第3節 公安情勢と諸対策
1 オウム真理教の動向と対策
(1)オウム真理教の動向
オウム真理教は、平成19年5月、主流派(「Aleph(アレフ)」)と上祐派(「ひかりの輪」)とに内部分裂した。
主流派は、依然として麻原彰晃こと松本智津夫を「尊師」と尊称し、同人の「生誕祭」を開催したり、肖像写真を拠点施設の祭壇に飾ったりするなど、同人への絶対的帰依を強調する「原点回帰」路線を強めている。
一方、上祐派は、同派のウェブサイトに旧教団時代の反省・総括の概要を掲載したり、各種メディアを通じて「松本からの脱却」を強調するなど、松本の影響力がないかのように装って活動するとともに、著名人と対談を行うなどして、「開かれた教団」のアピールに努めている。同派は、今後も観察処分
(注)の適用回避に全力を挙げるものとみられる。
(2)オウム真理教対策の推進
平成23年12月31日、警察庁指定特別手配被疑者の平田信が、警視庁丸の内警察署に出頭したため、24年1月1日、同人を逮捕監禁致死罪(公証役場事務長逮捕監禁致死事件)で逮捕(同月20日、逮捕監禁罪で起訴)するとともに、同月10日、平田信をかくまっていたとして警視庁大崎警察署に自首した教団元出家信者の女を、同日、犯人蔵匿罪で逮捕した(同月30日、同罪で起訴)。また、平田信については、同月31日、爆発物取締罰則違反及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反で再逮捕した。
また、同年2月2日から、地下鉄サリン事件等の捜査特別報奨金の上限額が300万円から800万円に引き上げられたため、特別手配被疑者の検挙等に結び付く有力な捜査情報の提供者に、従来の私的懸賞金200万円と合わせ、最高1,000万円が支払われることになった。
このような状況の中、同年6月3日には同じく特別手配被疑者の菊地直子を神奈川県相模原市内において発見し、同日、殺人及び殺人未遂罪(地下鉄サリン事件)で逮捕し、さらに同月15日には、同じく特別手配被疑者の高橋克也を東京都大田区内において発見し、同日、殺人及び殺人未遂罪(地下鉄サリン事件)で逮捕した。
警察は、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的な違法行為の厳正な取締りと必要な警戒警備を推進している。
なお、平田信は、警察署への出頭に先立ち、警視庁本部に出頭したところ、いたずらとして処理されるという不適切な取扱いがなされた。警察ではこれを重く受け止め、全職員に対する重要指名手配被疑者に関する情報の周知徹底、重要指名手配被疑者の出頭時等における的確な対応及び追跡捜査の徹底に努めている。