第1章 警察の組織と公安委員会制度

公安委員の声


安全と安心


前 神奈川県公安委員会委員

小森 良治(こもり よしはる)


委員就任 平成16年7月26日

委員退任 平成25年7月25日


神奈川県の刑法犯認知件数は、平成14年に19万件を超え、ピークに達したが、24年には7万件台まで減少し、交通事故発生件数や死傷者数も毎年減少し続けている。いわゆる指数治安は、確実に改善してきている。

こうした中、神奈川県が同年に実施した県民ニーズ調査によると、「県行政を進めていく上で、県に力を入れて取り組んでほしい分野は何か」という問いに対する回答の1位は「治安対策」であった。この点について、警察学校等で時々紹介し、「このことは、見方を変えれば、警察、何よりも第一線の現場で頑張っている警察官一人一人への県民の期待が大きいことを物語っている。これに応えるべく配属先で一所懸命頑張ってもらいたい」と激励しているところである。

ところで、警察に寄せられる感謝の声の中では、警察官による夜間のパトロールやその際のパトロールカードに関するものが多くを占めている。昼間においても、交番での立番、パトカーによる住宅街の警ら等「制服を見せる」という、地道で基本的な活動が、住民の安全と安心を確保し、警察への期待に応える上で、極めて重要であるとつくづく思う。犯罪者や犯罪を犯そうとする者にとっては、心臓の縮み上がるほど嫌な光景であろう。

流行と不易という言葉がある。時代に応じた新しい手段・手法の活用は大事ではあるが、地道な活動を積み重ねていくことの大切さは変わらないと思う。

ちなみに、先ほどの調査において、「あなたが身近な治安に関して、最も安心感を抱くときは、どのようなときか」という問いに対する回答は、「制服警察官が、パトロールしているとき」が最も多かったと聞いている。

 
前 神奈川県公安委員会委員 小森 良治

新たな立ち位置で


広島県公安委員会委員長

貝原 潤司(かいはら じゅんじ)


委員就任  平成18年7月9日

委員長就任 平成24年5月19日


非違事案の頻繁な報道や、ストーカー事件に見られる組織体としての対応の問題に関する報道等で、改めて警察への信頼が問い直されています。そうしたとき、いつも問いただされることは、平成12年に制定し、取り組んでいる「警察改革」の進捗状況です。絶えず原点に立ち戻り振り返ることは大切ですが、ただ改革の要綱を実施していくことが問題の解決につながるとは限りません。この20年間は「失われた20年」と言われ、バブル崩壊後の日本社会は大きく変化しました。政治的に不安定で、経済的にも厳しく、特に経済においてはグローバルな展開に突入し、翻弄された時代でありました。このダイナミックに変化する社会において、新たな視点で対処しなければならない問題が警察組織の内外で起きていたのではないかと思います。

急激に変化する社会において、装備・装置、情報システムの近代化も図っていかなければなりませんが、私は、今警察に求められているのは警察官一人一人の心の在り方、人間力の向上ではないかと思います。強靱な精神力を持ち、信念に基づいて行動すれば、国民の信頼も得、それが使命感や誇りにつながります。この好循環を維持するためにも、自らが所属する警察組織の歴史や歩みに改めて目を向け、自らの立ち位置を再認識し、その精神を受け継ぎ、時代の流れに沿った行動様式に変革していってほしいものです。

時代の風を感じながら、しっかりとした信念を持ち、全ての事象に忍耐強く、謙虚に、しかも未来志向で日々の業務に当たり、良き伝統は残し、国民から信頼される警察組織として進化していってほしいと思います。

 
広島県公安委員会委員長 貝原 潤司


前の項目に戻る     次の項目に進む