トピックス 

トピックスIV 振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の撲滅のための取組

警察では、特殊詐欺の撲滅に向け、関係機関・団体等と連携した各種の取組を実施しています。

近年、全国的に、オレオレ詐欺や金融商品等取引名目の詐欺が多発しており、平成25年中の特殊詐欺の被害総額は約489.5億円と過去最高を記録しました。こうした厳しい情勢を踏まえ、警察では、国民が安心して暮らせるよう、増加する特殊詐欺の検挙と未然防止に向けた取組を実施しています。

(1)交付形態の現状

特殊詐欺の被害者が犯人に被害金を交付する形態には、犯人が利用する預貯金口座に振り込む「振込型」、自宅等に受け取りに来た犯人に直接手渡す「現金受取型」や「キャッシュカード受取型」及び宅配便等で送付する「現金送付型」があります。平成24年までは「振込型」が5割以上を占めていましたが、金融機関等と連携した取組(注)等の効果もあり、「振込型」の割合は減少しました。一方、「現金受取型」による被害は増加し、25年中では、図表IV-1のとおり、「現金受取型」が「振込型」を上回りました。

注:被害が疑われる利用者に対する金融機関職員等による声掛け、1日当たりのATM利用限度額引下げ等の取組

 
図表IV-1 特殊詐欺の交付形態別認知状況(平成25年)
図表IV-1 特殊詐欺の交付形態別認知状況(平成25年)
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(2)被害防止・回復を視野に入れた取締活動の推進

警察では、こうした交付形態の変化に対応して、特殊詐欺の犯行グループに対する取締りのほか、次のような各種取組を推進しています。

① 「だまされた振り作戦(注)」による現金受取型の犯人の検挙

警察では、犯人から電話を受け、詐欺と見破った方々に、だまされた振りを続けてもらい、自宅等に現金を受け取りに現れた犯人を検挙する「だまされた振り作戦」を実施しており、平成25年中は682件780人を検挙しました。また、同作戦により、犯人が悪用する携帯電話や預貯金口座等に関する情報を聞き出すことにより、携帯電話事業者に対する契約者確認の求めや金融機関に対する口座凍結依頼を行って犯行ツールの無力化を図る取組も行っています。

注:特殊詐欺の電話等を受け、特殊詐欺であると見破った場合に、だまされた振りをしつつ、犯人に現金等を手渡しする約束をした上で警察へ通報してもらい、自宅等の約束した場所に現れた犯人を検挙する、国民の積極的かつ自発的な協力に基づく検挙手法

② 被害金送付先リストを活用した被害防止・回復

近年、犯行グループが被害者に指示して、指定する私設私書箱等に宅配便等で現金を送付させるといった「現金送付型」の手口が増加しています。警察では、これらの犯行に悪用された私設私書箱の住所等が記載されたリストを警察庁ウェブサイトに掲載し、広く注意を呼び掛けており、郵便・宅配事業者においては、同リストを活用して、被害金が入った宅配便等の発見や警察への通報を行っています。

コラム① 特殊詐欺被害防止のための口座凍結

警察では、特殊詐欺の犯行に悪用された預貯金口座の凍結を速やかに金融機関に求め、被害金の流出を止めるとともに、その口座が再度犯行に悪用されることを防止しています。金融機関では、警察から提供された「凍結口座名義人リスト」を活用し、リストに登載された名義人から新規の口座開設の申込みがあった場合には、口座開設を拒否するとともに、最寄りの警察署へ情報を提供しています。警察においては、こうした情報を基に被疑者の検挙を図っています。

(3)官民一体となった予防活動の推進

① 広報啓発活動の推進

警察では、様々な機会を通じて特殊詐欺の手口や被害に遭わないための注意点等の情報を積極的に国民に提供しているほか、被害に遭いやすい高齢者等に対して、戸別訪問等により、直接的・個別的な広報啓発活動を推進しています。また、被害者が犯人の言うままに金銭を渡そうとするのを家族を始めとする周囲の方が制止できるよう、地域住民や企業に対して防犯指導を行い、国民に特殊詐欺の被害未然防止に向けた注意喚起をするとともに、国民自らが被害防止に向けた取組に積極的に参画することを促すなどして、犯罪に対する社会の「抵抗力」を高めています。

コラム② 捜査の過程で入手した名簿を活用した被害防止

犯行グループは、通信販売利用者の名簿等を悪用して犯行を繰り返しています。警察が捜査の過程で押収した名簿には、「ルス」、「株やってる」、「1人暮らし」等、犯人が名簿の登載者から聞き出した生活状況等が記載されているものもありました。

警察では、これら名簿の登載者に対し、警察官による戸別訪問や警察が民間委託したコールセンターからの電話連絡を行い、注意喚起するとともに、具体的な対策を指導するなどしています。

 
警察が押収した名簿の一例(個人情報は黒塗りしてある)

警察が押収した名簿の一例(個人情報は黒塗りしてある)

② 関係機関・団体等との連携

特殊詐欺の被害金の多くがATMや金融機関窓口を利用して送金又は出金されていることから、金融機関職員等による顧客への声掛けは、被害防止のために極めて重要です。警察では、声掛けをする際に顧客に示すチェックリスト(注1)の提供、金融機関等の職員と協働で行う訓練等により声掛けを促進しており、その結果、図表IV-2のとおり、特殊詐欺の阻止率(注2)は年々上昇しています。平成25年中における金融機関職員等の声掛け等による特殊詐欺被害の阻止金額は約193億円でしたが、これは現実に振り込みや現金の送付等がなされた額(被害総額)の約4割に相当するものです。

注1:「この振込(引出)は息子や孫から電話で頼まれた/はい・いいえ」等の質問項目に回答を求めるもの

注2:阻止件数を認知件数(既遂)と阻止件数の和で除した割合

 
図表IV-2 特殊詐欺の認知件数及び阻止件数の推移(平成21~25年)
図表IV-2 特殊詐欺の認知件数及び阻止件数の推移(平成21~25年)
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コラム③ 被害者を取り巻く様々な方面からの被害防止

声掛け等による被害防止は、金融機関職員によるものが全体の約8割を占めますが、それ以外の様々な場面でも行われています。コンビニエンスストア店員や警備員、タクシー運転手による声掛け、宅配事業者による現金が入っていると疑われる荷物の発見及び通報等のほか、だまされている被害者の近くに偶然居合わせた一般の方の声掛け等による被害防止事例も少なくありません。

 
図表IV-3 特殊詐欺の未然防止者割合(平年25年)
図表IV-3 特殊詐欺の未然防止者割合(平年25年)
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