第6章 警察活動の支え

6 シンクタンクの活動

(1)警察政策研究センター

警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、様々な治安上の課題に関する調査研究を進め、政策提言を行うとともに、警察と国内外の研究者等との交流の拠点として活動している。

① フォーラム等の開催

関係機関・団体等と連携し、国内外の研究者・実務家を交えて社会安全等に関するフォーラム等を開催している。

 
表6-3 フォーラム等の開催状況(平成24年度)
表6-3 フォーラム等の開催状況(平成24年度)

事例①

平成25年3月、財団法人社会安全研究財団との共催により、都内において「ファミリー・バイオレンスへの対応」をテーマとするシンポジウムを開催した。米国検事、特定非営利活動法人(NPO)代表等がパネリストとして参加し、活発に意見交換した。

 
フォーラムの開催
フォーラムの開催
② 大学関係者との共同研究活動の実施

大学関係者と共同して研究活動を行っている。最近の研究活動として、慶應義塾大学大学院法学研究科との間で、近年の情報通信技術の発達に伴い国民の自由と安全をいかにバランスよく保障していくかについて共同研究を行っている。

③ 大学・大学院における講義の実施

警察政策に関する研究の発展及び普及のため、東京大学公共政策大学院、一橋大学国際・公共政策大学院、早稲田大学法科大学院、中央大学法科大学院、首都大学東京都市教養学部、法政大学法学部、日本大学法学部等の大学・大学院に職員を講師として派遣している。

 
大学・大学院における講義(一橋大)
大学・大学院における講義(一橋大)
④ 警察に関する国際的な学術交流

海外で開催される国際的な学術会議に参加し、日本警察に関する情報発信を行っている。また、韓国警察大学治安政策研究所及びフランス高等治安・司法研究所との間で協定を締結し、警察に関する国際的な学術交流を実施している。

 
警察に関する国際的な学術交流
警察に関する国際的な学術交流

事例②

24年7月、英国・ポーツマスで開催された英国犯罪学会2012年年次大会に参加して、東日本大震災における警察の活動について発表を行った。

事例③

24年7月、中国・瀋陽で開催された第13回アジア警察学会年次総会に参加して、我が国におけるファミリー・バイオレンスの現状と対策について発表を行った。

コラム③ 大学・大学院における警察職員による講義の実施状況

1 警察職員派遣の背景と意義

「安全・安心」に対する市民の関心の高まりにより、警察政策研究センターのほか、都道府県警察本部等に対する大学・大学院からの講義依頼も増加している。こうした講義は、治安情勢や警察活動の重要性について学生や研究者の理解を深め、市民による地域における安全への取組の裾野を広げるなどの意義があると考えられる。

2 講義内容等の広がり

近年、従来の法学部等における警察活動に関する講義に加え、保健医療関係学部における性犯罪対策と被害者支援に関する講義、教育学部における少年問題・少年犯罪の現状や学校における不審者対策に関する講義、工学部建築学科における建物の防犯とまちの安全に関する講義等、講義を行う学部や講義内容等が広汎なものとなっている。

 
図6-15 警察職員による講義の例
図6-15 警察職員による講義の例

(2)警察情報通信研究センター

警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報システムに関する技術、暗号技術等、警察活動に関わる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備や情報通信技術を悪用した犯罪の対策に活用されている。

研究例①

次世代移動通信技術に関する研究

パトカー等で使用する無線通信機器の高度化に向けて、不感地帯の解消、システムとしての強じん性の確保、次期システムで具備すべきデータ通信機能等に関する研究を行っている。

研究例②

画像の鮮明化に関する研究

防犯カメラや監視カメラの最新技術動向を調査し、防犯カメラ等に残された画像の鮮明化手法の高度化について研究を行っている。

(3)科学警察研究所

生物学、医学、工学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究員が、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止等についての研究及び開発を行っている。また、各都道府県警察からの依頼により、事件、事故等に係る鑑定や検査を実施している。

研究例

火災鑑定におけるシミュレーション技術の実用化に向けた研究

大規模火災事件等の火災鑑定では、事件と同規模の再現実験を実施し、煙及び火炎の動きを解析している。しかし、再現実験の実施には多大な経費及び時間等が必要となることから、こうした再現実験の代わりに、コンピュータ上で火災現象を予測するシミュレーション技術を導入するため、燃焼実験で実測データを収集し、シミュレーション計算結果と照合することで、シミュレーション技術の有効性を検証している。

 
実測データ収集のための燃焼実験
実測データ収集のための燃焼実験


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