第2章 生活安全の確保 

第2節 国民の生活を犯罪から守るための取組

1 国民の財産を狙う事犯への対策

(1)ひったくり対策

ひったくりの認知・検挙状況の推移は図表2-14のとおりである。ひったくりの認知件数は、平成14年(5万2,919件)をピークに11年連続で減少しており、25年中は7,909件と、1万件を下回り、ピーク時の6分の1以下にまで減少した。しかし、依然として、ひったくりの被害者の約9割を女性が占めている。また、25年中のひったくりの認知件数のうち、上位5都府県(大阪府、神奈川県、埼玉県、東京都及び千葉県)で62.7%を占めている。

警察では、ひったくり事件の発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止に効果のあるかばんの携行方法や通行方法等について指導啓発を行っているほか、関係機関・団体等と協力し、自転車用のひったくり防止カバー等の普及を促進するなどしている。

 
図表2-14 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-14 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(2)万引き対策

万引きの認知・検挙状況の推移は図表2-15のとおりである。平成14年から24年までの間、13万件以上で推移してきた万引きの認知件数は、25年に13万件を下回ったものの、刑法犯認知件数に占める万引きの認知件数の割合は、25年中で9.6%と約1割に達している。また、万引きの検挙人員全体に占める高齢者(注)の割合は上昇傾向にあり、25年中は32.7%であった。

警察では、万引きを許さない社会気運の醸成や規範意識の向上を図るため、関係機関・団体等と連携した広報啓発活動を行うなど、社会を挙げた万引き防止に向けた取組を推進している。

注:65歳以上の者

 
図表2-15 万引きの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-15 万引きの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(3)侵入窃盗対策

侵入窃盗の認知・検挙状況の推移は図表2-16のとおりである。ピーク時である平成14年(33万8,294件)以降減少傾向にあり、同年から25年にかけて、侵入窃盗の認知件数は23万981件(68.3%)減少した。

警察庁、経済産業省、国土交通省及び建物部品関連の民間団体から成る「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、16年4月から、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品(CP部品)を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」をウェブサイトで公表するなどして、CP部品の普及に努めており、目録には26年3月末現在で17種類3,252品目が掲載されている。さらに、警察庁のウェブサイトに「住まいる防犯110番」(注)を開設し、侵入犯罪対策の広報を推進している。

注:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/index.html

 
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの

CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの

 
図表2-16 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-16 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(4)侵入強盗対策

侵入強盗の認知・検挙状況の推移は図表2-17のとおりである。平成 21年にコンビニ強盗の認知件数が前年比で大きく増加したことなどから、同年には侵入強盗の認知件数が増加に転じたものの、ピーク時である15年(2,865件)以降、減少傾向にある。

警察では、コンビニエンスストアや金融機関等を対象とした強盗対策として、防犯体制、現金管理の方法、店舗等の構造、防犯設備等について基準を定め、警察官の巡回や防犯訓練等を実施している。

 
図表2-17 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-17 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(5)自動車盗対策

自動車盗の認知・検挙状況の推移は図表2-18のとおりである。ピーク時である平成15 年(6万4,223 件)以降、自動車盗の認知件数は減少傾向にあるが、被害車両別にみると、近年、貨物自動車(トラック、ライトバン等)の被害の占める割合が増加している。

警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省及び民間19 団体から成る「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、「自動車盗難等防止行動計画」(14年1月策定、25年12月改定)に基づき、イモビライザ(注)等の盗難防止機器の普及促進、自動車の使用者に対する防犯指導、広報啓発等を推進している。

注:エンジンキーに埋め込まれた送信機から発するIDコードと、車両本体の電子制御装置にあらかじめ登録されたIDコードが一致しないと、エンジンが始動しない電子式盗難防止装置

 
自動車盗難防止の広報ポスター

自動車盗難防止の広報ポスター

 
図表2-18 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-18 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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コラム⑥ 地域の実情に応じた自動車盗対策

愛知県では、自動車盗が多発していたことを受け、いわゆるイモビカッター(イモビライザを無効化する装置)の所持の禁止を内容とする愛知県安全なまちづくり条例の一部を改正する条例を制定し、平成25年7月から施行した。

また、同県警察は、県内において、自動車及びカーナビゲーションシステムの盗難が多発していたため、盗難防止対策について、トヨタ自動車株式会社との連携を強化してきた。同年4月、愛知県公安委員会は、同社を古物営業法施行規則に基づき盗品売買等防止団体(注)として承認し、これにより、同社は、警察から提供された盗品等に関する情報(盗品等に付された番号等)を活用して、買取り等のために持ち込まれた自動車等が盗品等に該当するかどうかについての販売店からの照会への回答業務が可能となった。

