第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

2 国民の身近で発生する犯罪

(1)国民の身近で発生する犯罪の認知・検挙状況

① ひったくり

ひったくりの認知・検挙状況の推移は図2-15のとおりである。ひったくりの認知件数は、平成14年(5万2,919件)をピークに10年連続で減少しており、24年中は1万83件と、ピーク時の5分の1以下にまで減少した。

なお、24年中の検挙人員のうち、40.5%を少年が占めている状況にある。

 
図2-15 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
図2-15 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
Excel形式のファイルはこちら
② 万引き

万引きの認知・検挙状況の推移は図2-16のとおりである。刑法犯認知件数は、ピーク時である14年から24年にかけて半数以下に減少したのに対し、同時期の万引きの認知件数は14万件前後で推移しており、依然として高止まりの状態が続いている。

 
図2-16 万引きの認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
図2-16 万引きの認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
Excel形式のファイルはこちら
③ 侵入窃盗

侵入窃盗の認知・検挙状況の推移は図2-17のとおりである。ピーク時である14年(33万8,294件)から24年にかけて、侵入窃盗の認知件数は22万3,139件(66.0%)減少した。

中でも、侵入窃盗のうち大きな割合(24年中は37.9%)を占めている空き巣は、14年から24年にかけて10万3,893件(70.4%)減少し、この空き巣の減少数は同時期の侵入窃盗の減少数の46.6%を占めている。

 
図2-17 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
図2-17 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
Excel形式のファイルはこちら
④ 侵入強盗

侵入強盗の認知・検挙状況の推移は図2-18のとおりである。21年にコンビニ強盗の認知件数が897件と前年比で46.8%増加したこともあり、同年の侵入強盗の認知件数が増加に転じたものの、ピーク時である15年以降、減少傾向にある。

 
図2-18 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
図2-18 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
Excel形式のファイルはこちら
⑤ 自動車盗

自動車盗の認知・検挙状況の推移は図2-19のとおりである。ピーク時である15年以降、自動車盗の認知件数は減少傾向にあるが、その傾向はゆるやかになりつつある。

なお、24年中における自動車盗の検挙人員のうち、来日外国人の占める割合は、刑法犯全体の検挙人員に占める来日外国人の割合の2.6倍になっている。

 
図2-19 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
図2-19 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成15~24年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)地域の犯罪情勢に即した犯罪抑止対策

犯罪情勢や社会構造の変化に伴って、警察活動を取り巻く環境が非常に複雑になってきていることなどを背景に、国民の警察に対する要請が多様化している。これに応えるため、警察では、地域の犯罪情勢に即して警察活動を戦略的に展開し、地域住民に不安感を生じさせる身近な事案や事件に迅速かつ的確に対処することを目的とした、総合的な犯罪抑止対策を推進している。

① 犯罪抑止計画の策定

地域の犯罪情勢に即した効果的な犯罪抑止対策とするため、警察署ごとに、相談、警ら、捜査その他の警察活動により収集した情報等を分析し、その管轄区域において重点的に抑止すべき種類の犯罪を定め、犯罪抑止計画を策定することとしており、また、警察本部においても、全国的な犯罪情勢を勘案し、関係する警察本部及び警察署が連携して広域的な抑止活動を行う必要がある種類の犯罪を定めて、犯罪抑止計画を策定することとしている。

② 地域住民等との連携協働

治安上の脅威に対して十分な耐性のある地域社会を構築するためには、地域住民、事業者、関係団体、自治体等と連携協働した取組が必要不可欠である。したがって、犯罪抑止計画においては、犯罪抑止対策を推進する上での地域住民等の役割や、地域住民等に対して警察が行う地域の犯罪情勢等に関する情報提供等の実施項目を可能な限り具体的に記載することとしている。また、地域社会が一体となって犯罪抑止対策を推進するため、既に警察と協力関係にある者・団体のみに依存することなく、より広範な連携協働関係の構築を目指すこととしている(注)

注:55、108頁参照。
 
防犯キャンペーン
防犯キャンペーン
 
地域住民による子供見守り活動
地域住民による子供見守り活動

(3)個別の犯罪類型に応じた抑止対策

① ひったくり対策

警察では、ひったくり事件の発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止に効果のあるかばんの携行方法や通行方法等について指導啓発を行っているほか、防犯協会等と協力し、ひったくり防止カバー等の普及を促進するなどしている。

事例

警視庁においては、自治体及び関係団体等の協力の下、23年7月から、ひったくり防止カバー「くるみちゃん」の配布・取付け等の対策を実施したところ、同庁管内における24年中の自転車の前かごからのひったくり被害は、前年の約700件から約300件に減少した。

 
ひったくり防止カバー「くるみちゃん」
ひったくり防止カバー「くるみちゃん」
② 万引き対策

警察では、“たかが万引き”といった風潮を一掃し、万引きを許さない社会気運の醸成や規範意識の向上を図るため、社会を挙げた万引き対策を推進している。

また、22年10月、被害の届出に伴う被害者の負担軽減のため、万引きに係る捜査書類を簡素化したほか、書籍やCD・DVD等の換金を目的とする万引きの被害が増加していることを受け、23年4月から、古物商に対して、安価で買い受ける場合であっても本人確認義務を課すなど、万引き対策を強化している。

③ 侵入犯罪対策

警察庁、経済産業省、国土交通省及び建物部品関連の民間団体から成る「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、16年4月から、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品(CP部品)を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」をウェブサイトで公表するなどして、CP部品の普及に努めている。25年3月末現在で17種類3,185品目が目録に掲載されている。

さらに、警察庁のウェブサイトに「住まいる防犯110番」(http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/index.html)を開設し、侵入犯罪対策の広報を推進している。

 
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
CPマーク
CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
 
住まいる防犯110番
住まいる防犯110番
④ 店舗対象の強盗対策

コンビニエンスストアや金融機関等を対象とした強盗対策として、警察では、防犯体制、現金管理の方法、店舗等の構造、防犯設備等に関して基準を定め、警察官の巡回や機会を捉えた防犯訓練等を実施している。また、特定の大手飲食チェーン店舗を対象とした強盗事件が夜間に多発したことを受けて、23年10月、運営会社に対し防犯対策の強化を要請し、各店舗における複数勤務体制の実施、防犯設備等の設置・拡充その他各店舗に対する防犯診断・防犯指導等を継続実施したところ、同チェーン店舗における24年中の強盗の認知件数は前年より大幅に減少した。

 
大手飲食チェーン店舗に対する防犯指導
大手飲食チェーン店舗に対する防犯指導
⑤ 自動車盗対策

警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省及び民間18団体から成る「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、「自動車盗難等防止行動計画」(14年1月策定、22年1月改定)に基づき、イモビライザ(注)等を備えた盗難防止性能の高い自動車の普及、使用者に対する防犯指導及び広報啓発、盗難自動車の不正輸出防止対策等を推進している。

注:エンジンキーと、車両本体の電子制御装置のIDコードを照合し、一致しないとエンジンが始動しない電子式盗難防止システム
 
自動車盗難防止の広報ポスター
自動車盗難防止の広報ポスター


前の項目に戻る     次の項目に進む