第4章 安全かつ快適な交通の確保

2 交通事故死者数の減少幅が縮小している背景

死者数は、平成13年以降一貫して減少しているが、近年は減少幅が縮小傾向にあり、死者数が減りにくい状況となっている。その背景としては、以下の要因が考えられる。

 
図表4-3 致死率及び死者数の推移(平成17~26年)
図表4-3 致死率及び死者数の推移(平成17~26年)
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(1)高齢者の人口の増加

高齢者は他の年齢層に比べて致死率(注)が約6.5倍と高く、死者数全体の約半数を占めている。近年、他の年齢層の人口が減少していく一方、高齢者の人口が年々増加し、高齢者の交通事故死者数が減りにくくなっていることが、死者数全体の減少幅が縮小している一因と考えられる。

注:致死率=死者数÷死傷者数×100
 
図表4-4 高齢者及び高齢者以外の死者数の推移(平成17~26年)
図表4-4 高齢者及び高齢者以外の死者数の推移(平成17~26年)
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(2)エアバッグ装着車率、シートベルト着用者率等の頭打ち

平成26年中のシートベルト非着用者の致死率は着用者の14倍以上であり、シートベルトの着用が交通事故の被害軽減に寄与していると認められるが、シートベルト着用者率は、最近は90%台前半で横ばい状態にあり、後部座席同乗者の着用率も伸び悩んでいる。また、エアバッグ装着車率は17年までにほぼ100%、ABS(注)装着車率は25年までに98.1%まで上昇した。これまでの向上が自動車乗車中の死者数減少に大きく寄与してきたが、近年、エアバッグ装着車率、シートベルト着用者率等が頭打ちになっていることが、死者数の減少幅が縮小している一因と考えられる。

注:Antilock Brake Systemの略
 
図表4-5 シートベルト着用者率等の推移(平成17~26年)
図表4-5 シートベルト着用者率等の推移(平成17~26年)
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(3)飲酒運転による交通事故件数の下げ止まり

自動車等の運転者(第1当事者)の飲酒運転による事故での死亡事故率は、全体と比べて7.8倍と高い。平成14年以降、累次の飲酒運転の厳罰化、飲酒運転根絶に対する社会的気運の高まり等により飲酒運転による交通事故件数は大幅に減少してきたが、近年、下げ止まり傾向にあることが、死者数の減少幅が縮小している一因と考えられる。

 
図表4-6 死者数及び飲酒運転による交通事故の構成率の推移(平成17~26年)
図表4-6 死者数及び飲酒運転による交通事故の構成率の推移(平成17~26年)
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