第4章 組織犯罪対策 

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

薬物事犯の検挙人員は、平成22年以降、緩やかに減少し、25年中は1万2,951人と、前年より515人(3.8%)減少した。しかし、覚醒剤の押収量が前年より大幅に増加するなど、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。

 
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(平成25年)
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(平成25年)
Excel形式のファイルはこちら

(1)各種薬物事犯の状況

① 覚醒剤事犯

平成25年中の覚醒剤事犯の検挙人員(注)は、前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の84.2%を占めている。また、粉末押収量は831.9キログラムと、前年より483.4キログラム(138.7%)増加した。25年中の覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員の55.9%を暴力団構成員等が占めているほか、他の薬物事犯と比べて再犯者が占める割合が高いことや30歳代以上の検挙人員が多いことが挙げられる。

注: 麻薬特例法違反の検挙人員のうち、覚醒剤事犯に係るものを含む。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は、前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の12.0%を占めており、依然として高水準である。25年中の大麻事犯の特徴としては、覚醒剤事犯とは異なり、全検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が依然として高いことが挙げられる。しかし、最近では、全検挙人員のうち再犯者や30歳代以上の年齢層の占める割合が増加傾向にあり、乱用者の層の拡大も懸念される。

③ その他の薬物事犯

最近5年間のMDMA(注)等合成麻薬事犯、あへん事犯等の各種薬物事犯の検挙人員及び押収量は、図表4-8のとおりである。

注:化学名「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(3,4-Methylenedioxymethamphetamine)」の略名。本来は白色粉末であるが、様々な着色がなされ、文字や絵柄の刻印が入った錠剤の形で密売されることが多い。

 
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成21~25年)
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成21~25年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)薬物密輸入事犯の状況

薬物密輸入事犯の検挙件数は、平成22年以降、200件前後で推移しており、25年中は221件と、前年より29件(15.1%)増加した。

覚醒剤密輸入事件の検挙状況の推移は図表4-9のとおりであり、25年中の検挙件数及び検挙人員はいずれも前年より減少したが、過去10年間の推移をみると依然として高水準である。最近では、ナイジェリア人の関与がうかがわれる事案が多くみられる。

この背景には、我が国での根強い薬物需要と、暴力団や来日外国人犯罪組織と国際的な薬物犯罪組織等とのグローバルなネットワークの構築があるものと推認される。

 
図表4-9 覚醒剤密輸入事件の検挙状況の推移(平成16~25年)
図表4-9 覚醒剤密輸入事件の検挙状況の推移(平成16~25年)
Excel形式のファイルはこちら

事例

ナイジェリア人の男(52)らは、25年5月、コーヒー豆の袋の中に隠匿した覚醒剤約2キログラムを、事情を知らない日本人旅行客を利用して密輸入したことから、同年6月までに同人ら3人を、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕した。また、薬物保管倉庫として同人らが使用していたアパートの一室において、覚醒剤約4キログラムを押収した(愛知、警視庁)。

(3)薬物犯罪組織の動向

① 薬物事犯への暴力団の関与

平成25年中の暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員は6,096人と、前年より277人(4.3%)減少したものの、覚醒剤事犯の全検挙人員の55.9%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。また、大麻事犯については、暴力団構成員等の検挙人員は467人と、前年より95人(16.9%)減少しているものの、全検挙人員の30.0%を占めており、暴力団構成員等が薬物事犯に幅広く関与していることがうかがわれる。

② 来日外国人による薬物事犯

25年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は411人と、前年より25人(5.7%)減少した。このうち、覚醒剤事犯の検挙人員が全薬物事犯の76.6%を占めている。国籍・地域別でみると、ブラジル、フィリピン及びアメリカの比率が高く、3か国で全体の34.8%を占めている。また、覚醒剤事犯の検挙人員のうち、営利犯(注)の占める割合を国籍・地域別でみると、イラン人は66.7%と最も高率であり、依然としてイラン人が密売目的で覚醒剤事犯に関与していることがうかがわれる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡及び営利目的譲受け

事例

イラン人の男(45)は、日本人の男(32)らに対し、覚醒剤を密売していた。25年10月までに、イラン人の男及び同人から覚醒剤を購入した日本人の男ら2人を覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡)等で逮捕した。また、イラン人の男が使用していた複数のコインロッカーから、約1.5キログラムの覚醒剤を押収した(神奈川)。


 第2節 薬物銃器対策

前の項目に戻る     次の項目に進む