第7章 警察活動の支え 

第7章 警察活動の支え

第1節 警察の基盤

1 警察の体制

(1)定員

平成26年度の警察職員の定員は総数29万3,696人であり、このうち7,728人が警察庁の定員、28万5,968人が都道府県警察の定員である。

 
図表7-1 警察職員の定員(平成26年度)
図表7-1 警察職員の定員(平成26年度)
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(2)警察力強化のための取組

地方警察官については、平成13年度から25年度までの間に合計2万8,811人の増員を行ってきた(注)。刑法犯認知件数が15年以降11年連続して減少するなど、地方警察官の増員は、他の施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。

しかしながら、我が国の治安は、刑法犯認知件数等の指標が改善する一方で、サイバー犯罪・サイバー攻撃、国際テロ、組織犯罪といった重大な脅威に直面するなど、犯罪情勢は依然として厳しく、引き続き、あらゆる角度から警察力の強化に努める必要がある。そのため、警察としては大量退職期が到来していることを踏まえつつ、次のような警察力強化のための取組を強力に推進し、厳しい治安情勢に的確に対応することとしている。

注:東日本大震災に伴う、岩手県、宮城県及び福島県警察に対する750人の増員(平成23年度)を含む。

 
図表7-2 地方警察官の退職者数の推移
図表7-2 地方警察官の退職者数の推移
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① 退職警察職員の積極的活用

交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員を拡充し、また、再任用制度を積極的に活用することで、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能を若手警察職員に伝承している。

 
図表7-3 警察官採用試験実施状況
図表7-3 警察官採用試験実施状況
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② 優秀な人材確保のための採用募集活動の強化

警察庁では、警察官という職業の魅力をアピールするため、合同企業説明会への参加、警察庁ウェブサイトや民間の就職サイトを通じた情報提供等を行い、都道府県警察の採用募集活動を支援している。

 
警察庁ウェブサイト(都道府県警察採用コンテンツ)

警察庁ウェブサイト(都道府県警察採用コンテンツ)


(3)教育訓練

警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

① 警察学校における教育訓練

都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。

 
警察学校での教育訓練1

警察学校での教育訓練

 
図表7-4 警察学校における教育訓練体系
図表7-4 警察学校における教育訓練体系
② 職場における教育訓練

警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。

③ 術科訓練の充実強化

凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、拳銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等による拳銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注:スクリーン投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置

 
映像射撃シミュレーター

映像射撃シミュレーター

 
実践的な訓練

実践的な訓練


コラム① 伝承教育~若手警察職員の早期戦力化~

大量退職期の到来による豊富な技能、知識、経験を有したベテラン警察職員の減少は、警察の職務執行力の低下につながりかねないことから、警察庁及び各都道府県警察では、実務経験豊富で卓越した専門的な技能又は知識を有する職員を技能指導官に任命し、職務執行の現場等において技能指導官による伝承教育を実施することで、職務執行力の維持・強化を図っている。

例えば、職務質問の技能に秀でた技能指導官は、パトカーによる実際のパトロールに同行し、不審者を発見するための着目点や職務質問の効果的実施方法等を指導するとともに、警察学校で行われる専門教育において、自らの経験や技能を教授している。

また、技能指導官による教育は、スペシャリストとしての仕事への取組姿勢や専門的な技能・知識を有するに至るまでの努力等を伝えることで、単なる専門的な技能・知識の伝承にとどまらず、警察職員としての職務倫理向上にも寄与している。

 
技能指導官による実技指導

技能指導官による実技指導

(4)警察官の殉職・受傷

警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。平成25年中には、交通違反車両を白バイで追跡中の交通機動隊の警察官が、対向車線を進行してきた車両と衝突し、殉職する事案等が発生した。

警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。


 第1節 警察の基盤

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