第6章 警察活動の支え 

警察活動の最前線


被害者支援への想い

愛知県一宮警察署警務課
杉本 正樹(すぎもと まさき) 警部補
 
愛知県警察本部マスコットキャラクター コノハけいぶ
コノハけいぶ

 「遺体をきれいにしてくださり、本当にありがとうございました」
 これは、殺人事件の御遺族から頂いた言葉です。私たちは、無残な姿となった御遺体を少しでもきれいにと化粧をし、お気に入りだった洋服に着替えてもらいたいという気持ちから、葬儀会社と調整したに過ぎません。
 この御遺族は、事件後何か月も経ってから「(殺された家族の)○○の所に行こうかな」と自殺をほのめかしたり、「凶器を持って犯人の所へ面会に行ったら、犯人をやれるかな」と、犯人への尽きることのない憎しみを、私に突然こぼす時があります。
 私にできることは、事件現場周辺をきれいに掃除して、お供え物をしたり、御遺族のお話を聞いて、事件情報等を可能な限り伝えることしかありません。
 それでも、この御遺族から「私たち家族の心の支えになってくださり、本当に感謝しています」とお礼を言っていただいた時には、微力ながらも御遺族のお力になれたのかもしれないと思いました。
 御遺族からのお話を静かに聴いているだけでは、その人と向き合っておらず、逃げているように感じてしまいます。そこで私は、可能な限り、自分の思いを自分の言葉で伝えるように心掛けています。
 被害者の方々が少しでも笑顔を取り戻し、安心して日常生活を過ごせるように、多くの方に被害者支援活動に関心を持っていただけることを願っています。
 
愛知県一宮警察署警務課 杉本正樹(すぎもと まさき) 警部補

「人」を相手にする仕事に就いて

岡山県警察本部警務部留置管理課
西山 勝男(にしやま かつお) 警部補
 
岡山県警察本部マスコットキャラクター ももくん
ももくん

 私は警察本部留置施設の当務班長として勤務しております。
 通算7年間の留置施設勤務では、担当官に不当な要求を行う者、病人、自殺企図者等、様々な被留置者の処遇等に携わりましたが、被留置者が移送等されるとき、全員が口にする「お世話になりました」という言葉を耳にする度に「私が相手をしているのは、被疑者ではあっても血の通った人間である」ということを実感します。
 人間相手の仕事というのは難しい仕事です。すぐに嘘をつく者もいれば、素直な者もいる。短気な人間もいれば、我慢強い人間もいる。「こうすれば正解」というマニュアルよりも、一人一人の人間を理解しようとすることが大切です。
 特に、緊急手術が必要な病気にかかっていた被留置者の処遇に当たった際は、被留置者の日常の訴えに耳を傾ける必要性を痛感しました。「腹が痛い」と嘘をつく者もたくさんいますが、この時の被留置者はめったに不満を言わない者だと知っていたため「これは嘘ではない」と気付き、素早い対応ができたのです。
 私たちの業務は拘禁者心理を理解しつつ、逃走、罪証隠滅、自殺等を防止し、留置施設内の規律と秩序の維持を図ることであることから、被留置者の処遇には十分注意するとともに、厳しい中にも思いやりを持って接するように心掛けています。
 
岡山県警察本部警務部留置管理課 西山勝男(にしやま かつお) 警部補

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。

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