第6章 警察活動の支え 

6 シンクタンクの活動

(1)警察政策研究センター

 警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、様々な治安上の課題に関する調査研究を進め、政策提言を行うとともに、警察と国内外の研究者等との交流の拠点として活動している。

① フォーラム等の開催

 関係機関・団体等と連携し、国内外の研究者・実務家を交えて社会安全等に関するフォーラム等を開催している。
 
表6-3 フォーラム等の開催状況(平成23年度)
表6-3 フォーラム等の開催状況(平成23年度)
Excel形式のファイルはこちら

事例
 平成23年8月、神戸市で開催された「国際犯罪学会第16回世界大会」において、警察政策学会との共催により、「犯罪抑止政策の総合的展開 ~日本の教訓~」をテーマとするシンポジウムを開催した。大学教授、警察庁職員等がパネリストとして参加し、活発に意見交換した。
 
フォーラムの開催
フォーラムの開催

② 大学関係者との共同研究活動の推進

 大学関係者と共同して研究活動を行っている。最近の研究活動として、慶應義塾大学大学院法学研究科との諸外国のテロ対策法制等に関する共同研究、早稲田大学社会安全政策研究所との少年非行・被害防止及び外国人犯罪に関する共同研究等がある。

③ 大学・大学院における講義の実施

 警察政策に関する研究の発展及び普及のため、東京大学公共政策大学院、一橋大学国際・公共政策大学院、早稲田大学法科大学院、中央大学法科大学院、首都大学東京都市教養学部、法政大学法学部等の大学・大学院に職員を講師として派遣するとともに、特別講義を行っている。
 
大学・大学院における講義の実施
大学・大学院における講義の実施

④ 警察に関する国際的な学術交流

 海外で開催される国際的な学術会議に参加し、日本警察に関する情報発信を行っている。また、韓国警察大学治安政策研究所及びフランス高等治安・司法研究所との間で協定を締結し、警察に関する国際的な学術交流を実施している。
 
警察に関する国際的な学術交流
警察に関する国際的な学術交流

事例①
 23年3月、カナダ・オンタリオ州トロントで開催された刑事司法科学アカデミー2011年年次会合に参加して、犯罪対策の動向等について各国の刑事司法分野の研究者及び実務家と意見交換を行った。

事例②
 23年11月、米国・ワシントンD.C.で開催された第63回米国犯罪学会に参加して、インターネット上での音声通信を可能とする技術を利用した新たな犯罪現象について発表を行った。

(2)警察情報通信研究センター

 警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動に関わる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備や情報通信技術を悪用した犯罪対策に活用されている。

研究例① 警察情報管理システムの高度化に関する研究

 警察情報管理システムでは、指掌紋、自動車ナンバーの照合にパターン認識技術を応用しているところ、3番目の認識技術として顔画像自動識別技術の応用に向け、現在の識別精度が実用化の領域に達しているかを確認するとともに、対照画像の撮影角度、画質等の識別精度の低下を招く要因等についての調査研究を行っている。

研究例② 携帯電話を始めとした電子機器の解析に関する研究

 携帯電話を始めとした電子機器に保存されている電磁的記録は、犯罪捜査上極めて有効な資料となり得ることから、これらの抽出、可視化及び可読化についての技術の研究を行っている。
 
電子機器の解析の様子
電子機器の解析の様子

(3)科学警察研究所

 生物学、医学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究員が、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止等についての研究及び開発を行っている。また、各都道府県警察からの依頼により、事件、事故等に係る鑑定や検査を実施している。

研究例① 一塩基多型(SNPs)分析による生体資料からの異同識別検査法の研究

 現在、全国の科学捜査研究所では、DNA中の塩基配列の繰り返し部位を検査する方法を用いて、個人を識別しているが、毛髪や骨といったDNAの分解が進みやすい資料からこれを検出するのは困難である。そこで、分解が進んだDNAからでも検出しやすい一塩基多型(SNPs)と呼ばれる部位を指標とした新たな個人識別法の研究開発を行った。さらに、一塩基多型部位の検査では困難とされてきた複数人が混在する資料の識別方法についての研究を進めている。
 
塩基配列分析装置 多数の塩基配列を高速に分析することにより、一塩基多型部位の探索や確認を行う装置
塩基配列分析装置 多数の塩基配列を高速に分析することにより、一塩基多型部位の探索や確認を行う装置

研究例② 取調べ手法に関する研究

 被疑者、被害者等に対する面接手法に関する行動科学的研究では、それぞれの面接において実証的で有用な手法を明らかにすることを目的としている。特に、被疑者に対する取調べについては、その高度化に資するため、質問紙調査、面接調査及び実験の方法を用いて、日本の法体系や文化に適した取調べの手法や、被疑者から供述を得るために効果的な質問方法、取調べを行う環境の在り方、配慮を要する被疑者への対応方法等に関する研究を行っている。
 
取調べの模擬実験の様子
取調べの模擬実験の様子

 第1節 警察の基盤

前の項目に戻る     次の項目に進む