第4章 安全かつ快適な交通の確保 

3 道路交通のIT化

(1)警察によるITS(注1)(高度道路交通システム)

 警察では、最先端の情報通信技術等を用いて交通管理の最適化を図るため、光ビーコンの機能を活用して次の3つのシステムを始めとするUTMS(注2)(新交通管理システム)の開発・整備を推進し、安全・円滑かつ快適で環境負荷の低い交通社会の実現を目指している。

注1:Intelligent Transport Systems
注2:Universal Traffic Management Systems

① PTPS(注3)(公共車両優先システム)

 バス等の大量公共輸送機関を優先的に走行させる信号制御を行い、定時運行と利便性の向上を図るシステム(平成23年度末現在、40都道府県で整備)

注3:Public Transportation Priority Systems
 
図4-21 公共車両優先システム
図4-21 公共車両優先システム

② FAST(注4)(現場急行支援システム)

 人命救助その他の緊急業務に用いられる車両を優先的に走行させる信号制御等を行い、現場到着時間の短縮及び緊急走行に伴う交通事故防止を図るシステム(23年度末現在、14都道府県で整備)

注4:FAST emergency vehicle preemption systems

③ DSSS(注5)(安全運転支援システム)

 運転者に周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供することで、危険要因に対する注意を促し、ゆとりをもった運転ができる環境を作り出すことにより、交通事故を防止することなどを目的としたシステム(23年度末現在、6都県で整備)

注5:Driving Safety Support Systems
 
図4-22 安全運転支援システム
図4-22 安全運転支援システム

(2)ITSに関する国際協力の推進

 技術開発の分野では、広い視野をもって検討を行うことが必要であることから、他国との共同プロジェクトの推進等国際的な協力関係の樹立が重要である。警察庁では、平成23年10月、米国・オーランドで開催された第18回ITS世界会議(世界59か国から産学官の関係者約6,500人が参加)に参加し、ITSに関して各国と情報交換を行い、協力関係を深めた。また、米国運輸省道路交通安全局との間で署名した、交通安全、ITS及び緊急時対応の協力に関する文書に基づき、24年1月、米国で会議を開催し、両国が推進するITSに関する施策について情報交換を行った。
 
第18回ITS世界会議
第18回ITS世界会議

(3)警察による交通情報提供

 警察では、交通管制システムにより収集・分析したデータを交通情報として広く提供し、運転者が混雑の状況や所要時間を的確に把握して安全かつ快適に運転できるようにすることにより、交通の流れを分散させ、交通渋滞や交通公害の緩和を促進している。
 情報提供の手段としては、交通情報板等のほか、VICS(注1)(道路交通情報通信システム)を活用している。VICSは、光ビーコン(注2)等を通じてカーナビゲーション装置に対して交通情報を提供するシステムで、時々刻々変動する道路交通の状況をリアルタイムで地図画面上に表示することができるほか、図形・文字でも分かりやすく表示することができる。
 また、関係団体の協力の下、警察の保有するリアルタイムの交通情報をオンラインで提供するシステムを構築するなどして、カーナビゲーション装置のほか、携帯電話やインターネットを活用して交通情報を提供する民間事業の高度化を支援するとともに、交通情報の提供に関する指針を定め、こうした事業が交通の安全と円滑に資するものとなるよう働き掛けをしている。

注1:Vehicle Information and Communication System
注2:通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、車載装置と交通管制センターの間のやり取りを媒介する路上設置型の赤外線通信装置
 
図4-23 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例
図4-23 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例

コラム⑥ 路面電車への優先信号制御による定時性・利便性の向上


 熊本市内では、郊外と市内中心部との間を行き来する車両の慢性的な渋滞の影響により、当該区間を結ぶ熊本市営の路面電車の運行に支障を来していたことから、熊本県警察では、熊本市と協力し、路面電車優先システムを導入することとした。
 このシステムは、バス路線で運用実績のある公共車両優先システム(PTPS)を活用し、路面電車から光ビーコンに送信される情報に基づき、交通管制センターで信号制御を行い、進行方向の信号機が青の場合は点灯時間を延長し、赤の場合は点灯時間を短縮することで、路面電車を優先的に走行させるものである。
 平成23年3月1日から本システムの運用を開始し、導入区間の運行に要する時間が最大で約1分30秒(約14%)短縮され、運行の遅れが改善されるなどの効果が得られた。
 警察では、今後も地方自治体、バスや路面電車の運行事業者等と連携し、公共交通機関の利便性を向上させる施策を進めることとしている。
 
路面電車優先システム
路面電車優先システム

 第4節 交通環境の整備

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