第4章 安全かつ快適な交通の確保

3 交通事故事件捜査

(1)交通事故事件の検挙状況

平成24年中の交通事故事件に係る検挙件数は、次のとおりである。

 
表4-13 交通事故事件の検挙状況(平成24年)
表4-13 交通事故事件の検挙状況(平成24年)
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(2)適正な交通事故事件捜査

死亡事故又は重傷事故のうち、ひき逃げ事件に係るもの、危険運転致死傷罪の適用が見込まれるもの、一方の当事者の供述以外に証拠が得られないおそれがあるものなどについては、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置した交通事故事件捜査統括官等が現場に臨場して捜査を統括するなど、組織的かつ重点的な捜査を推進している。

また、ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を行うとともに、現場こん跡画像検索装置(注)等の交通鑑識資機材を効果的に活用し、被疑者の早期検挙に努めており、平成24年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は98.8%に達している。

注:ひき逃げ事件の現場に遺留されたレンズ片やタイヤの痕跡から、車種等を絞り込む装置
 
図4-34 危険運転致死傷罪の適用件数の推移(平成15~24年)
図4-34 危険運転致死傷罪の適用件数の推移(平成15~24年)
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図4-35 危険運転致死傷罪の内訳(平成24年)
図4-35 危険運転致死傷罪の内訳(平成24年)
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交通事故現場の鑑識活動
交通事故現場の鑑識活動

事例

24年5月、「脱法ドラッグ」を吸引し、普通乗用車を運転して高速道路を逆走し、5件のあて逃げ事件を起こした後、商店街を走行して歩行者2人に重軽傷を負わせたひき逃げ事件について、現場に残された自動車部品の破片等から被疑車両を特定し、同年5月に塗装工の男(22)を自動車運転過失傷害罪及び道路交通法違反(救護義務違反等)で逮捕(その後、より罰則の重い危険運転致傷罪及び道路交通法違反(救護義務違反等)で送致)した(大阪)。

(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化

緻密で科学的な交通事故事件捜査を求める国民の声を踏まえ、交通鑑識に係る高度な知識及び技能を有する交通捜査員を養成するため、衝突実験に基づく事故解析等の専門教育を行っている。

また、交通事故当事者の負担を軽減するとともに、迅速な交通事故捜査により交通渋滞を早期に解消するため、交通事故自動記録装置(注)を始めとする各種の機器の活用を図るほか、一定の軽微な物件事故について現場見分を省略する制度を活用している。

注:交通事故の衝突音、スリップ音等を感知し、事故の直前、瞬間及び直後の状況を録画する装置
 
事故解析に関する教育の状況
事故解析に関する教育の状況
 
交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真
交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真

(4)交通事故被害者等の支援(209頁参照)

平成23年7月に警察庁が制定した「犯罪被害者支援要綱」に基づき、適切な被害者支援が行われるよう、交通事故の被害者及びその家族又は遺族(以下「被害者等」という。)の要望や心情に配意した捜査に努めるとともに、被害者連絡実施要領(注)等に基づき、ひき逃げ事件、危険運転致死傷罪に該当する事件、交通死亡事故及び全治3か月以上の重傷事故の被害者等に対して、捜査の初期の段階から事案概要や捜査経過、被疑者の検挙状況等を連絡している。

また、被害者連絡制度、刑事手続、補償制度等のほか、事案の特性やニーズに応じた内容を盛り込んだ数種類の「被害者の手引」や各種相談窓口等を紹介した「現場配布用リーフレット」を作成し、配布するなどの取組を推進している。

さらに、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置された被害者連絡調整官が、各警察署で実施する被害者連絡について指導を行ったり、自ら被害者連絡を実施したりするなどして組織的な対応を図るとともに、被害者等の心情に配意した適切な対応がなされるよう交通捜査員等に対する教育を強化している。

注:犯罪被害者等への捜査状況等の連絡の確実な実施を期するため、平成8年に制定されたもので、連絡対象となる事件、連絡内容等について定めている。
 
被害者の手引とリーフレット
被害者の手引とリーフレット


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