第3章 組織犯罪対策 

2 マネー・ローンダリング事犯の検挙状況

 マネー・ローンダリングとは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や犯罪の検挙を逃れようとする行為であり、我が国では、組織的犯罪処罰法や麻薬特例法においてマネー・ローンダリングが罪として規定されている(注)
 平成23年中におけるマネー・ローンダリング事犯の検挙件数は、組織的犯罪処罰法違反で243件(前年比38件増加)、麻薬特例法違反で8件(前年比1件減少)であり、組織的犯罪処罰法違反については、暴力団構成員等によるものが33.3%を占めている。
 23年中における暴力団構成員等が関与したマネー・ローンダリング事犯を事件態様別にみると、主要なものとしては振り込め詐欺等の詐欺が17件、ヤミ金融事犯が16件、盗品等有償譲受けが11件となっているが、その他にも売春防止法違反、窃盗等があり、暴力団が様々な犯罪から資金を獲得し、その資金についてマネー・ローンダリング行為を行っている実態がうかがわれる。
 また、23年中の組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯のうち、14件が来日外国人によるものであった。

注:前提犯罪(不法な収益を生み出す犯罪であって、その収益がマネー・ローンダリング行為の対象となるものとして組織的犯罪処罰法に規定されている犯罪)としては、覚せい剤取締法違反(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪や売春防止法違反(資金等の提供)の罪等があるところ、23年7月14日、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成23年法律第74号)の一部施行に伴い、風営適正化法第49条第1号違反(無許可営業)の罪(事例2参照)、銀行法第61条第1号(無免許営業)の罪等が前提犯罪として新たに追加されることとなった。
 
表3-11 マネー・ローンダリング事犯の検挙状況の推移(平成19~23年)
表3-11 マネー・ローンダリング事犯の検挙状況の推移(平成19~23年)
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事例①
 裁判所により破産手続開始決定された会社の社長である男(51)は、義兄である山口組傘下組織幹部の男(54)と共謀して、破産手続開始前に支払われた同社の倉庫火災に対する保険金の一部である約7,000万円を義兄名義の口座に送金して隠した後、20年5月から同年7月にかけて、これらの保険金のうち合計4,000万円を40回にわたり現金出金して同社長の親族や知人名義の口座に入金していた。23年7月までに、同人らを、破産手続開始前に支払われた保険金を義兄名義の口座に隠匿したことについては破産法違反(詐欺破産罪)、その保険金のうちの一部を更に別の口座に入金して隠匿したことについては組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で逮捕した(千葉)。

事例②
 無許可で風俗店を経営していた女(56)は、他人名義の口座を客のクレジットカードやツケによる支払を受ける際の振込先口座として指定して、23年7月から同年9月にかけて、複数の客から合計約1,400万円を入金させていた。同年10月、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で逮捕した(大阪)。

 第4節 犯罪収益対策

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