第3章 組織犯罪対策 

第4節 犯罪収益対策

1 犯罪収益移転防止法に基づく活動

 暴力団等の犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止するとともに、これを確実に剥奪することが重要である。警察では、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」という。)に基づき、関係機関、事業者、外国のFIU(注1)等と協力して犯罪収益対策を推進している。

注1:Financial Intelligence Unit の略。資金情報機関と呼ばれ、疑わしい取引に関する情報を集約・分析して捜査機関等に提供する機関として各国が設置している。我が国のFIU は、国家公安委員会・警察庁が担当している。

(1)犯罪収益移転防止法の適切な履行を確保するための措置

 犯罪収益対策を効果的に推進するためには、犯罪収益移転防止法に基づき、特定事業者(注2)により顧客等の本人確認、疑わしい取引の届出等の措置が適切に履行されることが重要である。このため、国家公安委員会・警察庁は、関係機関と連携して、特定事業者を対象とした研修会やウェブサイト等を利用して犯罪収益移転防止法に対する理解と協力の促進に努めている。また、国家公安委員会・警察庁は、特定事業者が顧客等の本人確認義務等に違反していると認めた場合、犯罪収益移転防止法に基づき、当該特定事業者を所管する行政庁に対して、是正命令等を行うべき旨の意見陳述を行っている。

注2:犯罪収益移転防止法第2条第2項で規定されている事業者
 
表3-9 所管行政庁に対する意見陳述の実施件数の推移
表3-9 所管行政庁に対する意見陳述の実施件数の推移
Excel形式のファイルはこちら

(2)疑わしい取引の届出

 犯罪収益移転防止法に定める疑わしい取引の届出制度(注3)により事業者がそれぞれの所管行政庁に届け出た情報は、国家公安委員会・警察庁が集約して整理・分析を行った後、都道府県警察、検察庁を始めとする捜査機関等に提供し、各捜査機関等においては、マネー・ローンダリング事犯(注4)の捜査等に活用している。

注3:特定事業者のうち金融機関等、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者及び電話受付代行業者は業務で収受した財産が犯罪収益である疑いがあると判断した場合等に所管行政庁へその旨届け出ることが義務付けられている。
注4:2参照
 
図3-18 疑わしい取引の届出状況の推移(平成19~23年)
図3-18 疑わしい取引の届出状況の推移(平成19~23年)
Excel形式のファイルはこちら
 
表3-10 疑わしい取引に関する情報を端緒として都道府県警察が検挙した事件数の推移(平成19~23年)
表3-10 疑わしい取引に関する情報を端緒として都道府県警察が検挙した事件数の推移(平成19~23年)
Excel形式のファイルはこちら

(3)犯罪収益移転防止法の改正

 平成23年4月、第177回国会において、取引時の確認事項の追加、電話転送サービス事業者の特定事業者への追加、預貯金通帳の不正譲渡等に係る罰則の強化等を内容とする犯罪収益移転防止法の一部を改正する法律が成立した。改正法は、25年4月1日から施行される(預貯金通帳の不正譲渡等に係る罰則の強化については23年5月28日から施行された)。

 第4節 犯罪収益対策

前の項目に戻る     次の項目に進む