第4章 安全かつ快適な交通の確保 

第3節 運転者対策

1 運転者教育

(1)運転者教育の体系

 運転者教育の機会は、運転免許を受ける過程及び運転免許を受けた後における各段階に体系的に設けられており、その流れは次のとおりである。
 
図4-12 運転者教育の体系
図4-12 運転者教育の体系

(2)運転免許を受けようとする者に対する教育の充実

 運転免許を受けようとする者は、都道府県公安委員会の行う運転免許試験を受けなければならないが、指定自動車教習所(注1)の卒業者はそのうち技能試験が免除される。
 指定自動車教習所は、初心運転者教育の中心的役割を担うことから、警察では教習指導員の資質の向上を図るなどして、指定自動車教習所における教習の充実に努めている。
・ 指定自動車教習所全国で1,366か所(平成23年末現在)
・ その卒業者で23年中に運転免許試験に合格した者の数155万5,430人(合格者全体の96.6%)
 また、運転免許を受けようとする者は、その種類に応じ、安全運転に関する知識や技能等を習得するための講習(取得時講習)を受講することが義務付けられている。ただし、指定自動車教習所又は特定届出自動車教習所(注2)を卒業した者はこれと同内容の教育を受けているため、受講する必要がない。

注1:職員、施設及び運営方法が一定の基準に適合するものとして都道府県公安委員会が指定した自動車教習所
注2:届出自動車教習所のうち、職員、施設、教習方法等が一定の基準に適合するものとして都道府県公安委員会が指定した教習課程を行う自動車教習所
 
表4-3 取得時講習の実施状況(平成23年)
表4-3 取得時講習の実施状況(平成23年)
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(3)運転免許取得後の教育の充実

① きめ細かな更新時講習の実施

 更新時講習は、運転免許証の更新の機会に定期的に講習を行うことにより、安全な運転に必要な知識を補い、運転者の安全意識を高めることを目的としている。この講習は、受講対象者を法令遵守の状況等により優良運転者、一般運転者、違反運転者及び初回更新者に区分して実施している。
 
表4-4 更新時講習の実施状況(平成23年)
表4-4 更新時講習の実施状況(平成23年)
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② 危険運転者の改善のための教育

 道路交通法等に違反する行為をし、累積点数が一定の基準に該当する者や行政処分を受けた者に対しては、その危険性の改善を図るための教育として、初心運転者講習、取消処分者講習、停止処分者講習及び違反者講習を実施している。
 特に飲酒運転者対策として、停止処分者講習等において、飲酒運転違反者を集めて行う飲酒学級を設置し、飲酒ゴーグル、飲酒シミュレーター等を活用した酒酔い等の疑似体験、飲酒運転事故の被害者遺族等による講義を実施するなど、教育内容の充実に努めている。また、平成23年6月から一部の府県において飲酒運転違反者に対し、飲酒行動の改善等のためのカリキュラムとして新たに、AUDIT(注1)、ブリーフ・インターベンション(注2)等を盛り込んだ取消処分者講習(飲酒取消講習)の試行実施を始めた。飲酒取消講習は、飲酒運転違反者に対してより効果的な教育を行うことを目的としたもので、25年度を目途に全国において実施することとしている。

注1:Alcohol Use Disorders Indentification Testの略。世界保健機関がスポンサーになり、数か国の研究者によって作成された「アルコール使用障害に関するスクリーニングテスト」。面接又は質問紙により、その者が危険・有害な飲酒習慣を有するかどうかなどを判別する。
注2:受講者に、日々の飲酒量等に関し自身が設定した目標の達成状況を一定期間記録させた上で、その記録内容に基づき、受講者ごとに問題飲酒行動及び飲酒運転の抑止のための指導を行うもの
 
ブリーフ・インターベンション
ブリーフ・インターベンション
 
表4-5 危険運転者の改善のための教育の実施状況(平成23年)
表4-5 危険運転者の改善のための教育の実施状況(平成23年)
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③ 自動車教習所における交通安全教育

 自動車教習所は、いわゆるペーパードライバー教育を始めとする運転免許取得者に対する交通安全教育も行っており、地域における交通安全教育センターの役割も果たしている。こうした教育の水準の向上と普及のため、一定の水準に適合する場合は都道府県公安委員会の認定を受けることができることとされている。

(4)高齢運転者対策の充実

 高齢者講習は、更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の高齢者の運転免許証の更新時に義務付けられており、安全運転に必要な知識等に関する講義のほか、自動車等の運転、運転適性検査器材(注)による指導等を通じ、受講者に自らの身体機能の変化を自覚してもらった上で、その結果に基づく助言・指導を行うことを内容としている。平成23年中は202万5,965人が受講した。
 また、更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の高齢者は、運転免許証の更新期間が満了する日前6月以内に講習予備検査(認知機能検査)を受けることが義務付けられており、検査の結果に応じた高齢者講習を受講することとされている。23年中の講習予備検査(認知機能検査)の受検者数は119万4,263人であった。

注:視覚を通じた刺激に対する反応の速度及び正確性を検査する器材、動体視力検査器、夜間視力検査器及び視野検査器
 
運転者適正検査器材を用いた高齢者講習
運転適性検査器材を用いた高齢者講習
 
図4-13 高齢者講習の流れ
図4-13 高齢者講習の流れ

コラム② 運転経歴証明書制度の充実


 身体機能の低下等を理由に自動車等の運転をやめる際には、運転免許の取消しを申請して運転免許証を返納することができるが、その場合には、申請により運転経歴証明書の交付を受けることができる(23年中の交付件数は2万9,202件)。
 この制度に関し、23年12月に道路交通法施行令及び道路交通法施行規則が改正され、24年4月から施行された。これらの改正により、運転経歴証明書の交付を受けられる期間が、運転免許証を返納してから5年以内にまで延長されるとともに、記載事項の変更の届出や再交付の申請等を行うことができることとなった。また、24年3月には犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則が改正され、同年4月から施行された。改正前においては、運転経歴証明書は交付から6月を経過すると同規則上の本人確認書類として認められなかったところ、この改正により、運転経歴証明書が同規則上の本人確認書類として明記され、交付から6月を経過しても本人確認書類として使用できることとなった。
 
運転経歴証明書の様式
運転経歴証明書の様式

 第3節 運転者対策

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