第5章 公安の維持と災害対策

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出等の取締り

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

平成21年にオバマ・米国大統領の提唱で開始された核セキュリティサミットの第3回会合が、26年3月にオランダ・ハーグで開催され、核兵器に転用可能なプルトニウムと高濃縮ウランの保有量を最小限にすることなどを盛り込んだ共同声明(ハーグ・コミュニケ)が採択された。

警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっている情勢を踏まえ、これまでに、我が国や各国が主催したPSI(注)阻止訓練に都道府県警察のNBC対応専門部隊等を派遣しており、26年8月には、米国が主催した訓練「Fortune Guard 14」に参加するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、104か国(平成26年12月末日現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。
 
我が国主催のPSI訓練におけるNBC対応専門部隊(北海道)
我が国主催のPSI訓練におけるNBC対応専門部隊(北海道)

(2)高度先端技術等の流出防止

我が国の高度先端技術とそれにより生産される製品の中には、使用方法によっては軍事用途に転用可能なものも多く含まれる。警察では、産学官の連携等による高度先端技術等の流出防止に向けた取組を行っているほか、平成26年12月までに、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を30件検挙しており、過去には、軍用の化学兵器の製造に用いられるおそれがあるとして輸出が規制されているマグネットポンプや、核開発に不可欠な遠心分離機の部品にも使用されるおそれのある炭素繊維の不正輸出事件等を検挙している。これらの事件においては、第三国を経由した迂回輸出の実態や摘発逃れを目的とした輸出名義人の偽装が確認されるなど、犯罪の手口が悪質・巧妙化しており、警察では、国内外の関係機関との緊密な連携等を通じて、違法行為に対する取締りを更に徹底することとしている。

(3)対北朝鮮措置に関係する違法行為の取締り

我が国は、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験を受けて、国際連合安全保障理事会決議に基づく措置(武器等の輸出入の禁止、人的往来の禁止等)のほか、我が国独自の措置(北朝鮮籍船舶の入港禁止措置(人道目的のものを除く。)、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等)を実施している。警察では、対北朝鮮措置の実効性を確保するため、対北朝鮮措置に関係する違法行為に対し、徹底した取締りを行うこととしており、平成27年4月までに、34件検挙している。

事例

貿易会社役員(47)らは、21年6月18日から北朝鮮を仕向地とした全ての貨物の輸出禁止措置がとられていたにもかかわらず、25年6月、卓球用品等(輸出申告価格約258万円)を、経済産業大臣の承認を受けないで、香港を経由して北朝鮮に輸出した。26年8月、同役員らを外為法違反(無承認輸出)等で逮捕した(大阪)。



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