第4章 組織犯罪対策 

2 国際犯罪組織の動向

(1)来日外国人犯罪の組織化の状況

平成25年中の来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合は49.0%と、日本人(13.2%)の約3.7倍に上り(注)、共犯事件の割合が極めて高い。罪種別にみると、住宅を対象とした侵入窃盗で96.3%と日本人(15.8%)の約6.1倍に上る。

このように、来日外国人による犯罪は、日本人によるものと比べて多人数で行われる場合が多く、来日外国人によって組織的に犯罪が敢行される傾向がうかがわれる。

注:来日外国人と日本人の共犯事件については、主たる被疑者の国籍・地域により、来日外国人による共犯事件であるか、日本人による共犯事件であるかを分類して計上している。

 
図表4-15 来日外国人と日本人の刑法犯における共犯率の違い(平成25年)
図表4-15 来日外国人と日本人の刑法犯における共犯率の違い(平成25年)
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(2)国際犯罪組織の特徴

国際犯罪組織(注)のうち、来日外国人で構成される犯罪組織についてみると、出身国や地域別に組織化されているものがある一方で、より巧妙かつ効率的に犯罪を敢行するため、様々な国籍の構成員が、それぞれの特性をいかして、役割を分担するなど、構成員が多国籍化しているものもみられる。

これらの犯罪組織の中には、短期滞在の在留資格等により来日し、犯行後は本国に逃げ帰るいわゆるヒット・アンド・アウェイ型の犯罪を敢行するものもある。

犯罪行為や被害の発生場所等の犯行関連場所についても、日本国内にとどまらず2、3か国に及んだり、被疑者や被害者との関係を有しない地域であったりするものがあるなど、世界的な展開がみられる。

注:外国に本拠を置く犯罪組織、来日外国人犯罪グループその他犯罪を目的とした多人数の集合体で国際的に活動するもの及びこれに関連するものの集合体

事例①

ナイジェリア人の男(42)らは、平成24年10月、経営する飲食店の客に酒等を飲ませて昏酔状態に陥れた上、財布からキャッシュカードを抜き取り、付近のATMから同カードを使って現金を窃取した。25年1月までに、ナイジェリア人3人、フィリピン人5人、日本人3人及びロシア人1人を昏酔強盗罪及び窃盗罪で逮捕した(警視庁)。

事例②

ロシア人の男(27)らは、短期滞在の資格で出入国を繰り返しながら、クレーン付きの貨物自動車を盗み、ヤード内で解体してコンテナに積み込み、ロシアへ輸出していた。25年6月までに、ロシア人4人を窃盗罪で逮捕した(奈良)。

(3)国際犯罪組織に利用される犯罪インフラの実態

国際犯罪組織は、犯罪インフラを利用して各種犯罪を効率的に敢行しており、国際犯罪組織が関与する犯罪インフラ事犯には、地下銀行(注1)による不正な送金、偽装結婚(注2)、偽装認知(注3)、旅券・在留カード等偽造(注4)、不法就労助長(注5)等がある。

地下銀行は、不法滞在者等が不法就労等で得た収益を海外の家族等に送金したり、国際犯罪組織が国内で得た犯罪収益等を海外に送金したりするために利用されている。

また、旅券・在留カード等偽造は、犯罪を行う際の身分偽装手段として利用されるだけではなく、国際犯罪組織が偽造に関与し、不法滞在者等に販売して違法な資金を得ることもある。

そして、偽装結婚、偽装認知、不法就労助長は、不法滞在者等に在留資格を不正取得させたり、就労の機会を提供することにより、不法滞在等の犯罪を助長しており、これを仲介して利益を得るブローカーのほか、暴力団が関与するものがみられる。

注1:銀行業を営む資格のない者が、報酬を得て国外送金を代行することなど

注2:「日本人の配偶者等」の在留資格を得る目的で、日本人との間で、婚姻の意思がないのに市区町村に内容虚偽の婚姻届を提出すること

注3:不法滞在等の外国人女性が、外国人男性との間に出生した子等に日本国籍を取得させるとともに、自らも長期の在留資格を取得する目的で、市区町村に日本人男性を父親とする内容虚偽の認知届等を提出すること

注4:外国人が正規の出入国者、滞在者、運転免許保有者、就労資格保持者等を装う目的で、旅券、在留カード、運転免許証その他の身分証明書等を偽造し、又は行使すること

注5:就労資格のない来日外国人を不法に就労させ、又は不法就労をあっせんすることなど

事例①

韓国人の男(50)らは、平成21年5月から25年2月にかけて、依頼人から集めた現金を、定期的に手荷物として韓国に運搬し現地の口座に入金するなどの手口で地下銀行を営み、50億円以上を不正送金していた。同月、韓国人2人を銀行法違反(無免許営業)で逮捕した。この地下銀行は、風俗営業で不法就労助長を行う国際犯罪組織が、その売上金を本国へ送金する際に利用していた(静岡)。

コラム⑦ ヤード対策

ヤードとは、周囲を鉄壁等で囲まれた作業所等であって、海外への輸出等を目的として、自動車等の解体、コンテナ詰め等の作業に使用していると認められる施設のことをいい、日本全国に多数存在している。

一部のヤードについては、国際犯罪組織による盗難自動車等の解体・不正輸出のための作業場となっているほか、不法滞在者の稼働・い集場所として利用されるなど、犯罪の温床となっている状況がみられる。警察では、犯罪への関与が疑われるヤードについて、関係機関と協力しての立入検査や行政指導、法令を多角的に適用した取締り等の対策を推進している。

 
犯行に使用されたヤード

犯行に使用されたヤード

事例②

ヤード経営者であるパキスタン人の男(52)は、日本人の窃盗グループが盗んだ自動車を買い取り、ヤード内で解体して自動車部品として転売していた。25年3月までに、パキスタン人1人を盗品等保管罪で、日本人3人を窃盗罪等で逮捕した(愛知)。


 第3節 来日外国人犯罪対策

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