第5章 公安の維持と災害対策

第4節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

平成26年中は、地震、大雨、台風、強風及び高潮により、死者・行方不明者166人、負傷者621人等の被害が発生した。22年から26年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表5-14のとおりである。

 
図表5-14 自然災害による主な被害状況の推移(平成22~26年)
図表5-14 自然災害による主な被害状況の推移(平成22~26年)
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26年中は、23個の台風が発生し、うち4個が日本に上陸した。同年7月30日から同年8月26日にかけて、台風及び前線の影響により各地で雷を伴う大雨が観測された(「平成26年8月豪雨」)。また、同年9月には御嶽山が噴火し、同年11月には長野県北部を震源とする地震が発生した。これらの自然災害により、死者157人、行方不明者9人等の被害が発生した。

① 広島市における土砂災害

同年8月19日夜から同月20日明け方にかけて、広島市を中心に猛烈な雨が降り、この影響で発生した大規模な土砂災害によって、広島県で死者74人、負傷者44人の被害が発生した。

広島県警察では、19都府県警察から、広域緊急援助隊、緊急災害警備隊等延べ約9,200人の派遣を受け、倒壊した家屋や岩石、流木等が堆積する中、被害情報の収集、被災者の救出救助、重機や警察犬等を活用した行方不明者の捜索等を実施した。

 
行方不明者の捜索活動(広島県)
行方不明者の捜索活動(広島県)
② 御嶽山の噴火

同年9月27日午前11時52分頃、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火した。この噴火により、死者57人、行方不明者6人、負傷者69人の被害が発生した。

長野県警察及び岐阜県警察では、10都県警察から、機動隊、山岳救助隊等延べ約1,300人の派遣を受け、火山灰が堆積し、火山性ガス等が発生する中、山頂付近において、被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等を実施した。

 
御嶽山山頂付近での救出救助活動(長野県)
御嶽山山頂付近での救出救助活動(長野県)
③ 長野県北部を震源とする地震

同年11月22日午後10時8分頃、長野県北部を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生し、長野市等で震度6弱を記録した。この地震により、負傷者46人の被害が発生した。長野県警察では、6都県警察から、広域緊急援助隊等延べ約230人の派遣を受け、被害情報の収集、被災者の救出救助、住民の避難誘導、安否確認等を実施した。

 
住民の安否確認活動(長野県)
住民の安否確認活動(長野県)

(2)東日本大震災への対応(注)

東日本大震災による被害は、死者15,891人、行方不明者2,579人等に上っている。

これまでに、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察(以下「被災3県警察」という。)に対し、全国から延べ約127万人の警察職員を派遣するとともに、全国警察からの特別出向等により警察官を緊急増員するなど、全国警察が一丸となって、警察活動を強力に推進している。

現在も、被災3県警察においては、福島県警察に対する応援派遣部隊約170人を含む、約4,020人体制で、仮設住宅の防犯活動、行方不明者の捜索活動、避難指示区域等における警戒警ら等を継続して推進している。

注:数値はいずれも平成27年4月10日現在のもの
 
行方不明者の捜索状況(福島県)
行方不明者の捜索状況(福島県)

(3)大規模災害への備え

① 危機管理体制の再構築

警察では、東日本大震災における反省・教訓を踏まえ、災害に係る危機管理体制を再構築するため、組織横断的な取組を行っている。

各都道府県警察においては、災害対処能力の向上や初動態勢の確立のための取組を計画的に進めているほか、南海トラフ地震、首都直下地震等の被害想定や局地的な豪雨による土砂災害等最近における災害の特徴を踏まえつつ、各都道府県の地理的特性に応じた災害対策を推進している。

また、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練等を実施しているほか、各種装備資機材の整備を進めている。

 
広域緊急援助隊合同訓練(岩手県)
広域緊急援助隊合同訓練(岩手県)
② 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害における措置について、政府における各種計画の策定・見直し等を踏まえ、引き続き、部隊派遣計画等の具体的な検討を進めている。



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