取組を推進している。

さらに、警察庁においても、様々な背景を持つ多様な人材が能力を発揮することにより、警察組織を質的に強化するため、26年12月に「警察庁における女性職員の活躍と全職員のワークライフバランス推進のための取組計画」(注)を策定し、更なる女性の採用・登用の拡大等に取り組んでいる。

注:http://www.npa.go.jp/sonota/jinji/20141217_torikumikeikaku.pdf
 
図表6-4 都道府県警察の女性警察官数及び全警察官に占める女性警察官の割合の推移(平成18~27年度)
図表6-4 都道府県警察の女性警察官数及び全警察官に占める女性警察官の割合の推移(平成18~27年度)
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図表6-5 都道府県警察で採用された警部以上の女性警察官数の推移(平成18~27年度)
図表6-5 都道府県警察で採用された警部以上の女性警察官数の推移(平成18~27年度)
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コラム 2つの夢を両立する喜び

群馬県伊勢崎警察署刑事第一課 宮下千草巡査長

2年間の育児休業を取得後、平成25年4月に職場復帰し、現在は、保育園に通う4歳の娘の育児をしながら、警察署の刑事課で犯罪統計業務や被害相談等のために来庁された方の対応等をしています。

復帰前は、刑事課での勤務経験が少なかったこともあり、仕事と育児の両立にとても不安を感じていました。しかし、部分休業制度等の支援制度を利用することで育児に費す時間を充実させ、また、理解ある上司や同僚の協力を得ながら職務に全力を尽くすことで、次第に不安もなくなりました。今は、憧れだった「刑事として働くこと」と「母親として子供を育てること」という2つの夢を両立する喜びを日々感じています。

これからは、子供の成長の勢いに負けずに私も警察官として成長し、刑事として頑張り続けることで後輩にも道を示していきたいと考えています。

 
群馬県伊勢崎警察署刑事第一課 宮下千草巡査長

(4)教育訓練

警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

① 警察学校における教育訓練

都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。

 
図表6-6 警察学校における教育訓練体系
図表6-6 警察学校における教育訓練体系
② 職場における教育訓練

警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。

③ 術科訓練の充実強化

凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、拳銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等による拳銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注:スクリーン投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置
 
映像射撃シミュレーター
映像射撃シミュレーター
 
実践的な総合訓練
実践的な総合訓練

(5)警察官の殉職・受傷

警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。平成26年中には、山岳警備救助隊の警察官が、山岳における遭難者の救助活動中に崖下へ滑落し、殉職する事案等が発生した。

警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。



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