第5章 公安の維持と災害対策 

3 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向

① 批判活動の展開

 右翼は、平成23年中、日本政府の政策や領土問題等をめぐり街頭宣伝活動や抗議行動等に執拗(よう)に取り組んだ。
 特に東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故に関して、政府等の対応を強く批判した。
 また、中国をめぐっては、依然として尖閣諸島周辺に中国漁船が接近している動向等を捉え、北朝鮮をめぐっては、朝鮮学校の授業料無償化問題等を捉え、韓国をめぐっては、竹島問題等を捉え、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉え、それぞれ関係国、日本政府等を批判した。
 
右翼の抗議行動(1月、千葉)
右翼の抗議行動(1月、千葉)

 右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表5-4のとおりである。
 
表5-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成23年)
表5-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成23年)
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 このほか、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき「外国人参政権反対」等を主張するいわゆる右派系市民グループによる活動も各地で展開され、一部に反対勢力とのトラブルもみられた。

② 右翼関係事件の傾向

 23年5月、右翼団体構成員らがフランス国内で放送されたテレビ番組の内容に抗議する目的で、フランス大使館に街頭宣伝車で乗り付け、同大使館敷地内に侵入した建造物侵入事件等が発生している。
 近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図5-10のとおりである。
 
図5-10 右翼関係事件の検挙状況(平成19~23年)
図5-10 右翼関係事件の検挙状況(平成19~23年)
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 このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、それぞれ表5-5のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件
 
表5-5 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成23年)
表5-5 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成23年)
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(2)右翼対策の推進

① テロ等重大事件の未然防止に向けた違法行為の検挙

 警察では、右翼によるテロ等重大事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例
 政治団体幹部(42)は、実質的に経営する整骨院において、被保険者に施術療養費支給対象となる施術をあたかも施したかのように装うなどして、虚偽の国民健康保険療養費支給申請書等を作成、提出し、保険者(地方自治体)から総額約115万円の施術療養費をだまし取った。平成23年9月、詐欺罪で逮捕した(埼玉)。
 

② 街頭宣伝車対策の推進

 警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。
 23年中の取締り状況は表5-6のとおりである。
 
表5-6 街頭宣伝活動に対する取締り状況 (平成23年)
表5-6 街頭宣伝活動に対する取締り状況 (平成23年)
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街頭宣伝車の取締り状況
街頭宣伝車の取締り状況

 第3節 公安情勢と諸対策

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