第4節　災害等への対処と警備実施

1　自然災害等への対処

（1）自然災害等の発生状況と警察活動

　平成23年中は、地震、津波、大雨、台風、強風及び高潮により、死者・行方不明者19,431人、負傷者6,866人等の被害が発生した。19年から23年にかけての自然災害による主な被害状況は、表5-7のとおりである（東日本大震災の被害状況と警察活動については特集参照）。

　23年中は、「平成23年7月新潟・福島豪雨」が発生したほか、21個の台風が発生し、うち3個が日本に上陸し、9個が接近した。これらの大雨、台風等の風水害により、死者116人、行方不明者19人等の被害が発生した（24年3月31日現在）。

①　平成23年7月新潟・福島豪雨

　7月28日から30日にかけて、前線が朝鮮半島から北陸地方を通って関東の東に停滞し、新潟県と福島県会津地方を中心とした広い範囲で「平成16年7月新潟・福島豪雨」を上回る記録的な大雨となり、土砂災害等を引き起こした。これにより、新潟県及び福島県において死者4人、行方不明者2人等の被害が発生した。
　福島県警察では、東日本大震災により設置中の災害警備本部において、新潟県警察では、警察本部長を長とする災害警備本部を設置し、それぞれ機動隊等を被災現場へ出動させ、被害情報の収集、被災者の救出救助等を実施した。

機動隊による行方不明者の捜索状況（新潟県十日町警察署管内の羽根川）

②　台風第12号

　8月25日に発生した台風第12号は、高知県東部に上陸し、四国地方、中国地方を縦断した。この台風は、一部の地域で総降水量1,800ミリを超えるなど、記録的な大雨をもたらし、土砂災害等を引き起こした。これにより、全国で死者81人、行方不明者16人等の被害が発生した（24年3月31日現在）。
　奈良県警察、和歌山県警察を始めとする関係都道府県警察及び管区警察局は、警察本部長を長とする災害警備本部等を、警察庁は警備局長を長とする非常災害警備本部をそれぞれ設置するとともに、奈良県警察は最大時約520人体制で、和歌山県警察は最大時約1,200人体制で、それぞれ機動隊等を被災現場へ出動させ、被害情報の収集、被災者の救出救助等を実施した。
　また、滋賀、京都、大阪及び兵庫の各府県警察は、広域緊急援助隊等延べ約3,100人を、警視庁、新潟、静岡、福井、岐阜、大阪、兵庫及び鳥取の各都府県警察は、警察用航空機を、奈良及び和歌山の両県警察に派遣した。

機動隊による水没した教職員住宅の捜索状況（台風第12号、奈良県吉野郡天川村坪内）

③　台風第15号

　23年9月13日に日本の南海上で発生した台風第15号は21日午後に静岡県浜松市付近に上陸し、強い勢力を保ったまま東海地方から関東地方、そして東北地方を縦断しながら進んだ。
　この台風がもたらした強風、土砂災害等により、全国各地で死者19人、行方不明者1人等の被害が発生した（24年3月31日現在）。
　関係都道府県警察は災害警備本部等を設置するとともに、機動隊等を被災現場へ出動させ、被害情報の収集、被災者の救出救助等を実施した。

機動隊による行方不明者の捜索状況(台風第15号、岐阜県多治見市)

（2）広域緊急援助隊特別救助班の活動

　警察では、平成17年4月に、12都道府県警察^（注1）の広域緊急援助隊に、極めて高度な救出救助能力を持つ特別救助班（P-REX^（注2））を設置した。
　特別救助班は、これまでに17年のJR西日本福知山線列車事故や、19年の新潟県中越沖地震、20年の岩手・宮城内陸地震、「平成21年7月中国・九州北部豪雨」等の災害現場に出動しているほか、23年中、東日本大震災と台風第12号の被災地において、被災者の救出救助に当たった。
　特別救助班は、平素から廃屋等を利用した訓練や関係機関との合同訓練等を行い、救出救助能力の向上に努めている。また、救出救助活動を安全かつ迅速に実施するためには、部隊指揮官の指揮能力が重要であることから、部隊指揮要領の実戦的訓練や、各種災害現場についての事例研究等を実施するなど、指揮官の指揮能力の向上を図っている。

救出救助訓練を行う特別救助班