第4章 安全かつ快適な交通の確保

2 運転者に対する取組

(1)運転者の危険性に応じた行政処分の実施

道路交通法違反を繰り返し犯す運転者や重大な交通事故を起こす運転者を道路交通の場から早期に排除するため、行政処分の厳正かつ迅速な実施に努めている。

 
図表4-18 運転免許の行政処分件数の推移(平成22~26年)
図表4-18 運転免許の行政処分件数の推移(平成22~26年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)運転適性相談の充実

警察では、障害者及び一定の症状を呈する病気等にかかっている者が安全に自動車等を運転できるか個別に判断するために運転適性相談窓口を設置している。運転適性相談窓口では、専門知識の豊富な職員を配置するとともに、相談者のプライバシーに特段の配慮をしている。また、患者団体や医師会等との密接な連携を取りながら、必要に応じて相談者に専門医を紹介するなど、運転適性相談の充実を図っている。あわせて、運転免許センターや警察署にポスターを掲示するなどにより、運転適性相談窓口の周知徹底に努めている。

 
運転適性相談を呼び掛けるポスター
運転適性相談を呼び掛けるポスター

(3)運転免許手続等の利便性の向上と国民負担の軽減

警察では、運転免許証の更新に係る利便性の向上と国民の負担の軽減のため、更新免許証の即日交付、日曜日の申請受付、警察署における更新窓口の設置、申請書の写真添付の省略等の施策を推進している。

また、障害者の利便性向上のため、試験場施設の整備・改善、漢字に振り仮名を付けた学科試験の実施や字幕入り講習用映画の活用等を推進している。

(4)国際化への対応

外国等の行政庁等の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験の一部を免除できる制度があり、平成26年中の同制度による運転免許証の交付件数は2万9,037件であった。また、警察では、外国人運転者のための安全教育ビデオを作成し、その活用を図るとともに、地域の実情に応じ、外国人運転者に対する安全教育の充実に努めている。

(5)申請による運転免許の取消し(運転免許証の自主返納)

身体機能の低下等を理由に自動車等の運転をやめる際には、運転免許の取消しを申請して運転免許証を返納することができるが、その場合には、返納後5年以内に申請すれば、運転経歴証明書の交付を受けることができる。

この運転経歴証明書は、金融機関の窓口等で犯罪収益移転防止法の本人確認書類として使用することができる。

このような運転経歴証明書制度は、運転免許証が果たしていた身分証明書としての機能を代替するものを都道府県公安委員会が交付することにより、自動車等の運転に不安を有する高齢者等に対して、自主的な運転免許証の返納を促すためのものである。

警察では、運転経歴証明書制度の周知を図るとともに、運転免許返納者への支援の強化に努めるなど、自動車等の運転に不安を有する高齢者等が運転免許証を返納しやすい環境の整備に向けた取組を進めている。

 
運転経歴証明書の様式
運転経歴証明書の様式
 
図表4-19 運転経歴証明書交付件数の推移(平成22~26年)
図表4-19 運転経歴証明書交付件数の推移(平成22~26年)
Excel形式のファイルはこちら

コラム 貨物自動車に係る交通事故防止対策のための道路交通法改正

平成16年の道路交通法改正により導入された中型免許制度については、貨物自動車に係る交通事故抑止に一定の効果を上げている。しかし、一般的な乗用自動車に比べ貨物自動車を中心とする車両総重量がより重い車両に係る死亡事故は、その発生の頻度がいまだ高い状況にある。

また、近年の貨物自動車を取り巻く情勢の変化により、集配等で利用頻度の高い積載量2トンの貨物自動車に保冷設備等が取り付けられることによって、車両総重量が5トンを超え、その運転に中型免許が必要なものが多くなっている。一方、中型免許の取得可能年齢が20歳であることから、高校を卒業して間もない若年者が直ちにこれを運転することができず、運転手の人材確保に影響を及ぼしているとの指摘もあった。

このような状況を踏まえ、社会実態にも配慮しつつ、貨物自動車による交通事故を防止するため、準中型免許を創設し、その免許については18歳から取得することを可能とすることなどを内容とする道路交通法の一部を改正する法律が、27年6月、第189回国会において成立した。

 
図表4-20 準中型免許の創設
図表4-20 準中型免許の創設


前の項目に戻る     次の項目に進む