第7章 警察活動の支え |
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係は、政治、経済、文化等の広範な分野で緊密化している。こうした中、警察庁では、ASEAN加盟国治安機関との協力関係の強化に取り組んでいる。
平成26年5月には、フィリピンにおいて第34回ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注1)が開催され、我が国から警察庁幹部が出席し、犯罪のグローバル化に対処するための東アジア警察間における連携・協力の重要性等について発言するなど積極的に議論に参加した。
また、ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注2)が16年から開催されており、日・ASEAN友好協力40周年に当たる25年9月にラオスにおいて開催された第6回会議に併せ、日・ASEAN国際犯罪閣僚会議が初めて開催された。我が国からは国家公安委員会委員長が出席して、テロや国境を越える犯罪と闘うための協力の強化や、拉致問題等国際的な人道上の問題を解決することの重要性等をうたう共同声明を採択した。
このほか、警察庁では、ASEAN加盟国を始めとする外国治安機関の協力を得て、16年から東アジア地域組織犯罪対策代表者会議を、また、23年から東アジア地域犯罪組織コンタクトポイントセミナーを主催するなどし、関係治安機関との連携強化を図っている。
注1:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年に結成されたもので、我が国は中国、韓国等と共に参加している。
注2:ASEAN加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議
第1回日・ASEAN国際犯罪閣僚会議
25年4月及び同年10月には、英国においてG8ローマ/リヨン・グループ会合が開催された。我が国からは警察庁担当者等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。
警察では、我が国との間で多くの国際犯罪が敢行される国や来日外国人犯罪者の国籍国を始めとする各国の治安機関との間で協議を行い、必要に応じて警察当局間協力に関する文書を作成するなどして協力関係を深めている。25年8月には、警察庁長官がトルコを訪問し、トルコ国家警察長官と会談等を行った。また、同年10月には、韓国・ソウルにおいて韓国警察庁との間で第3回日韓警察協議を開催したほか、同年11月には、ベトナム・ハノイにおいてベトナム公安省との間で日越治安当局次官級協議を初めて開催した。
警察庁長官とトルコ国家警察長官との間の文書の署名
また、国家公安委員会委員長が、シンガポール(同年3月)、ベトナム(同年5月、7月及び9月)、モンゴル(同年7月)、ラオス(同年9月)、米国(26年1月)、イスラエル(同年2月)等の各国の首相、治安問題等を担当する閣僚又は駐日大使と会談を行い、各国治安機関との協力関係を強化した。
国家公安委員会委員長と駐日米国大使との会談の様子
PCSC協定(注)は、査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、日米両政府間で一定の情報を交換する法的枠組みを設定するものである。この協定は、平成 26年2月、日米両政府間において署名された。この協定が発効すると、重大な犯罪に関連すると疑われる人物の指紋情報について、相手国政府が保有する有罪判決確定者等一定の者の指紋情報に一致するものがあるか否かについてオンラインで照会し、自動的に回答が得られることとなる。また、一致する指紋情報があるとの回答が得られた場合には、その人物に関する追加の情報の提供を要請することができるようになる。
注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation inPreventing and Combating Serious Crime)の略称
刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。
犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものである。これまでに米国及び韓国との間で締結している。
警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかし、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力して、インドネシア、東ティモール、トルコ等に専門家を派遣して交番制度、犯罪鑑識等の分野で知識・技術の移転を図っている。平成25年中には、18人の専門家を新たに派遣し、派遣された者の数は、継続派遣中の者と合わせ延べ29人となっている。
13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施するとともに、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。24年以降、市民警察活動(POLMAS)(注)を全国展開させるため、ジャカルタ近郊の警察署をモデル警察署として活用しながら、交番制度、犯罪鑑識、通信指令システム等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。
注2:インドネシア語でPerpolisian Masyarakatの略
東ティモール政府からの要請に基づき、25年11月、専門家を派遣し、コミュニティ・ポリーシングの現状を視察した上で、助言・指導を行うとともに、東ティモールの警察官をインドネシアに引率し、インドネシア国家警察と協力しながら、交番の視察、巡回連絡の研修等を実施した。
東ティモールにおけるコミュニティ・ポリーシングに関する指導の様子
インドネシアにおける同国警察官(右から二人目)による東ティモール警察官に対する巡回連絡研修の様子
トルコ警察では、アフガニスタンの治安改善のため、同国警察の能力向上に必要な警察官訓練を実施している。我が国では、トルコ政府からの要請を受け、23年以降、同国に柔道講師の警察官を派遣してアフガニスタン警察官に対し柔道技術を指導するとともに、これらを通じて、警察官として必要な規律や職業倫理も教えている。また、22年以降、トルコ警察幹部を我が国に招へいし、トルコ警察との協力関係を強化している。
トルコ国内での訓練に参加したアフガニスタン警察官に対する指導の様子
20年9月から26年3月までの間、フィリピン国家警察に対しては、犯罪対策能力向上プログラムを実施し、警察行政、警察科学捜査(鑑識)及び犯罪捜査能力向上に関する指導・支援を行った。
警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、研修員の受入れ体制を整備し、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。25年中には、17回の研修でインドネシア、フィリピン及びモンゴル等各国の警察幹部を含む168人の研修員を受け入れている。
我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察もその一員として国際緊急援助活動を行っている。
警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ242人の隊員を13の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。
第4節 犯罪対策閣僚会議の取組と外国治安機関等との連携 |
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