第3章 サイバー空間の安全の確保 

第3章 サイバー空間の安全の確保

第1節 サイバー空間の脅威

インターネットが国民生活や社会経済活動に不可欠な社会基盤として定着し、今や、サイバー空間は国民の日常生活の一部となっている。こうした中、インターネットバンキングに係る不正送金事犯等のサイバー犯罪(注1)が多発しているほか、重要インフラ(注2)の基幹システム(注3)を機能不全に陥れ、社会の機能を麻痺させるサイバーテロ(注4)や情報通信技術を用いて政府機関や先端技術を有する企業から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンスといったサイバー攻撃が世界的規模で頻発するなど、サイバー空間における脅威は深刻化している状況にある。

注1:高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪

注2~4:108頁参照

 
図表3-1 サイバー空間における脅威
図表3-1 サイバー空間における脅威

1 サイバー犯罪の情勢

(1)サイバー犯罪の検挙状況

平成25年中のサイバー犯罪の検挙件数は8,113件と、前年より779件(10.6%)増加し、過去最多を記録した。また、インターネットバンキングに係る不正送金事犯が多発し、被害額は約14億600万円と大幅に増加したほか、不正アプリによる個人情報の収集事案等が発生しており、サイバー犯罪による被害は深刻さを増している。

① 不正アクセス禁止法違反

25年中の不正アクセス禁止法違反の検挙件数は980件と、前年より437件(80.5%)増加した。また、検挙人員は147人と、前年より7人(4.5%)減少した。

② コンピュータ・電磁的記録対象犯罪等

25年中の刑法に規定されているコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪及び不正指令電磁的記録に関する罪(以下「コンピュータ・ウイルスに関する罪」という。)の検挙件数は478件と、前年より300件(168.5%)増加した。このうち、コンピュータ・ウイルスに関する罪の検挙件数は27件であった。

③ ネットワーク利用犯罪(注1)

25年中のネットワーク利用犯罪の検挙件数は6,655件と、前年より42件(0.6%)増加し、過去最多となった。特にわいせつ物領布等及び著作権法違反については、21年中と比較すると、検挙件数がそれぞれ約5.6倍及び約3.9倍となっており、著しく増加している。

注1:その実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪

 
図表3-2 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成21~25年)
図表3-2 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成21~25年)
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注2:インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律

事例①

団体職員の男(33)らは、電子書籍をスマートフォンで購入する際、実際には決済がなされていないにもかかわらず決済がなされている旨の虚偽の情報を被害会社のサーバに送信するスマートフォン等のアプリを使用するなどして、多数の電子書籍を不正に入手した。警視庁外6府県警察は、25年12月までに、電子計算機使用詐欺で男ら15人を検挙した。

 
図表3-3 スマートフォン等のアプリを用いた電子書籍の詐取事案の概要
図表3-3 スマートフォン等のアプリを用いた電子書籍の詐取事案の概要

事例②

サイト運営会社役員の男(59)らは、スマートフォンの電話帳データを不正に取得するコンピュータ・ウイルスを作成し、電池を長持ちさせるアプリと偽って、事情を知らない者にダウンロードさせてコンピュータ・ウイルスを供用した。25年9月、不正指令電磁的記録供用罪等で男ら6人を逮捕した(京都、大分)。

事例③

電気設備修理業の男(50)らは、インターネット上に、有料である衛星放送を無料で視聴できるように不正に改造されたB.CASカードの販売サイトを立ち上げ、当該B.CASカードを販売した。栃木県警察外8道県警察は、25年9月までに、私電磁的記録不正作出等で販売に関わった男ら7人を逮捕したほか、多数の購入客を不正作出私電磁的記録供用罪で検挙した。


 第1節 サイバー空間の脅威

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