第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

5 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況

① 風俗営業の状況

警察では、風営適正化法に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。

 
図表2-39 風俗営業の営業所数の推移(平成22~26年)
図表2-39 風俗営業の営業所数の推移(平成22~26年)
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② 性風俗関連特殊営業の状況

性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、無店舗型性風俗特殊営業や映像送信型性風俗特殊営業の届出数が増加している一方で、店舗型性風俗特殊営業及び電話異性紹介営業の届出数は減少している。

 
図表2-40 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成22~26年)
図表2-40 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成22~26年)
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③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況

深夜酒類提供飲食店の営業所数は、最近5年間増加している。

 
図表2-41 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成22~26年)
図表2-41 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成22~26年)
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コラム ダンス営業に係る規制の見直しのための風営適正化法改正

平成26年6月に閣議決定された規制改革実施計画等を踏まえ、警察庁では、風営適正化法による客にダンスをさせる営業に対する規制の在り方について検討するための有識者会議を開催し、同年9月、「ダンスをさせる営業の規制の在り方等に関する報告書」が取りまとめられた。これを受け、客にダンスをさせる営業に対する規制の見直し等を内容とする風営適正化法の一部を改正する法律が、27年6月、第189回国会で成立し、このうちダンスホール等営業を風営適正化法の規制対象から除外する規定は、公布の日から施行された。

 
客にダンスをさせる営業に係る規制の見直しイメージ
客にダンスをさせる営業に係る規制の見直しイメージ

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状

① 売春事犯

平成26年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員等(注)の割合は27.9%(149人)と、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。

最近では、インターネットの出会い系サイトや出会い系アプリを利用する事犯のほか、看板を掲げず、マンションの一室を使用するなど違法性風俗店の潜在化傾向がみられる。

注:4頁参照
 
図表2-42 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成22~26年)
図表2-42 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成22~26年)
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② 風俗関係事犯

26年中の風営適正化法による検挙状況は、前年に比べ、客引きの検挙件数が特に減少している。

また、わいせつ事犯の検挙状況は、前年に比べ、ほぼ横ばいである。わいせつ事犯に関しては、近年、コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつな画像を公然と陳列する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯が多くみられる。

このほか、カジノバー等における賭博事犯では、店舗の出入口に監視カメラを設置して見張りを強化したり、店舗の扉を二重扉構造に改造して補強したりするなど、警察の取締りから逃れるための悪質で巧妙な対策を講じているものがみられる。

 
図表2-43 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成22~26年)
図表2-43 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成22~26年)
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図表2-44 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成22~26年)
図表2-44 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成22~26年)
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事例

風俗店経営者の女(39)らは、25年6月頃、法令で定める店舗型性風俗特殊営業の営業禁止地域内に所在するワンルームマンションに店舗を設け、女性従業員が男性客に性的サービスを提供する営業を営んだ。また、暴力団組員の男(47)らは、同店舗として使用された部屋を住居として使用する旨を装い、24年8月から25年6月までの間、不動産会社を誤信させて賃貸借契約を締結し、同経営者らに使用させた。26年2月までに、同経営者らを風営適正化法違反(禁止地域営業、客引き)で、同組員らを詐欺罪等で検挙した(千葉)。

(3)人身取引事犯対策

警察では、入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な経営者、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。

26年中の人身取引事犯の検挙人員は33人で、そのうち風俗店等関係者が7人、仲介業者が6人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は24人で、その国籍の内訳は、日本(12人)、フィリピン(10人)、タイ(1人)、中国(1人)であった。外国人被害者の入国時の在留資格は、短期滞在(8人)が過半数を占めた。

事例

人身売買ブローカーの男(64)らは、「日本に行けばいい仕事があるので稼げる」などと甘言を用いてフィリピン人女性3人を日本に入国させ、うち2人を日本人男性2人にそれぞれ現金150万円、現金34万円で売り渡したほか、逃亡を図ろうとしたフィリピン人女性に対し、「私たちがあなたを殺しても誰にもわからない」等と言って脅迫した上、監禁した。26年8月までにフィリピン人女性3人を保護するとともに、同ブローカーら4人を監禁致傷罪、人身売買罪等で逮捕した(警視庁)。

