第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

2 女性を守る施策

(1)ストーカー事案への対応

 警察では、被害者の意思等を踏まえ、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)に基づき、警告、禁止命令等、援助等の行政措置を講じて被害拡大の防止を図るほか、ストーカー規制法その他の法令を適用してストーカー行為者の検挙に努めている。また、各種法令に抵触しない場合であっても、被害者に対して防犯指導や関係機関の教示を行うとともに、必要に応じて相手方に対して指導警告を行うなどの対応をすることとしている。
 しかし、危機意識の不足等の要因から、対応に不備がみられる事案もあり(3(2)コラム⑩参照)、迅速かつ的確な対応について再度徹底を図っている。
 
図2-46 ストーカー事案対策の枠組み
図2-46 ストーカー事案対策の枠組み
 
図2-47 ストーカー事案の認知件数の推移(平成19~23年)
図2-47 ストーカー事案の認知件数の推移(平成19~23年)
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表2-14 ストーカー規制法の適用の推移(平成19~23年)
表2-14 ストーカー規制法の適用の推移(平成19~23年)
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事例
 平成24年2月、奈良県警察は、広島県所在の飲食店に勤務する男(31)の上司から、交際相手との別れ話に起因して男が勤務先から包丁を持ち出した可能性があり、奈良県にいる元交際相手(30代女性)に危害が及ぶかもしれない旨の通報を受理したことから、当該女性及びその家族等をシェルター等に避難させて保護を図るとともに、広島県警察と連携して、男の所在を確認し、当該女性の自宅付近の警戒を行っていたところ、男を発見した。男は、刃体の長さ約30センチメートルの牛刀を携帯していたことから、銃砲刀剣類所持等取締法違反(携帯禁止)で逮捕した(奈良、広島)。

(2)配偶者からの暴力事案への対応

 警察では、配偶者からの暴力事案に対して、被害者の意思等を踏まえて捜査を開始するほか、刑事事件として立件が困難であると認められる場合であっても、加害者に対する指導警告を行うなどの措置を講じている。
 また、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下「配偶者暴力防止法」という。)に基づき裁判所からの保護命令の通知を受けた警察では、速やかに被害者と連絡を取り、緊急時の迅速な通報等について教示するとともに、加害者に対しても、保護命令が確実に遵守されるよう指導警告等を行っている。
 さらに、被害者の一時保護、カウンセリング、シェルターの利用についての情報提供等を行う配偶者暴力相談支援センター等の関係機関・団体と連携協力して、被害者の安全確保に万全を期している。
 
図2-48 配偶者からの暴力事案の認知件数の推移(平成19~23年)
図2-48 配偶者からの暴力事案の認知件数の推移(平成19~23年)
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事例
 平成23年5月、被害者(20歳代)は夫(31)からの暴力被害等について警察に相談した。警察では、配偶者暴力相談支援センターと連携し、被害者をシェルターに避難させるなどの保護対策をとった。同月、被害者の裁判所への申立てにより配偶者暴力防止法に基づく保護命令(被害者への接近禁止等)が夫に対して言い渡された。同年8月、被害者の親族から「被害者が夫に連れていかれたようで連絡がとれない」との通報があり、付近を捜索したところ、被害者と共にいた夫を発見し、夫を配偶者暴力防止法違反(保護命令違反)で現行犯逮捕した(宮城)。
 
表2-15 配偶者暴力防止法に基づく対応状況の推移(平成19~23年)
表2-15 配偶者暴力防止法に基づく対応状況の推移(平成19~23年)
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(3)痴漢撲滅対策

 警察庁では、有識者等から構成される研究会を設置し、電車内の痴漢事犯の実態を把握するための調査、電車内の防犯カメラの効果を検証するための実験を踏え、痴漢撲滅に向けた協議を重ねた。その結果を平成23年3月、「電車内の痴漢撲滅に向けた関係機関との取組に関する報告書」として取りまとめた。
 警察では、その内容を踏まえ、関係機関・団体等と連携した広報啓発活動等の痴漢撲滅対策に取り組んでいる。
 
痴漢撲滅対策の広報活動
痴漢撲滅対策の広報活動

 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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