特集:大規模災害と警察~震災の教訓を踏まえた危機管理体制の再構築~ 

2 広域的な部隊運用の拡充

(1)警察災害派遣隊の新設

 従来、警察では、災害発生直後の救出救助等の災害応急対策を想定した部隊編成・運用を行ってきた。しかし、本震災では、津波や原子力災害等に対応するため、長期間にわたり大規模な部隊派遣を行うこととなった。この経験を踏まえ、大規模災害発生時に全国から直ちに被災地へ派遣する即応部隊を拡充するとともに、災害の種類や規模を問わず、幅広く対応できる体制を構築するため、災害対応が長期化する場合に派遣する一般部隊を新たに設置し、両部隊から成る警察災害派遣隊を新設した。

(2)警察災害派遣隊の編成・運用

① 即応部隊

 これまで、大規模災害発生時には、即応部隊として、被災者の救出救助、緊急交通路の確保、検視、身元確認等を実施する広域緊急援助隊等(最大約6,400人体制)を被災地に派遣して対応してきた。今後は、検視、身元確認、遺族への対応等を行う上で体制強化の必要性が明らかとなった広域緊急援助隊(刑事部隊)を増員するとともに、個々の状況への柔軟な対応能力を確保するため、被災県警察の要望に応じて被災者の救出救助、行方不明者の捜索、警戒・警ら等の幅広い業務に従事する緊急災害警備隊を新たに設け、最大約1万人の即応部隊を編成する。
 また、即応部隊は、災害発生直後からおおむね2週間の期間中に派遣され、3日から1週間という短い活動周期で被災者の救出救助、緊急交通路の確保、検視、身元確認等を行う。即応部隊は、被災県警察から宿泊所の手配、物資の調達等の支援を受けることなく活動することを原則とする。
 
図-12 即応部隊の編成
図-12 即応部隊の編成

② 一般部隊

 大規模災害発生時から一定期間を経た後に、主として被災県警察の機能を補完・復旧するため、生活安全、刑事、交通、警備等の各分野について長期間の派遣を前提とした一般部隊を制度化する。一般部隊は、おおむね1週間以上の活動周期で行方不明者の捜索、警戒・警ら、交通整理・規制、相談対応、初動捜査等を行い、長期にわたり被災地の要望を踏まえた幅広い活動を実施する。
 
図-13 一般部隊の編成
図-13 一般部隊の編成

③ 支援対策室と支援対策部隊

 一般部隊は自活能力を有していないため、被災県警察では、部隊の受入れに係る膨大な業務を遂行しなければならない。しかし、被災県警察では、この受入れ業務を遂行する体制が不足することが本震災により明らかとなった。このため、大規模災害の発生直後から、派遣部隊に係る宿泊所の手配、装備資機材、燃料等の調達等の業務に関する調整を行う警察庁支援対策室を設置するとともに、その実動を担う部隊として、警察庁職員、大規模都道府県警察からの派遣職員及び被災県警察職員による支援対策部隊を編成する。警察庁支援対策室と支援対策部隊は、相互に連携して被災地における一般部隊の受入れ業務等に従事し、災害発生からおおむね2週間をめどに部隊等への支援活動を全面的に開始することとしている。
 
図-14 警察災害派遣隊の運用
図-14 警察災害派遣隊の運用

 第2節 災害に係る危機管理体制の再構築

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