第6章 警察活動の支え

3 犯罪被害者支援

(1)基本施策

犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では次のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、捜査員以外の職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度が導入されている。

 
図6-26 犯罪被害者支援に係る基本施策
図6-26 犯罪被害者支援に係る基本施策

コラム④ 指定被害者支援要員制度

犯罪被害等の早期軽減を図るため、犯罪被害者等に対する支援活動は、事件発生直後から必要となる。このため、各都道府県警察においては、指定被害者支援要員制度を導入し、支援要員の積極的活用や知識・能力の向上に努めている。支援要員は、あらかじめ捜査員とは別の警察職員が指定され、殺人、強姦やひき逃げ事件等の専門的な犯罪被害者支援が必要とされる事案が発生した際、犯罪被害者等に付き添い、必要な助言、刑事手続の説明等を行うほか、カウンセラー、弁護士会、被害者支援団体等を紹介し、これらへ引き継ぐなどの総合的な支援活動を実施している(平成24年末現在の指定被害者支援要員総数は3万2,949人)。

コラム⑤ 命の大切さを学ぶ教室

犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようにするためには、犯罪被害者等の心情や抱えている問題について理解を深め、社会全体で思いやり、支えていくことが重要となる。

各都道府県警察においては、教育委員会等の関係機関と連携し、次世代を担う中学生や高校生を対象に犯罪被害者等が講演者となって、子供を亡くした親の思いや生命の大切さ等を直接語りかける「命の大切さを学ぶ教室」を開催し、犯罪被害者等への配慮や協力意識のかん養に努めている。こうした意識を更に高めるため、警察庁では、文部科学省の後援を得るなどして、教室を受講した全国の中学生や高校生を対象に募集した作文の中から優秀作品を選定し、表彰する「命の大切さを学ぶ教室全国作文コンクール」を開催している。

警察では、こうした取組を通じて、「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくり」に向けた気運の醸成を図っている。

 
命の大切さを学ぶ教室全国作文コンクール表彰式
命の大切さを学ぶ教室全国作文コンクール表彰式

(2)被害者支援連絡協議会の活動

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等から成る「被害者支援連絡協議会」が全ての都道府県で設立されている。このほか、警察署の管轄区域等を単位とした犯罪被害者支援のための連携の枠組みが各地に構築され、よりきめ細かな犯罪被害者支援が行われている。

(3)民間の被害者支援団体との連携

全国被害者支援ネットワークに加盟する民間の被害者支援団体は、全ての都道府県で設立されている。これらの団体は、電話又は面接による相談、裁判所へ赴く際の付添い等の直接支援、相談員の養成及び研修、自助グループ(遺族の会等)への支援、広報啓発等を行っており、警察では、こうした団体の設立・運営を支援している。また、都道府県公安委員会は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に基づき、犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定しており、平成25年4月1日現在、全国で44団体が指定されている。

(4)被害者の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なった特性があることから、警察では、性犯罪被害者(44頁参照)、交通事故事件の被害者(165頁参照)、配偶者からの暴力事案の被害者(44頁参照)、ストーカー事案の被害者(38頁参照)、少年の被害者(31頁参照)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

(5)犯罪被害給付制度

犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者等に対し、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に基づき、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年1月に開始して以来、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。

 
図6-27 犯罪被害者等給付金
図6-27 犯罪被害者等給付金
 
表6-6 犯罪被害給付制度の運用状況
表6-6 犯罪被害給付制度の運用状況
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図6-28 犯罪被害給付制度の歩み
図6-28 犯罪被害給付制度の歩み


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