特集II 子供・女性・高齢者と警察活動

2 少年非行の現状と対策

警察では、少年の健全な育成を図るべく、子供の犯罪被害対策に加えて、少年非行防止のための施策を推進している。

(1)少年非行の現状

① 少年非行情勢

平成24年中の刑法犯少年の検挙人員は6万5,448人と、前年より1万2,248人(15.8%)減少し、9年連続の減少となった。しかし、同年齢層人口1,000人当たりの検挙人員は9.1人で成人の4.3倍と、引き続き高い水準にある。

24年中の触法少年(刑法)の補導人員は1万3,945人と、前年より2,671人(16.1%)減少した。不良行為少年の補導人員は91万7,926人と、前年より9万5,241人(9.4%)減少し、11年ぶりに100万人を下回った。

 
図II-29 刑法犯少年の検挙人員・人口比の推移(昭和24~平成24年)
図II-29 刑法犯少年の検挙人員・人口比の推移(昭和24~平成24年)
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表II-4 触法少年(刑法)の補導人員の推移(平成15~24年)
表II-4 触法少年(刑法)の補導人員の推移(平成15~24年)
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表II-5 不良行為少年の補導人員の推移(平成15~24年)
表II-5 不良行為少年の補導人員の推移(平成15~24年)
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② 平成24年中の少年非行の主な特徴
ア 刑法犯少年

平成24年中に検挙した少年の包括罪種別検挙人員は表II-6のとおりであり、窃盗犯及び知能犯が前年より減少した一方で、凶悪犯、粗暴犯及び風俗犯が前年より増加した。

 
表II-6 刑法犯少年の包括罪種別検挙人員の推移(平成15~24年)
表II-6 刑法犯少年の包括罪種別検挙人員の推移(平成15~24年)
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イ 再犯者

24年中の刑法犯少年の再犯者数は9年連続で減少したが、刑法犯少年全体に占める再犯者の割合は15年連続で増加し、24年は33.9%と、前年より1.2ポイント上昇し、昭和47年以降で最も高くなった。

 
図II-30 刑法犯少年の再犯者数・再犯者率の推移(平成15~24年)
図II-30 刑法犯少年の再犯者数・再犯者率の推移(平成15~24年)
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ウ 中学生及び高校生の検挙・補導人員(刑法)

平成24年中の刑法犯少年及び触法少年(刑法)のうち、中学生は3万894人、高校生は2万5,159人となっており、19年以降、中学生が高校生を上回っている。

 
図II-31 中学生・高校生の検挙・補導人員(刑法)の推移(平成15~24年)
図II-31 中学生・高校生の検挙・補導人員(刑法)の推移(平成15~24年)
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(2)少年非行防止対策

① 非行少年を生まない社会づくり

警察では、全ての都道府県警察に少年サポートセンターを設置(注)し、少年補導職員を中心に総合的な非行防止対策を行っている。平成22年からは、警察署の少年部門とともに、少年の規範意識の向上及び社会との絆(きずな)の強化を図る観点から、少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動や少年を厳しくも温かい目で見守る社会気運の醸成等、非行少年を生まない社会づくりに取り組んでいる。

注:平成25年4月1日現在、全国に191か所(うち警察施設以外64か所)の少年サポートセンターが設置されている。
 
図II-32 非行少年を生まない社会づくり
図II-32 非行少年を生まない社会づくり
ア 少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動

警察では、問題を抱え非行に走る可能性がある少年及びその保護者に対して警察の方から積極的に連絡し、警察職員が継続的に声を掛けるほか、少年の状況に応じて社会奉仕体験活動等への参加促進、就学・就労の支援等を行う「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。特に、少年事件の共犯率が成人事件と比較して高く(注)、不良交友関係が立ち直りの大きな阻害要因となっていることから、少年警察ボランティア等と連携しながら、不良交友関係の解消に加え、不良交友関係に代わる居場所づくりに努めている。

注:平成24年中に検挙された刑法犯の共犯率(少年と成人の共犯事件を含む。)について、成人の共犯率が12.2%であるのに対し、少年の共犯率は29.5%と、成人の2.4倍となっている。

事例①

男子中学生(15)は、器物損壊等の非行や喫煙等の不良行為を繰り返し、不登校となっていたことから、農作業体験等を通じた居場所づくり活動や少年警察ボランティアによる学習支援等を行ったところ、徐々に将来に対する目標が芽生え、問題行動が減少するとともに、在籍する中学校に登校するようになり、希望する専門学校への合格を果たした(愛知)。

