平成24年警察白書概要 

平成24年警察白書概要


特集:大規模災害と警察~震災の教訓を踏まえた危機管理体制の再構築~

第1節 東日本大震災における警察活動の検証

 警察では、東日本大震災の発生直後から、警察庁に緊急災害警備本部を設置するなどして必要な体制を構築し、全国警察が一体となって、被災者の避難誘導や救出救助、原子力災害への対応、各種の交通対策、行方不明者の捜索、検視・身元確認、被災地における安全・安心の確保といった幅広い活動に取り組んできた。
 他方で、本震災は、極めて広範囲かつ甚大な被害をもたらした自然災害と原子力災害の複合災害であり、過去に警察が経験したことのない対応を迫られたことから、様々な検討課題が明らかになった。

第2節 災害に係る危機管理体制の再構築

 今後も各種の大規模災害の発生が懸念される中、警察においては、本震災の対応を踏まえて危機管理体制を再点検・再構築することが緊急に求められている。そこで、警察庁では、平成23年11月、警察庁次長を長とする災害対策検討委員会を設置し、警察庁及び都道府県警察における災害対策の見直しを幅広く検討するとともに、各種施策を推進している。
 具体的には、大規模災害発生時に全国から直ちに被災地に派遣する即応部隊及び災害対応が長期化する場合に派遣する一般部隊から成る警察災害派遣隊を新設した。
 また、津波災害や原子力災害への対策を強化するため、国家公安委員会・警察庁防災業務計画の改定、地方自治体等関係機関との合同訓練を始めとする各種訓練や取組の推進、警察における必要な体制や装備資機材の整備等を行っている。
 さらに、首都直下地震発生時の交通規制について広域交通規制計画原案を策定したほか、本震災における対応を踏まえた大規模災害に伴う交通規制実施要領を策定した。
 そして、大規模災害発生時においても警察が災害応急対策業務を行いつつ、治安の確保に必要な警察活動を継続できるよう、業務継続性の確保に係る取組を推進している。

トピックスI:捜査手法、取調べの高度化への取組

 警察では、治安そのものに大きく関わる捜査手法や取調べの高度化を図るため調査・研究を行っている。平成24年3月には、「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」最終報告の提言を受け「捜査手法、取調べの高度化プログラム」を策定し、取調べの録音・録画の試行の拡充、取調べ技術の高度化等の施策に取り組んでいる。また、客観証拠による立証に資するよう、DNA型鑑定等の科学技術を活用した捜査を推進している。

トピックスII: 犯罪インフラ対策の推進

 犯罪インフラとは、犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、不法滞在者等に在留資格を不正取得させる手段となる偽装結婚等のように行為自体が犯罪となるもののほか、それ自体は合法であっても詐欺等の犯罪に悪用されている各種制度やサービス等がある。こうした犯罪インフラは治安に対する重大な脅威となっており、警察では、平成23年3月に「犯罪インフラ対策プラン」を策定し、組織の総力を挙げた対策を推進している。

トピックスIII:良好な自転車交通秩序の実現に向けて

 自転車関連事故は全交通事故の約2割を占めるなど、自転車関連事故の防止は重要な課題となっている。警察では、自転車は車両であるということを全ての者に理解してもらうことによって自転車利用者と歩行者双方の安全を確保していくという基本的考え方の下、自転車通行環境の確立、自転車利用者に対するルールの周知徹底と安全教育の推進、自転車に対する指導取締りの強化といった対策を総合的に進めている。

トピックスIV:サイバー攻撃への対処

 インターネットが国民生活や社会経済活動に不可欠な社会基盤として定着する中で、サイバー攻撃の脅威は、国の治安や安全保障に影響を及ぼしかねない問題となっている。こうした中、警察では、重要インフラ事業者や情報窃取の標的となるおそれのある事業者等と連携した諸対策を推進し、サイバー攻撃に関する情報の収集・分析・提供を行うなどして、サイバー攻撃事案の実態解明及び被害の未然防止に努めている。

トピックスV: 女性警察官の採用・登用の拡大について

 治安の維持には優秀な女性警察官の活用が不可欠であることから、警察では、女性警察官の採用に積極的に取り組んでおり、女性警察官数は年々増加している。また、女性警察官の幹部への登用も進んでいるほか、職域も拡大している。各都道府県警察では、女性警察官の採用・登用拡大計画を策定しており、今後、同計画に基づき、能力・適性等を有する女性警察官の採用・登用の拡大を進めていくこととしている。

