第3章 組織犯罪対策

2 暴力団犯罪の取締り

(1)検挙状況

暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者(以下「暴力団構成員等」という。)の主要罪種別検挙人員の推移は、図3-2のとおりである。暴力団構成員等の総検挙人員のうち、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等(注)(以下「伝統的資金獲得犯罪」という。)の検挙人員が占める割合は、3割程度で推移しており、これらが有力な資金源となっていると言える。他方、暴力団の威力を必ずしも必要としない詐欺の検挙人員が占める割合が増加傾向にあることから、暴力団が資金獲得活動を変化させている状況もうかがわれる。

注:競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法及びモーターボート競走法の公営競技関係4法違反
 
図3-2 暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移(平成15~24年)
図3-2 暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移(平成15~24年)
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表3-2 暴力団構成員等に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成15~24年)
表3-2 暴力団構成員等に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成15~24年)
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(2)暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件及び対立抗争事件等

近年の暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件及び対立抗争に起因する不法行為の発生状況は、図3-3のとおりであり、特に九州での発生が目立っている(注)

平成24年中、暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件については、表3-3のとおり21件発生している。

また、対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生状況は、表3-4のとおりである。

注:九州における暴力団情勢については60頁参照
 
図3-3 暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件及び対立抗争に起因する不法行為の発生状況(平成20~24年)
図3-3 暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件及び対立抗争に起因する不法行為の発生状況(平成20~24年)
 
表3-3 暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件の発生件数の推移(平成20~24年)
表3-3 暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件の発生件数の推移(平成20~24年)
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表3-4 対立抗争事件の発生事件数及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発砲事件数等の推移(平成15~24年)
表3-4 対立抗争事件の発生事件数及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発砲事件数等の推移(平成15~24年)
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(3)資金獲得犯罪

警察では、多様化・不透明化する暴力団の資金獲得活動に関する情報を収集・分析するとともに、社会経済情勢の変化に応じた暴力団の資金獲得活動の動向にも留意しつつ、各種の事業活動に進出している暴力団や共生者等に対する取締りを推進している。

① 社会経済情勢の変化に応じた資金獲得犯罪

暴力団は、企業や行政機関を対象とした不当要求、振り込め詐欺、強盗、窃盗のほか、各種公的給付制度を悪用した詐欺等、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っている。

事例①

山口組傘下組織幹部(33)らは、会社の社債の購入代金名下に現金をだまし取ろうと企て、高齢者に対し、社債を購入すれば「3倍の値で買い取る」と嘘を言うなどして、平成22年9月から同年10月にかけて現金3,000万円をだまし取った。24年1月、同幹部ら4人を詐欺罪で逮捕した(警視庁)。

② 一般の経済取引を装った資金獲得犯罪

暴力団は、実質的にその経営に関与している暴力団関係企業を通じ、又は共生者と結託するなどして、暴力団の威力を背景としつつ、一般の経済取引を装い、貸金業法違反、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反等様々な資金獲得犯罪を行っている。

事例②

山口組傘下組織幹部(33)らは、無登録で貸金業を営み、23年8月から24年2月にかけて、法定利息を上回る利息を受け取っていた。同年6月、同幹部ら2人を貸金業法違反(無登録営業の禁止)等で逮捕した(愛知)。

コラム① 山口組・弘道会対策

(1)弘道会の概要

現在の山口組組長が昭和59年に立ち上げた山口組の傘下組織で、主たる事務所は愛知県名古屋市にある。

現在の山口組は、弘道会の初代会長が六代目の組長、二代目の弘道会会長が若頭(注1)となっており、弘道会が山口組の主要な地位を押さえている状況にある(注2)

注1:一般に、組長等の代表者以外で組織の運営を支配する地位にある者の筆頭者をいう。
注2:暴力団においては、傘下組織の組長等が同時に上位組織の幹部となっている状況がみられる。

(2)山口組・弘道会集中取締り等対策の推進

暴力団対策上、一極集中状態にある山口組の弱体化が急務であり、そのためには、山口組の強大化を支える弘道会の弱体化を図ることが不可欠である。警察では、組織を挙げて山口組・弘道会及びその傘下組織に対する取締り等を推進しており、平成24年中は、山口組直系組長23人、弘道会直系組長5人、弘道会直系組織幹部27人を検挙した。

事例③

弘道会直系組長(57)らは、20年7月、みかじめ料の支払いを断ろうとした飲食店経営者を「払わなければ放火されるぞ」などと言って脅し、22年8月までに現金合計78万円を喝取した。24年10月、同組長ら5人を恐喝罪で逮捕した(愛知)。



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