第5章 安全かつ快適な交通の確保 

2 交通安全教育と交通安全活動

(1)交通安全教育

① 交通安全教育指針

国家公安委員会は、地方公共団体、民間団体等が効果的かつ適切に交通安全教育を行うことができるようにするとともに、都道府県公安委員会が行う交通安全教育の基準とするため、交通安全教育指針を作成し、公表している。

警察では、関係機関・団体と協力し、この指針を基準として、幼児から高齢者に至るまでの各年齢層を対象に交通社会の一員としての責任を自覚させるような交通安全教育を実施している。

 
小学生を対象とした交通安全教育

小学生を対象とした交通安全教育


② 事業所等における交通安全教育

一定台数以上の自動車を使用する事業者等では、道路交通法の規定に基づき選任された安全運転管理者により、指針に従って適切に交通安全教育を実施することが義務付けられており、警察では、安全運転管理者等を対象とした講習を行うなど必要な指導を行っている。

(2) 交通安全活動

警察では、様々な形で関係機関・団体や交通ボランティア(地域交通安全活動推進委員(注1)、交通指導員(注2)等)等と連携し、国民的な交通安全意識の高揚に努めている。

注1:適正な交通の方法及び交通事故防止について住民の理解を深めるための住民に対する交通安全教育等の活動に従事している者

注2:学校における生徒に対する交通安全教育、通学路における交通誘導等の活動に従事している者

① 全国交通安全運動

広く国民に交通安全思想の普及と浸透を図るとともに、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けることにより、交通事故防止の徹底を図るため、毎年春と秋の2回全国交通全運動を実施している。

② シートベルト・チャイルドシートの着用・使用の徹底

平成25年10月に実施された全国調査(警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の合同調査)における後部座席同乗者のシートベルト着用率は、一般道で35.1%、高速道路で68.2%にとどまっている。また、26年4月に実施された全国調査におけるチャイルドシートの使用率も61.9%にとどまった。

警察では、関係機関・団体と連携し、衝突実験映像等を用いたシートベルトの着用効果を実感できる参加・体験・実践型の交通安全教育を行うほか、幼稚園や保育所等において保護者に対するチャイルドシートの正しい取付方法の指導をすることなどにより、これらの適正な着用・使用の徹底を図っている。

 
シートベルトコンビンサー体験

シートベルトコンビンサー体験


③ 反射材用品等の普及促進

夜間における歩行者及び自転車利用者の交通事故防止に効果が高い反射材用品等の普及を図るため、広報啓発活動のほか、参加・体験・実践型の交通安全教育により、視認効果、使用方法等について理解を深めたり、関係機関・団体と協力して反射材用品等の展示会を開催したりするなどしている。

(3) 高齢者の交通安全に向けた取組

① 高齢者が死傷者となる交通事故の状況

高齢者の死者数は、平成14年以降減少していたが、25年中は2,303人と、12年ぶりに増加した。死者数全体に占める高齢者の割合は、高い水準で推移しており、25年中は全体の半数以上を占めた。

高齢者の死者数を状態別に見ると、歩行中が全体の半数近くを占め、次いで自動車乗車中、自転車乗用中の順に多い。

また、交通事故死傷者数を年齢層別・被害程度別にみると、高齢者の占める割合は、軽傷者では13.1%であるのに対して、重傷者では33.6%、死者では52.7%となっており、被害程度が深刻になるほど高齢者の占める割合が高くなっている。

 
図表5-10 高齢者の状態別死傷者数(平成25年)
図表5-10 高齢者の状態別死傷者数(平成25年)
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② 高齢歩行者・自転車利用者の事故防止対策

25年中の高齢者の死者数のうち、歩行中・自転車乗用中の死者は約6割を占めているが、その約7割は運転免許を保有していなかった。

警察では、運転免許を保有していない高齢者に交通安全教育を受ける機会を提供するため、民間ボランティアや関係機関等と協力して、家庭訪問による個別指導や医療機関、福祉施設等における広報啓発活動を行っている。また、歩行者シミュレーター等の各種教育用器材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を実施している。

 
高齢者に対する交通安全教育

高齢者に対する交通安全教育


(4)子供の交通安全に向けた取組

① 子供が関係する交通事故の状況

15歳以下の子供の死者数は昭和40年代までは、2,000人を超える年もあったが、その後大きく減少し、過去10年間も減少傾向にある。平成25年中の死者数は94人となっており、歩行中の死者数の割合が引き続き高くなっている。

 
図表5-11 15歳以下・状態別死者数の推移(平成16年~25年)
図表5-11 15歳以下・状態別死者数の推移(平成16年~25年)
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② 子供の事故防止に向けた取組

幼児に対しては、交通ルールや交通マナー等道路の安全な通行に必要な基本的知識・技能を習得させるため、幼稚園、保育所及び保護者等と連携して紙芝居や視聴覚教材等を活用した交通安全教室等を実施している。

小学生、中学生に対しては、歩行者及び自転車の利用者として必要な知識・技能を習得させ、自己の安全だけでなく他人の安全にも配意できるようにするため、学校、PTA等と連携した自転車教室等を実施している。

また、警察では、24年度に実施した通学路における緊急合同点検の結果を踏まえ、警察による対策が必要な箇所において、教育委員会、学校、道路管理者等と連携し、信号機や横断歩道の設置等による道路交通環境の整備、通学路の危険個所を取り上げた具体的な交通安全教育等を推進している。


 第2節 交通安全意識の醸成

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