第5章 安全かつ快適な交通の確保 

3 交通事故事件捜査

(1)交通事故事件の検挙状況

平成25年中の交通事故事件に係る検挙件数は、図表5-39のとおりである。

悪質・危険な運転行為に起因する交通事故事件に対しては、危険運転致死傷罪の適用を視野に入れた、適正かつ緻密な捜査を推進しており、危険運転致死傷罪の適用件数は年間350件前後で推移している。

 
図表5-39 交通事故事件の検挙状況(平成25年)
図表5-39 交通事故事件の検挙状況(平成25年)
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(2)適正かつ緻密な交通事故事件捜査

交通事故については、26年5月に施行された自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律を踏まえ、的確な捜査を推進することとしている。

死亡事故又は重傷事故のうち、ひき逃げ事件に係るもの、危険運転致死傷罪の適用が見込まれるもの、一方の当事者の供述以外に証拠が得られないおそれがあるものなどについては、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置した交通事故事件捜査統括官等が現場に臨場して捜査を統括するなど、組織的かつ重点的な捜査を推進している。

ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を行うとともに、ミクロカラー測定検索装置(注)等の交通鑑識資機材を効果的に活用し、被疑者の早期検挙に努めている。平成25年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は92.7%に達している。

注:ひき逃げ事件現場に遺留された自動車塗膜片から容疑車両の車種を特定する装置

 
図表5-40 危険運転致死傷罪の適用件数の推移(平成16~25年)
図表5-40 危険運転致死傷罪の適用件数の推移(平成16~25年)
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図表5-41 危険運転致死傷罪の内訳(平成25年)
図表5-41 危険運転致死傷罪の内訳(平成25年)
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事例

25年3月、事業用大型貨物自動車(トレーラ車)のトレーラ部分を対向車線にはみ出させて対向車と衝突させ、そのまま逃走した死亡ひき逃げ事件について、綿密な現場痕跡等の採証、トレーラ特有の挙動の解析等を実施した。その結果、トレーラ車の運転者(45)が同方向に進行中の車両との通行トラブルから、故意にトレーラ部分のみを急制動させたことにより、トレーラ部分が対向車線に滑走し、対向車両と衝突させたことを立証した。同月、自動車運転過失致死及び道路交通法違反(救護義務違反等)で逮捕し、その後、より罰則の重い危険運転致傷罪等で送致した(警視庁)。

(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化

緻密で科学的な交通事故事件捜査を求める国民の声を踏まえ、交通鑑識に係る高度な知識及び技能を有する交通捜査員を養成するため、衝突実験に基づく事故解析等の専門的教育を行っている。

また、交通事故当事者の負担を軽減するとともに、迅速な交通事故捜査により交通渋滞を早期に解消するため、交通事故自動記録装置(注)を始めとする各種の機器の活用を図るほか、一定の軽微な物件事故について現場見分を省略する制度を活用するなど、捜査の合理化を図っている。

注:交通事故の衝突音、スリップ音等を感知し、事故の直前、瞬間及び直後の状況を録画する装置

 
事故解析に関する教育の状況

事故解析に関する教育の状況

 
交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真1

交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真

 

(4)交通事故被害者等の支援

平成23年7月に警察庁が制定した「犯罪被害者支援要綱」に基づき、適切な被害者支援が行われるよう、交通事故の被害者及びその家族又は遺族(以下「被害者等」という。)の要望や心情に配意した捜査に努めるとともに、被害者連絡実施要領(注)等に基づき、ひき逃げ事件、危険運転致死傷罪に該当する事件、交通死亡事故及び全治3か月以上の重傷事故の被害者等に対して、捜査の初期の段階から事案概要や捜査経過、被疑者の検挙状況等を連絡している。

また、被害者連絡制度、刑事手続、補償制度等のほか、事案の特性やニーズに応じた内容を盛り込んだ「被害者の手引」や各種相談窓口等を紹介した「現場配布用リーフレット」を配布している。

さらに、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置された被害者連絡調整官等を効果的に運用し、組織的かつ適切な被害者支援体制を構築するとともに、被害者等の心情に配意した適切な対応がなされるよう交通捜査員等に対する教育を強化している。

注:犯罪被害者等への捜査状況等の確実な連絡を実施するため、平成8年に制定されたもので、連絡対象となる事件、連絡内容等について定めている。

 
被害者の手引とリーフレット

被害者の手引とリーフレット


 第5節 道路交通秩序の維持

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