イ 少年相談活動

少年や保護者等からの悩みや困りごとの相談に応じ、心理学や教育学の専門知識を有する職員や少年非行の取扱経験の豊富な職員が、親身に指導・助言を行っている。面接のほか、気軽に相談できるよう、フリーダイヤルの電話や電子メールでも相談に応じている。

 
図II-33 少年サポートセンター
図II-33 少年サポートセンター
ウ 街頭補導活動

少年のい集する繁華街、学校周辺、通学路、公園等において、学校その他関係機関、少年警察ボランティアや地域住民等と共同で喫煙や深夜はいかい等をしている少年に指導・注意を行う街頭補導活動を実施している。

エ 広報啓発活動

学校で非行防止教室、薬物乱用防止教室等を実施するとともに、地域住民や少年の保護者が参加する非行少年問題に関する座談会を開催するなどして、地域の非行情勢や非行要因等について情報発信し、少年警察活動等についての理解を促している。

② 学校その他関係機関との連携確保
ア 少年サポートチーム

個々の少年の問題状況に応じた的確な対応を行うため、学校、警察、児童相談所等の担当者から成る少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年への指導・助言を行っている。また、少年サポートチームの効果的な運用を図るため、警察庁と文部科学省が合同で、都道府県警察や関係機関・団体の実務担当者等による協議会を実施している。

イ 学校と警察との連携

教育委員会等と警察との間で締結した協定等に基づき、非行少年等問題を有する児童・生徒に関する情報を学校と警察が相互に通知する学校・警察連絡制度が、全ての都道府県で運用されている。また、警察署の管轄区域や市区町村の区域を単位に、平成25年4月現在、全ての都道府県で約2,600の学校警察連絡協議会が設けられている。

ウ スクールサポーター

退職した警察官等をスクールサポーターとして警察署等に配置し、学校からの要請に応じて派遣している。スクールサポーターは「警察と学校との橋渡し役」として、いじめ事案の早期把握に努めているほか、学校における少年の問題行動等への対応、巡回活動、相談活動、児童の安全確保に関する助言等を行っている。25年4月現在、43都道府県で約700人が配置されている。

③ 少年警察ボランティアとの連携

警察では、平成25年4月現在、全国で少年補導員(注1)約5万2,000人、少年警察協助員(注2)約300人、少年指導委員(注3)約6,700人等のボランティアを委嘱しており、協力して街頭補導活動、立ち直り支援活動その他少年の健全育成のための活動を推進している。また、25年3月現在、大学生を中心とした少年警察学生ボランティア約5,100人が全国で活動しており、少年と年齢が近くその心情や行動を理解しやすいなどの特性をいかし、学習支援活動や少年の居場所づくり活動等にも取り組んでいる。

注1:街頭補導活動、環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動に従事している。
注2:非行集団に所属する少年を集団から離脱させ、非行を防止するための指導・相談に従事している。
注3:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、都道府県公安委員会から委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への助言活動に従事している。
 
少年警察ボランティアによる料理教室
少年警察ボランティアによる料理教室

コラム① 大学生ボランティアの裾野拡大・活性化

立ち直り支援の対象少年と年齢が近く、少年の気持ちを理解できる大学生ボランティアは、スポーツ活動や学習支援等の支援活動を積極的かつ効果的に推進することが期待できる。警察では、大学生ボランティアの拡充に向けて、大学等に対する協力依頼を行っているほか、大学生ボランティア相互の意見交換等による意識の向上、効果的な活動に必要な知識・技能の習得等を図るための研修等を推進している。

④ 少年事件対策

警察では、少年の健全育成のために適切な保護処分が行われるよう、都道府県警察本部に少年事件指導官を置き、個々の少年の特性に応じた取調べ等を行うとともに、客観的証拠の収集や裏付け捜査等を徹底して厳格な非行事実の特定等に努めるよう、捜査員等に対する指導・教育を行い、少年事件の厳正かつ的確な捜査・調査に努めている。

事例②

平成24年4月、男子中学生(14)は、バスジャックをする目的で路線バスに乗り込み、バス運転手(37)に対して果物ナイフを示し「ドアを閉めろ」などと脅迫した上、同人ともみ合いになった際に、同人の左前胸部をナイフで突き刺して傷害を負わせた。同月、少年を傷害罪で逮捕(同年5月に検察官から監禁致傷罪等で家庭裁判所に送致)した(警視庁)。

事例③

24年10月、無職の少年(16)らは、路上においてホームレスの男性(67)に対して殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせ、さらに後日、別の少年と共に同様の暴行を加え、殺害するに至った。同年11月、殺人罪等で少年ら5人を逮捕した(大阪)。



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