第3章 組織犯罪対策 

3 犯罪のグローバル化に対応するための取組

(1)犯罪のグローバル化に対応するための戦略プランの策定

 社会、経済、文化等のグローバル化に伴う負の側面として、世界的規模で活動する犯罪組織の日本への浸透、構成員の多国籍化、犯罪行為の世界的展開といった犯罪のグローバル化が進んでいる。犯罪のグローバル化により捜査は困難となり、治安に対する重大な脅威となっている。
 犯罪のグローバル化に対応するには、発生した事件の検挙・解決にとどまることなく、犯罪のグローバル化を支えるネットワーク等を解明し、情報の収集・分析能力を高めるなど、国際犯罪組織を解体するための体制を強化する必要がある。また、国際組織犯罪は、犯行形態の広域性・多様性を強めていることから、警察が部門や管轄を越えて連携を強化するとともに、外国治安機関等との連携を緊密化させていくことが不可欠である。
 警察では、平成22年2月に「犯罪のグローバル化に対応するための戦略プラン」を策定し、各都道府県警察に国際犯罪組織の実態解明を目的とする実態解明班を設置する、部門横断的な連携によるヤード(注1)対策を実施するなど、警察組織の総合力を発揮した効率的な対策を推進している。

注1:周囲を鉄壁等で囲まれた作業所等であって、海外への輸出等を目的として、自動車等の解体、コンテナ詰め等の作業に使用していると認められる施設
 
図3-16 犯罪のグローバル化に対応するための戦略プランの5つの柱
図3-16 犯罪のグローバル化に対応するため戦略プランの5つの柱

(2)国内関係機関との連携

 警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注2)や外国人個人情報識別システム(注3)を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。法務省との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の入国管理局への手配や、合法滞在を装う偽装滞在者等の取締りのための情報交換、合同摘発等の連携を図っている。また、財務省との間では、不正輸出入を防止するための情報交換や合同摘発等の連携を図っている。

注2:Advance Passenger Information Systemの略。航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と要注意人物等に係る情報を入国前に照合することのできる事前旅客情報システム
注3:来日外国人の個人識別情報と要注意人物に係る情報を照合するシステム

(3)外国捜査機関等との連携

 日本で犯罪を敢行した被疑者が外国人である場合、氏名等の確認のために、その者の国籍国へ照会を要する場合があり、また、被疑者が海外に逃亡した際は、逃亡先国・地域の治安機関等へ所在確認等の捜査協力を依頼することとなる。さらに、国際犯罪組織については、複数の国・地域において犯罪を敢行していることから、関係国の捜査機関等との情報交換、被疑者の検挙に向けた共同オペレーション等を通じた連携が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

 ICPOは、各国の警察機関を構成員とする国際機関であり、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等を行っている。平成23年末現在で190か国・地域が加盟している。
 ICPOは、加盟国・地域間の情報交換を迅速かつ確実に行えるようにするため、独自の通信網を整備して盗難車両、紛失・盗難旅券、国外逃亡被疑者等に関するデータベースを運用しており、全加盟国・地域がこの通信網(注)を通じて、直接検索を行うことができる。
 警察庁は、捜査協力の実施のほか、各種会合への参加、事務総局への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

注:I-24/7(Interpol's global police communications system 24/7)

② 外国捜査機関との捜査協力

 警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

(4) 国外逃亡被疑者等の追跡

 日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という。)の数は依然として多い。被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、入国管理局に手配するなどして出国前の検挙に努める一方で、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関等との捜査協力や刑事共助条約(協定)に基づく共助を通じ、被疑者の所在確認等を行っている。所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして確実な検挙に努めている。
 このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関等に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。
 
図3-17 国外逃亡被疑者等の推移(平成14~23年)
図3-17 国外逃亡被疑者等の推移(平成14~23年)
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事例
 ブラジル人の男(31)らは、平成13年6月、東京都内のアパートで日本人男性を射殺し、その妻に重傷を負わせ、日本国外へ逃亡した。殺人等の容疑で国際手配等をするとともに、ブラジル警察と緊密な情報交換を実施するなどしていたところ、23年10月、逃亡先のブラジルでブラジル警察に身体を拘束された(警視庁)。

 第3節 来日外国人犯罪対策

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