第4章 安全かつ快適な交通の確保

5 自転車の安全利用の促進

(1)自転車が関連する交通事故の状況

自転車は、幼児から高齢者まで幅広い層に利用されており、特に最近では東日本大震災による交通の混乱等を機に、通勤手段等としても注目を集めている。その一方で、自転車関連事故は全交通事故の約2割を占め、また、自転車利用者の交通ルール・マナー違反に対する国民の批判の声は後を絶たず、通行環境の整備も不十分な状況である。

こうした状況を踏まえ、警察庁においては平成23年10月に「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」という通達を発出し、関係機関・団体等と連携しつつ、自転車対策に積極的に取り組んでいる。また、24年11月に国土交通省と共に「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を策定するなど、自転車通行環境の確立、自転車利用者に対するルールの周知と安全教育の推進、自転車に対する指導取締りの強化といった対策を総合的に進めている。

 
図4-18 自転車関連事故発生件数と全交通事故に占める構成率の推移(平成15~24年)
図4-18 自転車関連事故発生件数と全交通事故に占める構成率の推移(平成15~24年)
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(2)良好な自転車交通秩序の実現のための対策

① 自転車通行環境の確立

警察では、車道を通行する自転車の安全と、歩道を通行する歩行者の安全の双方を確保し、歩行者、自転車、自動車が適切に共存できるよう、道路管理者と連携して、自転車専用の走行空間(自転車専用通行帯(注1)及び自転車道(注2))を整備するとともに、普通自転車(注3)の歩道走行を可能とする交通規制の実施場所の見直し等を通じて自転車と歩行者の安全の確保に努めている。

注1:交通規制により指定された自転車専用の車両通行帯
注2:縁石線や柵等の工作物によって分離された自転車専用の走行空間
注3:車体の大きさと構造が一定の基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽(けん)引していない自転車
 
自転車一方通行規制を実施した自転車道(神奈川県川崎市)
自転車一方通行規制を実施した自転車道(神奈川県川崎市)
② 自転車利用者に対するルールの周知徹底

警察では、地方公共団体、学校、自転車関係事業者等と連携し、「交通の方法に関する教則」や「自転車安全利用五則」を活用するなどして、児童・生徒、高齢者、主婦等全ての自転車利用者に対して自転車の通行ルール等の周知に努めている。

③ 自転車安全教育の推進

警察では、学校等と連携して、児童・生徒に対する自転車安全教育を推進しており、スタントマンによる事故の再現や自転車シミュレーターの活用等による参加・体験・実践型の自転車教室を開催するなど、教育内容の充実に努めている。平成24年中、児童・生徒や高齢者等を対象とした自転車教室を全国で約3万回開催し、約417万人が受講した。

 
スタントマンによる事故の再現
スタントマンによる事故の再現
④ 自転車に対する指導取締りの強化

警察では、自転車指導啓発重点地区・路線(注)を中心に、自転車利用者の無灯火、二人乗り、信号無視、一時不停止等に対する指導警告を強化するとともに、制動装置不良自転車(ブレーキがない自転車等)の運転のほか、違反行為により通行車両や歩行者に対する具体的危険を生じさせたり、指導警告に従わず違反行為を繰り返したりするなどの悪質・危険な交通違反に対しては、交通切符を適用した検挙措置を講ずるなど厳正に対処している。

注:自転車と歩行者との交通事故の発生状況、地域住民の苦情・要望の状況等を踏まえ、全国1,868か所(平成25年1月31日現在)を指定し、自転車利用者に対する街頭における指導啓発活動等を推進している。
 
自転車の指導取締り状況
自転車の指導取締り状況
 
表4-3 自転車の指導取締り状況(平成24年)
表4-3 自転車の指導取締り状況(平成24年)
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コラム④ 道路交通法の改正①(自転車の事故防止対策)

自転車関連事故は年間13万件以上発生しており、交通事故に関与した自転車運転者の約5分の3には法令違反が認められるなど、自転車利用者に交通ルールの遵守を徹底する必要がある。

このような状況を踏まえ、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為を反復して行った自転車の運転者に、自転車の安全運転の大切さについての「気付き」を促し、自転車の運転による交通の危険を防止するための講習の受講を命ずる規定のほか、制動装置不良自転車と認められる自転車の検査等に関する規定及び自転車を含む軽車両の路側帯の左側通行に関する規定が盛り込まれた道路交通法の一部を改正する法律が、25年6月、第183回国会において成立した。

 
図4-19 自転車運転者講習
図4-19 自転車運転者講習


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