注:古物商等からの盗品等に関する情報についての照会に対し回答する業務を適正かつ確実に実施することができると認められるものとして都道府県公安委員会の承認を受けた法人その他の団体

 
トヨタ自動車株式会社に対する盗品情報提供システム

トヨタ自動車株式会社に対する盗品情報提供システム

コラム⑦ 電子マニフェスト(注)を活用した盗難自動車の不正輸出の阻止

茨城県では、盗難された自動車が県内で無許可で解体され、外国へ不正に輸出される事案が多発していたことを受け、これを防止するため、平成26 年2月、解体自動車の輸出手続において、当該自動車を輸出しようとする者に対して電子マニフェストの画面印刷物の提出を求める制度を導入した。これにより、当該自動車が正規の手続の下で解体されたものかどうかを確認することが可能となった。

注:使用済自動車の再資源化等に関する法律に基づき、使用済自動車の引取りを行う業者等が引取りを求めた者の氏名、引取りに係る自動車の車台番号等を電磁的に記録したファイル

(6)悪質商法対策

① 利殖勧誘事犯

利殖勧誘事犯(注1)の検挙状況の推移は図表2-19のとおりである。利殖勧誘事犯の検挙事件数及び検挙人員は、近年増加傾向にあったが、平成25年中は減少に転じた。類型別にみると、同年中は、ファンドに関連した事犯の検挙が目立った。全国の消費生活センター等に寄せられた利殖勧誘事犯の可能性のある既遂被害に関する相談(注2)の件数は減少傾向にあるが、その内容については、ファンドの取引や一度被害に遭った人が二次的な被害を受けたという相談に関するものが目立った。

警察では、利殖勧誘事犯の被害拡大防止・被害回復を図るため、利殖勧誘事犯を重点的に取り締まるとともに、現金振込み先の預貯金口座を凍結するための金融機関への情報提供を推進しており、25年中の情報提供件数は2,253件であった。

注1:出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)、金融商品取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯

注2:全国消費生活情報ネットワーク・システム(以下「PIO.NET」という。)に平成26年1月15日までに登録された相談(未公開株、公社債、ファンド型投資商品、外国通貨、デリバティブ取引、二次被害に関する相談)のうち、既に金銭を支払ってしまったこと及び契約年が判明した相談を基に抽出・集計したもの

 
図表2-19 利殖勧誘事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-19 利殖勧誘事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
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図表2-20 利殖勧誘事犯の類型別検挙状況(平成25年)
図表2-20 利殖勧誘事犯の類型別検挙状況(平成25年)
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事例

元海外商品先物取引業者役員(40)の男らは、バーチャルオフィス(注1)を悪用して、東京都内を本店所在地とする正当な会社を装い、「ニューヨークで金の取引をしており、本社は東京駅近くの丸の内にある。一度も元本割れをしたことがない。確実に値上がりするので、絶対にもうかる。」などとうそを告げて、20年9月頃から25年1月にかけて、15都県の1,190人から合計約11億3,000万円をだまし取った。同年5月、男ら12人を詐欺罪で逮捕した。また、同年6月、犯罪収益等と認められた預金債権について組織的犯罪処罰法(注2)に基づく起訴前の没収保全命令の請求を行い、違法収益の.奪を図った(千葉)。

注1:自己の所在地を顧客が本店所在地として登記することなどを許諾するいわゆる貸し住所サービス、犯罪収益移転防止法第2条第2項第41号に規定する自己の居所又は事務所の所在地を顧客が郵便物を受け取る場所として使用させることを許諾するいわゆる郵便物受取サービス等の専用スペースを持たずに対外的な事務所機能を持つことができるサービスやレンタルオフィスに関するサービス

注2:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律

② 特定商取引等事犯

特定商取引等事犯(注)の検挙状況の推移は図表2-21のとおりである。特定商取引等事犯の検挙事件数及び検挙人員は、22年をピークに減少傾向にあったが、25年中は、増加に転じた。特に、同年中は、高齢者を狙い、健康食品等の商品を一方的に送り付けて購入させる、いわゆる送り付け商法の検挙がみられた。

注:訪問販売、電話勧誘販売等で不実を告知するなどして商品の販売や役務の提供を行う悪質商法。具体的には、訪問販売等の特定商取引を規制する特定商取引に関する法律違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等に係る事犯

 
図表2-21 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-21 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
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事例

