第6章 警察活動の支え 

5 国際社会における日本警察の活動

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

 犯罪のグローバル化に対し、警察庁では、国際会議への参加、二国間協議の推進等により、協力関係を強化している。

① アジア諸国等との連携

 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する「ASEAN+3国際犯罪閣僚会議」が平成16年から開催されている。23年10月には、インドネシアにおいて第5回会議が開催され、我が国から国家公安委員会委員長が出席し、サイバー犯罪対策における国際連携の必要性、我が国の犯罪インフラ対策等について発言した。
 また、東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として結成されたASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)に、我が国は中国、韓国等と共に参加している。23年5・6月には、ラオスにおいて第31回会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席し、東アジア地域の警察機関の連携・協力の重要性、テロ情報の共有の重要性等について発言した。
 
第5回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議
第5回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議

② G8各国との連携

 23年3月及び10月にはフランスにおいて、また、24年2月には米国において、G8ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。

③ 二国間の連携

 警察では、我が国との間で多くの国際犯罪が敢行される国や来日外国人犯罪者の国籍国を始めとする各国の治安機関との間で協議を行い、必要に応じて警察当局間協力に関する文書を作成するなどして協力関係を深めている。24年2月には東京都において、韓国警察庁との間で第2回日韓警察協議を開催した。
 また、国家公安委員会委員長が、バーレーン(23年1月)、韓国(同年7月)、カンボジア(同年9月)、香港(同年11月)等各国の治安問題等を担当する閣僚と会談を行い、各国治安機関との協力関係を強化した。

④ 治安に関係する国際約束の締結による協力の確保

 刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。
 また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものである。これまでに米国及び韓国との間で締結している。

(2)国際協力の推進

① 海外の警察に対する支援

 警察では、我が国の警察の特性をいかし、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力して、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた知識・技術の移転による海外の警察に対する支援を行っている。

ア インドネシア国家警察改革支援プログラム
 警察庁では、平成13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施するとともに、職員を全体の統括責任者である国家警察長官政策アドバイザー兼プログラム・マネージャーとして派遣している。このプログラムの中核事業である市民警察活動促進プロジェクトは、メトロ・ブカシ警察署及びブカシ県警察署をモデル警察署として、交番制度、犯罪鑑識、通信指令システム等に関する支援の成果を全国に波及させることを目的としている。
 
インドネシア国家警察幹部と協議中の専門家
インドネシア国家警察幹部と協議中の専門家

イ フィリピン国家警察犯罪対策能力向上プログラム
 20年以降、フィリピン国家警察に対しては、犯罪対策能力向上プログラムを実施しており、職員を国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーとして派遣している。
 
フィリピン国家警察において指紋の採取技術を指導中の専門家
フィリピン国家警察において指紋の採取技術を指導中の専門家

ウ 専門家の派遣
 上記事例のほか、23年には、トルコ警察が同国内で実施しているアフガニスタン警察官に対する訓練に柔道講師を派遣して指導を行ったほか、東ティモールに専門家を派遣してコミュニティ・ポリーシングの推進に係る助言・指導を行った。
 また、マレーシア、ブラジル等に専門家を派遣して交番制度、犯罪鑑識、交通警察等の分野で知識・技術の移転を図っている。23年中には、上記事例も含め、24人の専門家を派遣し、派遣者数は、継続派遣中の者と合わせ36人となった。
 
トルコ国内での訓練に参加したアフガニスタン警察官に対して柔道を指導中の専門家
トルコ国内での訓練に参加したアフガニスタン警察官に対して柔道を指導中の専門家
 
東ティモール警察におけるセミナーの様子
東ティモール警察におけるセミナーの様子

エ 研修生の受入れ
 警察では、警察運営、交番制度、犯罪鑑識等の分野における知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、研修員の受入れ体制を整備し、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。23年中には、19回の研修で185人の研修員を受け入れた。

② 国際緊急援助活動

 我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の一員として国際緊急援助活動を行っている。
 23年2月のニュージーランド南島クライストチャーチ市付近における地震に際しては、ニュージーランド政府から要請を受け、国際緊急援助隊救助チーム要員として捜索・救助活動等に当たる警察職員38人のほか、専門家チーム要員として被災者の身元確認作業(DVI)に当たる警察職員5人を派遣した。

 第2節 国民の信頼に応える警察

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