第3章 組織犯罪対策

3 国際組織犯罪に対処するための取組

(1)国内関係機関との連携

警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注1)や外国人個人識別情報認証システム(注2)を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。法務省との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の入国管理局への手配や、合法滞在を装う偽装滞在者等の取締りのための情報交換、合同摘発等の連携を図っている。また、財務省との間では、不正輸出入を防止するための情報交換や合同摘発等の連携を図っている。

注1:Advance Passenger Information Systemの略。航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と要注意人物等に係る情報を入国前に照合するシステム
注2:来日外国人の個人識別情報と要注意人物に係る情報を照合するシステム

(2)外国捜査機関等との連携

複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

国際刑事警察機構(ICPO)は、各国の警察機関を構成員とする国際機関であり、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等を行っている。平成24年末現在で190の国・地域が加盟している。警察庁は、捜査協力の実施のほか、事務総局への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

② 外国捜査機関との捜査協力

警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

(3)国外逃亡被疑者等の追跡

日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という。)の数は依然として多い。被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、入国管理局に手配するなどして出国前の検挙に努める一方で、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関等との捜査協力や刑事共助条約(協定)に基づく共助を通じ、被疑者の所在確認等を行っている。所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして確実な検挙に努めている。

このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関等に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。

 
図3-13 国外逃亡被疑者等の推移(平成15~24年)
図3-13 国外逃亡被疑者等の推移(平成15~24年)
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(4)犯罪インフラ対策の推進

犯罪インフラとは、犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、不法滞在者等に在留資格を不正取得させる手段となる偽装結婚や偽装認知等のようにその行為自体が犯罪となるもののほか、それ自体は合法であっても、詐欺等の犯罪に悪用されている各種制度やサービス等がある。犯罪インフラは、あらゆる犯罪の分野で着々と構築され、国際犯罪組織がこれを利用して各種犯罪を効率的に敢行するなど、治安に対する重大な脅威となっている。警察では、平成23年3月、「犯罪インフラ対策プラン」を策定し、総力を挙げた対策を推進している。

 
図3-14 犯罪インフラの実態と対策プランの概要
図3-14 犯罪インフラの実態と対策プランの概要

コラム⑦ ヤード対策

ヤードとは、周囲を鉄壁等で囲まれた作業所等であって、海外への輸出等を目的として自動車等の解体、コンテナ詰め等の作業に使用していると認められる施設のことをいい、日本全国に多数存在している。

一部のヤードが犯罪インフラとして利用され、国際組織犯罪を始めとする犯罪の温床となっている状況がみられることから、警察では、犯罪の関与が疑われるヤードについて、関係機関と協力しての立入検査や行政指導、法令を多角的に適用した取締り等の対策を推進している。

事例

ヤード経営者であるカナダ人の男(33)は、スリランカ人らの窃盗グループが盗んだ自動車を買い取り、ヤード内で解体して自動車部品としてアラブ首長国連邦に不正輸出していた。23年10月までにカナダ人1人、インド人3人、スリランカ人2人及び日本人2人を窃盗罪等で逮捕するとともに、24年4月までに、関係機関等と連携し、ヤードを解体・撤去した(愛知)。

 
犯行に使用されたヤード
犯行に使用されたヤード


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