コラム 「人身取引対策行動計画2014」の策定

政府では、人身取引が重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が必要であるとの認識の下、平成16年12月に「人身取引対策行動計画」が、21年12月に「人身取引対策行動計画2009」が策定された。両計画に掲げられた施策が着実に実施されたことにより、人身取引対策は大きく前進し、一定の成果を上げたところであるが、依然として人身取引は重大な国際問題であり、我が国の人身取引対策に対する国際社会の関心も高いことから、人身取引に係る情勢に適切に対処し、政府一体となった対策を引き続き推進していくため、26年12月、「人身取引対策行動計画2014」が策定された。

警察では、同計画に沿って、引き続き人身取引事犯の取締りを推進するとともに、関係機関・団体と協力して被害者の発見と適正な保護・支援に努めることとしている。

 
人身取引対策ポスター
人身取引対策ポスター

(4)銃砲刀剣類の適正管理と危険物対策

① 銃砲刀剣類の適正管理

平成26年末現在、銃刀法に基づき、都道府県公安委員会から10万2,300人が、20万6,631丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。26年中、申請を不許可等とした件数は32件、所持許可を取り消した件数は64件であった。また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。

警察では、銃刀法を厳正に運用し、銃砲刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。

② 危険物対策

火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。

警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

 
図表2-45 運搬届出・立入検査の状況(平成26年)
図表2-45 運搬届出・立入検査の状況(平成26年)
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コラム 空気銃射撃競技の選手育成に資するための銃刀法改正

射撃競技団体からの要望等を受け、国際的な空気銃の射撃競技に参加する選手等の育成に資するため、年少射撃資格者(注)の年齢要件を14歳から10歳へ引き下げることなどを内容とする銃刀法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が、平成26年11月、第187回国会において成立し、27年4月に施行された。また、改正法には、災害により猟銃を亡失した者等が改めてライフル銃を所持しようとする場合の特例に関する規定も盛り込まれ、同規定は、改正法の公布の日から施行された。

注:空気銃については、原則として18歳以上の者でなければ所持できないが、18歳未満の者であっても年少射撃資格の認定を受けた者は、指定射撃場で特定の射撃指導員の監督を受けて、当該射撃指導員が許可を受けて所持する空気銃を使用することができる。

(5)環境事犯対策

① 廃棄物事犯(注)

平成26年中の廃棄物事犯の検挙事件数の半数以上を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。

警察では、引き続き環境行政部局との人的な交流や情報交換を行うなどし、早期発見・早期検挙に努めている。

注:廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に係る事犯
 
図表2-46 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
図表2-46 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
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② 動物・鳥獣関係事犯(注)

26年中の検挙事件の大半を、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律違反が占めている。また、同年中には、動物愛護に対する国民の関心が高まる中、ペットを大量に遺棄する動物の愛護及び管理に関する法律違反等が目立った。

注:動物の愛護及び管理に関する法律違反及び鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律違反に係る事犯
 
図表2-47 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
図表2-47 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
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(6)探偵業に係る業務の運営の適正化

警察では、探偵業法(注1)に基づき、探偵業者(注2)の業務実態を把握するとともに、違法行為に対しては厳正に対処し、探偵業務の運営の適正化を図っている。

注1:探偵業の業務の適正化に関する法律
注2:届出のなされている探偵業者数は5,688(平成26年末現在)

事例

探偵業者の男(38)は、平成25年9月、探偵業法により交付が義務付けられた書面を交付せずに探偵業務を行う契約を結び、さらに、26年6月から7月にかけて、同様の契約の締結に際し、解除に関する事項の記載がない書面を交付するなどした。同年11月、同探偵業者の男を探偵業法違反(重要事項説明等義務違反)及び特定商取引に関する法律違反(事実の不告知・不備書面の交付)により逮捕した。また、27年1月、罰金刑が確定したことを受け、同年2月、福岡県公安委員会は、探偵業法に基づき、当該探偵業者に対して営業の廃止命令を行った(福岡)。



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