第1章:警察の組織と公安委員会制度

 強い執行力を持つ警察行政について、その政治的中立性を確保し運用の独善化を防ぐためには、国民の良識を持つ者が警察の管理を行う事が適切であるとの考えから、警察においては公安委員会制度が設けられており、国に国家公安委員会、都道府県に都道府県公安委員会が置かれ、それぞれ警察庁と都道府県警察を管理している。国家公安委員会と都道府県公安委員会は、常に緊密な連絡を保っている。

第2章:生活安全の確保と犯罪捜査活動

 平成23年中の刑法犯認知件数は減少したが、治安情勢は依然として厳しい。
 警察では、地域の犯罪情勢に即した犯罪抑止対策の推進、特殊詐欺、利殖勧誘事犯、サイバー犯罪等の取締りの強化、被害防止に向けた広報啓発活動等の取組を推進している。
 また、犯罪の検挙と抑止のための基盤として、犯罪死の見逃し防止への取組、緻密かつ適正な捜査の徹底、捜査における科学技術の活用、事件・事故への即応等の取組を推進している。
 さらに、安全で安心な暮らしを守る施策として、児童ポルノ対策等子どもの安全対策、ストーカー事案への対応等女性を守る施策、犯罪の起きにくい社会づくり等官民一体となった犯罪抑止対策、風俗関係事犯の取締りや銃砲刀剣類の適正管理等良好な生活環境を保持するための取組を推進しているほか、少年の非行防止と健全育成にも取り組んでいる。

第3章:組織犯罪対策

 暴力団による犯罪、犯罪組織の関与がうかがわれる薬物・銃器に関する犯罪、来日外国人犯罪組織による犯罪等の情勢は依然として厳しい。
 警察では、暴力団犯罪の取締りの徹底、暴力団対策法の効果的な運用、暴力団排除活動の推進等により暴力団の壊滅を目指すとともに、薬物の供給の遮断及び需要の根絶に向けた対策、犯罪組織の武器庫や密輸・密売事件の摘発に重点を置いた銃器の取締りを推進しているほか、「犯罪のグローバル化」に対処するため、警察組織の総合力を発揮した効率的な国際組織犯罪対策等を推進している。
 また、犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止し、これを確実に剥奪することが重要であることから、犯罪収益移転防止法に基づく関係機関等と連携した取組、組織的犯罪処罰法の積極的な活用等により、犯罪収益対策を推進している。

第4章:安全かつ快適な交通の確保

 平成23年中の交通事故による死者数は4,612人で、11年連続の減少となった。また、発生件数及び負傷者数も7年連続で減少し、発生件数は19年ぶりに70万件を下回った。しかしながら、いまだ多数の死傷者を伴う交通事故が発生するなど、依然として憂慮すべき情勢にある。
 警察では、交通安全教育や運転者教育、悪質性・危険性・迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りや緻密な交通事故事件捜査等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に推進している。
 また、交通安全施設等整備事業、道路交通のIT化、総合的な駐車対策等、安全かつ快適な交通の確保のための諸対策を推進している。

第5章:公安の維持と災害対策

 我が国に対するテロの脅威が依然として高い状況にある中、警察では、情報収集・分析、重要施設の警戒警備等テロの未然防止に向けた諸対策、的確な警衛・警護警備諸対策等を推進するとともに、テロが万一発生した場合に備え、特殊部隊(SAT)等が実戦的訓練を実施して、対処能力の向上を図っている。このほか、北朝鮮による拉致容疑事案等に対する徹底した捜査、調査を進めるとともに、対日有害活動や大量破壊兵器関連物資等の不正輸出、オウム真理教、極左暴力集団、右翼等に関する情報収集、取締り等を推進している。
 さらに、地震、大雨、台風等の災害が発生した際には、広域緊急援助隊等を出動させるなどして、被災者の救出救助等の活動に従事している。

第6章:警察活動の支え

 警察では、適正な警察活動を促進するための取組を推進するとともに、人員の効率的運用、教育訓練の充実強化、装備品・情報通信システムの開発改善、情報管理の徹底等、警察活動の基盤を整備している。
 このほか、犯罪被害者等に対する支援の充実、適正な留置業務の運営の徹底、警察署協議会の活用、警察政策研究センターや科学警察研究所における調査研究等にも取り組んでいる。

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