第6章 警察活動の支え

第2節 国民の信頼に応える警察

1 適正な警察活動のための取組

(1)監察

警察では、その能率的な運営及び規律の保持に資するために、警察庁、管区警察局及び都道府県警察において、国家公安委員会が定める監察に関する規則に基づき、厳正な監察を実施している。また、警察内部の自浄能力を高めるため、都道府県警察で監察を掌理する首席監察官を全て国家公安委員会が任命する地方警務官としている。

 
図6-16 監察に関する規制(平成12年国家公安委員会規則第2号)
図6-16 監察に関する規制(平成12年国家公安委員会規則第2号)

平成24年度は、図6-17のとおり、監察実施項目を定め、業務及び服務の両面において監察を行った。同年度中、警察庁及び管区警察局においては、都道府県警察等に対し、2,540回の監察を実施し、交通事故処理で使用する受傷事故防止資機材の点検が形骸(がい)化しているなど不備のある点について業務改善を図った。

 
図6-17 平成24年度の監察実施計画
図6-17 平成24年度の監察実施計画

(2)苦情の適正な処理

都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者から、都道府県警察に対して申出があった場合は、都道府県公安委員会に対する申出に準じた取扱いがなされている。

警察では、事実関係の調査を徹底し、調査結果及びその結果を踏まえた措置について申出者に通知している。また、受理した苦情の傾向を分析し、その結果を踏まえた業務改善策の策定、苦情の内容に応じて講じた措置の点検・検証を行うなど、苦情を活用した組織的な業務改革を推進している。

 
図6-18 苦情をいかした業務改革
図6-18 苦情をいかした業務改革

(3)適正な予算執行の確保

警察では、適正な予算執行を確保するため、次のような取組を行っている。

① 警察が行う会計監査

国家公安委員会が定める会計の監査に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長及び方面本部長は、監査手法に改善・工夫を加えながら、一層適正な会計経理を推進するため、会計監査を実施している。

 
図6-19 会計の監査に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第9号)と平成24年度会計監査実施計画
図6-19 会計の監査に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第9号)と平成24年度会計監査実施計画

平成24年度は、図6−19のとおり、警察庁の会計監査実施計画を作成し、全120部署を対象に会計書類の点検を行うとともに、捜査費の執行に直接携わった捜査員3,219人を含む7,081人に対して聞き取りを実施するなどした。

25年度については、24年度の会計監査実施結果を踏まえつつ、引き続き厳正な監査を行うこととしている。

 
監査における職員からの聞き取り
監査における職員からの聞き取り
② 会計に関する職員教育

職員に予算執行の手続に関する正確な知識を修得させるとともに、適正経理の重要性を再認識させるため、会計に関する職員教育を徹底している。また、それに必要な捜査費等の経理に関する各種の解説資料を作成し、配布している。

③ 適正な公共調達への取組

警察庁では、公共工事及び物品役務を対象とする契約等に関して、外部有識者の意見を聴取し、その審議等を踏まえて随意契約及び一者応札の見直しを行うなど適正な公共調達を推進している。

(4)情報管理の徹底

① 情報セキュリティ対策の推進

警察では、犯罪捜査、運転免許等に関する大量の個人情報のほか、多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(警察情報セキュリティに関する規範の体系)を策定するなどして、情報の流出等への対策を進めている。

具体的には、都道府県警察等に対し、捜査資料等の不必要な複写及び持ち出しの禁止や不必要な情報の廃棄・消去等、情報の組織的管理の徹底について指示するとともに、情報管理に係る職員の責務等について浸透を図っている。

また、これらの取組の実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした監査を継続的に実施しているほか、個人所有のコンピュータ等の公務使用を禁止するなど、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を推進している。特に、外部記録媒体からの情報流出を防止するため、個人所有の外部記録媒体の利用を技術的に禁止する機能や外部記録媒体に書き込む情報を自動的に暗号化する機能を導入するとともに、外部記録媒体を用いずに情報を共有することが可能となるファイルサーバ(注1)の整備・拡充及びシステムにおける利用状況を分析できる証跡の取得の強化を引き続き推進することとしている。

さらに、平成24年5月、警察情報管理システム等における情報セキュリティインシデント(注2)により迅速かつ的確に対処するため、警察庁に、情報セキュリティインシデントに関する情報の集約・分析、被害拡大の防止等を実施する警察庁CSIRT(注3)を設置した。

注1:自らの記録装置に保存された情報をネットワーク上のほかのコンピュータと共有することができるサーバ
注2:不正プログラム感染事案等情報セキュリティの維持を困難とする事案
注3:Computer Security Incident Response Team の略
 
図6-20 情報管理の徹底に向けた取組
図6-20 情報管理の徹底に向けた取組
② 国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案

22年10月に発生した国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案を受け、同年12月、国家公安委員会から、本件に対する捜査及び調査の徹底、個人情報が掲出された者に対する保護その他の警察措置、情報保全の徹底・強化の3点について指示が行われた。本件データには、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていると認められ、このようなデータがインターネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方々が現にいるという事態に立ち至ったことは極めて遺憾である。

警察では、引き続き、個人情報が掲出された者に対する保護その他の警察措置、関係国等への協力要請を含む捜査、調査に組織の総力を挙げて取り組み、事実を究明することとしている。また、警察庁において情報保全の徹底・強化のための方策について全国警察に指示し、随時その取組状況を検証している。



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