第5章 公安の維持と災害対策 

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

 平成23年のG8ドーヴィル・サミットでは、大量破壊兵器(核兵器、生物兵器及び化学兵器)及びその運搬手段としてのミサイル並びにその関連物資及び技術(以下「大量破壊兵器関連物資等」という。)の不拡散に取り組むことを改めて表明する首脳声明が採択された。同声明は、「関連する全ての多国間条約及び取決めを支持すること、並びにその実施及び普遍化を促進することによって、国際的な核不拡散の枠組みを強化することを決意する」とした。
 警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっていることを踏まえ、各国が主催するPSI(注)阻止訓練に都道府県警察のNBCテロ対応専門部隊を派遣するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、98か国(平成24年6月1日現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。
 
PSI阻止訓練における放射線測定器を使用した容疑物資の検査
PSI阻止訓練における放射線測定器を使用した容疑物資の検査

(2)不正輸出の取締り

 警察では、我が国からの大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを積極的に推進しており、これまでに、不正輸出事件を28件(平成24年6月1日現在)検挙している。
 また、これまで検挙した事件において、第三国を経由した迂回輸出の実態が確認されるなど、不正輸出の手口が更に悪質・巧妙化していくことが懸念されるところ、警察では、国内外の諸情勢を的確に把握・分析するとともに、国内関係機関との緊密な連携、外国治安機関との情報交換等を通じて、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを更に徹底することとしている。

事例①
 化学機械器具製造・販売会社社長らは、軍用の化学製剤の製造に用いられるものとして、外為法で輸出が規制されているマグネットポンプ1台を、経済産業大臣の許可を受けないで、平成20年12月、中国向けに不正に輸出したことから、23年9月、外為法違反(無許可輸出)で検挙した(埼玉・茨城)。
 
不正に輸出されたマグネットポンプ(9月、埼玉、茨城)
不正に輸出されたマグネットポンプ(9月、埼玉、茨城)

事例②
 合成樹脂製造会社の元部長は、通常兵器に用いられるものとして、外為法で輸出が規制されている炭素繊維成型品を、経済産業大臣の許可を受けないで、21年1月に香港に向け、同年5月に台湾に向けて不正に輸出したことから、23年12月、外為法違反(無許可輸出)で検挙した(警視庁)。

 第2節 外事情勢と諸対策

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