第5章 公安の維持と災害対策 

5 大衆運動の動向

(1)福島第一原子力発電所事故をめぐり取り組まれた反原発運動

 平成23年中、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故を受け、反原発団体、環境保護団体等は、水・食料品への放射能汚染、子供の被曝(ばく)問題、再稼働問題等を捉え、「原発いらない」、「子どもを守れ」などと訴え、全国各地で、集会やデモに取り組んだ。これらの集会やデモには、子供を持つ女性や若者から高齢者まで幅広い年代の者も多数参加するなど、全国的な盛り上がりがみられた。
 事故発生から3か月後、半年後及び1年後といった節目の時期には、全国的な行動が呼び掛けられ、同年9月19日には、都内の明治公園で、労働組合、大衆団体等の多様な団体が集結し、国内の反原発運動で過去最大規模となる集会やデモが行われた(主催者発表約6万人)。
 
「脱原発」を求める集会(時事)
「脱原発」を求める集会(時事)

(2)国際的連携を強める反グローバリズム等の社会運動

 福島第一原子力発電所事故に伴う世界的な反原発運動の高まりを背景に、反グローバリズムを掲げる勢力は、環境保護団体等と連携しながら、欧州を中心に大規模なデモに取り組んだ。また、23年9月、米国・ニューヨーク市内で始まった「ウォール街占拠行動」は、経済格差の拡大や若年層の高い失業率等を背景に、ウェブサイトを通じて世界規模の運動へと急速に拡大し、各国においても大規模な抗議行動が取り組まれた。一部では、参加者が警察部隊と衝突するなどして、多数の逮捕者が出ており、我が国においても、反グローバリズムを掲げる勢力等が、海外での抗議行動と連携して集会やデモに取り組んだ。

(3)我が国の捕鯨を取り巻く国内外の動向

 米国の過激な環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、平成22年12月から行われた我が国の南極海調査捕鯨に対し、「妥協なき作戦」と称して、発煙筒や酪酸瓶の投てき等、執拗かつ過激な妨害活動を行った。この結果、23年2月、船員の安全確保を理由に調査捕鯨は中断され、シー・シェパードはウェブサイトで「勝利宣言」を行った。
 このほか、シー・シェパードは、22年9月から23年2月まで、和歌山県太地町に活動家を常駐させ、イルカ漁に反対する活動に取り組み、この過程で、イルカ漁関係者に対する執拗な嫌がらせ等を行った。同年9月には、シー・シェパードによる太地町での活動が再開された。
 
発煙筒を投てきする活動家(提供:(財)日本鯨類研究所)
発煙筒を投てきする活動家(提供:(財)日本鯨類研究所)

(4)雇用問題を捉えて取り組まれた運動

 全国労働組合総連合(全労連)は、東日本大震災に起因する解雇や雇止めの問題を捉え、「大震災を口実とした首切り・賃金カット、中小零細企業切り捨てを許すな」等のスローガンを掲げ、集会やデモを行った。また、平成23年7月の第46回評議員会において、22年の第25回定期大会で示した方針に「被災者本位の震災復興の実現を求める運動」等を加え、以降、震災による雇用悪化を取り上げた署名行動等を行った。

 第3節 公安情勢と諸対策

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