特集I サイバー空間の脅威への対処

1 サイバー犯罪の情勢

平成24年中はサイバー犯罪が多発するとともに、インターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用事件やインターネットバンキングに対する不正アクセス事件、スマートフォンアプリを悪用した個人情報の流出事件等が発生し、その脅威が深刻化している状況にある。

 
表I-1 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成20~24年)
表I-1 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成20~24年)
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(1)サイバー犯罪の検挙状況

平成24年中のサイバー犯罪の検挙件数は7,334件と、前年より1,593件(27.7%)増加して過去最多となり、さらに14年中の1,606件から10年間で約4.6倍となった。

① 不正アクセス禁止法違反

24年中の不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」という。)違反の検挙件数は543件と、前年より295件(119.0%)増加し、検挙人員は154人と、前年より40人(35.1%)増加して、いずれも過去最多となった。また、24年5月の改正不正アクセス禁止法の施行により新たに処罰対象となった識別符号取得行為、識別符号保管行為及びフィッシング(注)行為について、それぞれ2件検挙した。

注:アクセス管理者になりすまし、当該アクセス制御機能に係る識別符合の入力を求める行為をいう。いわゆるフィッシングサイトを公衆が閲覧できる状態に置く行為等
② コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する罪

24年中の刑法に規定されているコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪及び不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪)の検挙件数は178件と、前年より73件(69.5%)増加した。このうち、不正指令電磁的記録に関する罪の検挙件数は41件であった。

③ ネットワーク利用犯罪(注)

24年中のネットワーク利用犯罪の検挙件数は6,613件と、前年より1,225件(22.7%)増加し、過去最多となった。特徴として、ネットワーク利用詐欺の検挙件数が1,357件と、前年より458件(50.9%)増加する一方、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(出会い系サイト規制法)違反の検挙件数は363件と、前年より101件(21.8%)減少した。

注:その実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪

(2)平成24年中のサイバー犯罪の事例

① インターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用事件

平成24年6月から同年9月にかけて発生したインターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用事件について、神奈川県警察、大阪府警察、警視庁及び三重県警察は、威力業務妨害罪等で4人の男性を逮捕した。しかし、その後の捜査で、逮捕された4人が使用していたコンピュータが市販のウイルス対策ソフトでは検知できない不正プログラムに感染し、第三者に遠隔操作されるなどしており、4人は本事件に関与していなかったことが判明した。

当該4都府県警察では、本件を検証し、警察庁では、サイバー犯罪捜査に関する知識の底上げ、証拠の総合的な評価等の再発防止策を全国警察に指示した。

25年2月、当該4都府県警察による合同捜査本部は、当該不正プログラムを使用して犯行予告を行った被疑者を威力業務妨害罪で逮捕した。

 
図I-2 遠隔操作可能な不正プログラムの動作(概略)
図I-2 遠隔操作可能な不正プログラムの動作(概略)
② IT企業によるスマートフォンを対象とした不正指令電磁的記録保管等事件

スマートフォン内の電話帳データを抜き取るアプリを作成してウェブサーバに保管し、「電波状況が改善するアプリ」などと偽って、当該アプリを保管したウェブサーバのURLを記載した電子メールを不特定多数に送信し、有益なアプリと誤信したメール受信者に当該アプリをダウンロードさせた事件について、京都府警察は、24年10月から同年11月にかけて、会社役員の男(30)ら5人を不正指令電磁的記録保管罪等で逮捕した。



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