第3章 サイバー空間の安全の確保

第2節 サイバー空間の脅威への対処

1 総合的なサイバーセキュリティ対策の強化

情報通信技術の進展と共に、サイバー空間では次々と新たなサービスや技術が現れており、その利便性が向上している反面、これらを悪用したサイバー犯罪・サイバー攻撃の手口も日々新たなものが現れている。警察では、こうしたサイバー空間の脅威に的確に対処するべく総合的な対処能力の強化を図っている。

(1)サイバーセキュリティ対策の司令塔機能の強化

サイバー空間の脅威への対処が警察のいずれの部門にとっても大きな課題となっていることを踏まえ、警察庁では、サイバーセキュリティ対策全般の司令塔としての機能を強化するため、平成26年4月、サイバーセキュリティに関する各種取組の総括・調整を行う長官官房審議官(サイバーセキュリティ担当)及び長官官房参事官(サイバーセキュリティ担当)を設置した。同審議官及び同参事官は、

・ サイバーセキュリティ戦略の策定

・ サイバー空間の脅威への総合的な対処方針の策定

・ 捜査員等の人材育成に関する指針の立案

・ 民間事業者、外国機関等との連絡の総括

・ サイバー空間の情勢の総合的な分析

・ 部門横断的な捜査支援・技術支援の調整

・ 装備資機材の効果的な整備・活用の調整

といった取組を推進している。

 
図表3-4 警察におけるサイバー空間の脅威への対処体制
図表3-4 警察におけるサイバー空間の脅威への対処体制

(2)サイバーセキュリティ重点施策の策定

警察では、平成25年1月、当面緊急に推進すべき施策として、「サイバー犯罪対処能力の強化等に向けた緊急プログラム」を策定し、各種施策を推進してきたが、同プログラムの策定から時間が経過したことから、警察庁では、新たな手口や技術の出現等、サイバー空間をめぐる最近の情勢を踏まえ、今後注力して取り組むべき施策として、26年9月、「サイバーセキュリティ重点施策2014-2015」を策定した。

今後、新たな産学官連携の枠組みとして業務を開始したJC3(注)等との連携による情報収集・分析や、事後追跡可能性の確保に向けた施策等を着実に実施し、サイバー空間の安全・安心の確保に努めることとしている。

注:53頁参照

(3)サイバーセキュリティ研究・研修センターの取組

警察庁では、平成26年4月、警察大学校にサイバーセキュリティ研究・研修センターを設置した。同センターは、解析研究室と捜査研修室の2室で構成され、両室は相互に連携しつつ、以下の取組を実施している。

 
図表3-5 サイバーセキュリティ研究・研修センター
図表3-5 サイバーセキュリティ研究・研修センター
① 情報技術解析の高度化・効率化に資する研究

解析研究室では、外部の研究機関等と共同研究を行うなど、民間の知見を取り入れつつ、サイバー犯罪等に悪用され得る最先端の情報通信技術について研究を行っている。このほか、電子機器等の解析手法の確立に向けた研究も行うなど、警察・民間双方の知見を融合・活用した研究活動を展開している。

② サイバー空間における警察全体の対処能力向上に必要な研修

捜査研修室では、解析研究室で得られた研究成果を踏まえて、サイバー犯罪対策やサイバー攻撃対策に専従する捜査員を始めとする全部門の捜査員を対象に、実際の事案を想定した実践的な訓練等を行っている。

コラム 通信履歴等(ログ)の保存について

通信履歴等(ログ)は、サイバー空間における事後追跡可能性を確保するために必要なものである。しかし、我が国では、プロバイダ等の事業者において、ログを平素から保存しなければならないこととする制度が存在しないため、犯人の追跡が困難になるなど、サイバー犯罪捜査等を行う上で大きな課題となっている。

平成25年12月に閣議決定された「「世界一安全な日本」創造戦略」、26年11月に成立した私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の附則等において、ログの保存の在り方について検討を行うこととされていた。

ログの保存が許容される期間を具体的に例示することを内容とする総務省による「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」の解説の改正を踏まえ、警察庁では、総務省と連携し、関係事業者における適切な取組が推進されるよう、必要な対応を行っている。

 
図表3-6 サイバー犯罪捜査等における事後追跡上の課題
図表3-6 サイバー犯罪捜査等における事後追跡上の課題


前の項目に戻る     次の項目に進む