第3章 組織犯罪対策 

警察活動の最前線

国境を超えて

福岡県警察本部暴力団対策部組織犯罪対策課
江藤 隆之(えとう たかゆき) 警部補
 
福岡県警察本部マスコットキャラクター ふっけい君
ふっけい君

 私は、組織犯罪対策課に置かれた国際捜査室の一員として、主に外国人の取調べを担当しています。 外国人の取調べは、言語はもちろんのこと、生活習慣、道徳、法律等の違いから意思の疎通が難しく、黙秘され続けたり、さらには「我々の恐ろしさを知らないのか」「幾ら金が欲しいか」などと脅しや取引を持ちかけられたりと、困難を極めることが多々あります。そのような中でも、私は「外国人でも心は通じ合える」との信念を持って取調べに臨んでいます。 例えば、心を閉ざして否認を貫く被疑者に対し、故郷で農業をしている両親が高齢であり心配していることなど自分の境遇を語りかけたところ、間もなくして被疑者が「私も故郷に両親がいる。父親が病気で母親が一人で農業をしているので、父親の治療費を稼ごうと思って・・・」と、私に心を開き、犯罪の事実を話してくれたことがあります。 外国人犯罪者であれ、私たちと同じように故郷があり、そこには家族がいます。文化や風習が違っても、人間として感じることは同じだと確信しています。罪を許さず、事件を解決するのは当然のことですが、私は同じ人間として、今後も「心の通じる取調べ」を心掛けたいと思っています。
 
福岡県警察本部暴力団対策部組織犯罪対策課 江藤隆之(えとう たかゆき) 警部補

警察官として…そして、人として…

岐阜県警察本部刑事部組織犯罪対策課
大野 純子(おおの じゅんこ) 警部補
 
岐阜県警察本部マスコットキャラクター らぴぃ
らぴぃ

 初めて薬物捜査に携わってから15年が経ちました。
 薬物事犯はこの10年で様変わりし、過去に経験したものとは比べものにならないほど巧妙化の一途をたどり、高度な捜査が求められていますが、今も揺るがない、私の根幹は「薬物(犯罪)に手を染めている者を立ち直らせたい」という思いです。
 社会の人間関係が希薄であると叫ばれ、それゆえに、悲しい事件が後を絶たない昨今、私は過去に取り調べた被疑者が再度薬物に手を染めたとしたら、それは自分の責任でもあるという思いで一人一人と接しています。出所後、周囲に頼れる人間がおらず、夜泣きながら私に電話をしてくる者もおり、そういうときは母親のような気持ちで相手の話に耳を傾けます。
 薬物捜査に関し、警察官という立場からすれば、末端乱用者を根絶するとともに様々な法令を駆使して供給源を絶ち、犯罪収益をはく奪して組織を壊滅することが必要不可欠ですが、その一方で「まず人として、私がどう向き合うべきか」を常に考え、捜査していきたいと考えています。
 
岐阜県警察本部刑事部組織犯罪対策課 大野純子(おおの じゅんこ) 警部補

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。

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