第5章 公安の維持と災害対策

警察活動の最前線


今自分たちにできること


広島県警察本部警備部警備課(現 広島県警察本部刑事部捜査第四課)

菅 恭臣(すが やすおみ)警部補

 
メイプル君
メイプル君

平成26年8月20日未明、広島市北部を土砂災害が襲いました。広域緊急援助隊の指揮班長として現場に急行した私は、想像を絶する大量の土砂、無残に潰された家屋、付近を彷徨う被災者を目にして、一瞬、言葉を失いかけました。

しかしすぐに私は、「今こそ警察の底力を見せるときだ、今の自分たちにできることをやろう」と自分を奮い立たせ、隊員たちにも同じ言葉をかけました。隊員たちは、降り続く雨が活動を妨げ、猛暑が容赦なく体力を奪っていく中、全身泥まみれになりながら、疲れも眠気も忘れ、思いを一つにして全力で救出救助活動に当たりました。また、全国警察からの派遣部隊を始め、消防、自衛隊の方々等とも連携し、一丸となって昼夜を問わず活動を続けました。

発生から1か月近くが経った頃、遂に最後の行方不明者を発見することができました。気付くと私たちは涙を流し、誰からともなく黙祷を捧げ、ご冥福をお祈りしていました。

このような過酷な環境の中でも、隊員が心を一つにして任務を完遂できたことを誇りに思っています。これからも、広域緊急援助隊が築き上げてきた伝統と技術を継承しながら、今自分たちにできること、その職務に全力を尽くす覚悟です。

 
中央で図を指差しているのが本人
中央で図を指差しているのが本人

御嶽山噴火災害警備を経験して


長野県警察本部警備部機動隊

小口 博也(おぐち ひろや)警部補

 
ライポくん
ライポくん

私が機動隊の機動救助隊長に任命され、約半年が経過した平成26年9月、戦後最悪の火山災害となった御嶽山噴火が発災し、直ちに私たち機動救助隊にも出動命令が下されました。

現場は、標高3,000メートルを超える急峻な山岳地帯であるばかりか、その山肌は火山灰を含んだ厚い泥に覆われていた上、再噴火のおそれと硫化水素等の有毒ガスの発生、さらには降雨に見舞われるなど、これまで経験したことがない過酷な条件下での捜索・救助活動となりました。私は指揮官として、一刻も早く全ての行方不明者を発見・救助しなければならないという重い責任を背負いながら、これまで厳しい訓練を共にしてきた隊員と、懸命に捜索活動に当たりました。

連日続く捜索により、隊員の気力、体力は限界に達していましたが、そのような状況の中で私たちを支えてくれたのは、毎日山を見上げ、手を合わせて行方不明者の無事を祈る家族の方々の姿と、警察官としての誇りと使命感でした。

冬の早い訪れとともに捜索活動は一時中断となっていましたが、捜索再開に向け現在、部隊員とともに訓練を重ねています。捜索が再開となった時には、いまだ行方不明となっている方々を必ずや発見し、この任務を完遂する覚悟です。

 
写真中央が本人
写真中央が本人

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



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