電話勧誘販売業者の男(29)らは、24年8月頃から25年9月頃にかけて、高齢者を対象に電話をかけ、健康食品の注文を受けていないのに、「注文されていた商品ができあがった。」「確かに注文されている。」などと告げ、42道府県の約1万2,000人から約3億4,600万円をだまし取った。26年1月までに、14人を詐欺罪で逮捕した(埼玉、茨城、静岡、福井)。

 
押収した健康食品

押収した健康食品

(7)ヤミ金融事犯対策

ヤミ金融事犯(注1)の検挙状況の推移は図表2-22のとおりである。ヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員や全国の消費生活センター等に寄せられたヤミ金融事犯の可能性のある既遂被害に関する相談(注2)の件数は減少傾向にあるが、平成25年中の検挙事件のうち、暴力団が関与する事件の割合は15.8%と、前年の割合(14.8%)と比べて増加しており、依然として、ヤミ金融事犯が暴力団の資金獲得活動として敢行されている状況が認められる。

警察では、各都道府県警察に設置しているヤミ金融事犯集中取締本部による継続した取締りのほか、金融機関への口座凍結要請、ヤミ金融に利用され凍結された口座の名義人情報の金融機関への提供、ヤミ金融に利用されたレンタル携帯電話の解約についての事業者への要請、無登録貸金業の広告が掲載されているウェブサイトの削除についてのプロバイダ等への要請等の総合的な対策を行っている。25年中、金融機関への口座凍結要請は3万954件、レンタル携帯電話事業者への解約要請は3,433件、プロバイダ等へのウェブサイトの削除要請は1,657件であった。

注1:出資法違反(高金利等)及び貸金業法違反並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯

注2:PIO-NETに平成26年1月15日までに登録された相談のうち、既に金銭を支払ってしまったこと及び契約年が判明した相談を基に抽出・集計したもの

 
図表2-22 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
図表2-22 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成16~25年)
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事例

無登録貸金業者の男(61)らは、20年10月から24年11月にかけて、質屋営業を仮装し、高齢者を中心に延べ約9,700人に対して、法定利息の約6倍から約11倍で金銭を貸付け、約88億9,000万円の元利金を、年金受給口座から一括自動引落しする方法等により受領した。25年6月までに、2法人を検挙するとともに、5人を貸金業法違反(無登録営業)及び出資法違反(超高金利等)で逮捕した(福岡)。

コラム⑧ ヤミ金融事犯等に悪用されるレンタル携帯電話サービスの悪用実態等

ヤミ金融事犯等を敢行する者は、自己への捜査を免れるためにレンタル携帯電話サービスを悪用している状況が認められる。警察では、レンタル携帯電話の悪用実態を把握するため、平成25年中に、ヤミ金融事犯等に悪用されたとして警察が解約要請を行ったレンタル携帯電話事業者等に対し、貸与時の本人確認方法等について調査を行った。

その結果、携帯電話を対面で相手方に貸与していると回答した事業者の約7割が、偽変造が認められる本人確認書類のコピーを本人確認記録の一部として保存しており、その中には、暦上存在しない生年月日が記載されているものなど容易に偽変造と判断できるものがあった。

こうした実態から、ヤミ金融業者等が犯罪に悪用する目的で携帯電話を入手するに当たり、偽変造した本人確認書類又はそのコピーを用いている状況や、レンタル携帯電話事業者が偽変造された本人確認書類の提示を受けたにもかかわらず、携帯電話を貸与している状況等がうかがわれる。このような現状を踏まえ、警察では、事業者に対する解約要請や悪質な事業者の検挙等、レンタル携帯電話の効果的な悪用防止対策を推進している。

(8)知的財産権侵害事犯対策

知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移は図表2-23のとおりである。偽ブランド品は、図表2-24のとおり、大半が中国から密輸入されている。これらの偽ブランド品については、その広告が掲載されている日本語のウェブサイトを通じて注文を受け付け、外国から国際郵便で日本の購入者に届けられるという形態で密輸入されるものが多い。

こうした状況を踏まえ、警察では、中国等の外国捜査機関に対し情報を提供し、被疑者の検挙やウェブサイトの削除を要請している。また、不正商品対策協議会(注)における活動を始め、権利者等と連携した知的財産権の保護及び不正商品の排除に向けた広報啓発活動を推進している。

注:昭和61年、不正商品の排除及び知的財産権の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等に対する働き掛け等を行っている。

 
押収した偽ブランド品(財布、バッグ)

押収した偽ブランド品(財布、バッグ)

 
図表2-23 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(平成21~25年)
図表2-23 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(平成21~25年)
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図表2-24 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国・地域別押収状況の推移(平成16~25年)
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 第2節 国民の生活を犯罪から守るための取組

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