第1章 警察の組織と公安委員会制度 

第2節 公安委員会の活動

1 公安委員会の活動

(1)国家公安委員会

① 組織

 国家公安委員会は、国務大臣たる委員長及び5人の委員によって組織されており、委員は内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。
 
表1-1 国家公安委員会委員の構成(平成24年6月1日現在)
表1-1 国家公安委員会委員の構成(平成24年6月1日現在)

② 活動

 国家公安委員会では、国家公安委員会規則の制定、地方警務官(注)の任命や懲戒処分、指定暴力団の指定に際しての実質目的要件に該当する旨の確認等、警察法やその他の法律に基づきその権限に属させられた事務を行うほか、警察職員による各種の不祥事案の防止対策に関し警察庁を指導することなどにより、警察運営に関する大綱方針を示し、警察庁を管理している。
 平成23年中には、留置施設の巡察に関する規則等、12の国家公安委員会規則を制定した。
 国家公安委員会は、通常、毎週木曜日に定例会議を開催しているが、定例会議以外にも、例えば、23年3月12日には東日本大震災の発生を受け臨時会議を開催している。このほか、委員相互の意見交換や警察庁からの報告の聴取を行うほか、国家公安委員会委員が各地を訪問し、都道府県公安委員会委員との意見交換や警察活動の現場の視察を行うことなどにより、治安情勢と警察運営の把握に努めている。また、このような活動の状況について、ウェブサイトにより紹介している。

注:都道府県警察の警視正以上の階級にある警察官
 
国家公安委員会の定例会議
国家公安委員会の定例会議

事例①
 24年4月、国家公安委員会委員長は、福岡県を訪れ、北九州市における拳銃使用殺人未遂事件及び福岡市における対立抗争事件の発生現場を視察するとともに、地域住民及び福岡県知事、福岡市長、北九州市長等と意見交換を行った。
 
拳銃使用殺人未遂事件発生現場を視察する国家公安委員会委員長(左側)
拳銃使用殺人未遂事件発生現場を視察する国家公安委員会委員長(左側)

事例②
 23年6月、国家公安委員会は、警察本部長等に事故のあるとき又は警察本部長等が欠けたときに臨時に警察本部長としての職務を代行する者をあらかじめ指定することとし、指定される者や指定の方法についての原則を申合せにより定めた。

事例③
 23年10月、国家公安委員会委員は、福島県を訪れ、東日本大震災による被災状況を視察するとともに、被災地で活動する派遣部隊員を督励した。
 
被災地で活動する派遣部隊員を督励する国家公安委員会委員(左から2番目)
被災地で活動する派遣部隊員を督励する国家公安委員会委員(左から2番目)

事例④
 24年3月、国家公安委員会定例会議における国家公安委員会委員の指摘を受け、警察庁において、配偶者暴力事案及びストーカー事案に関する相談を受けた際に事案の危険性を判断するためのチェック票(試案)を作成し、警視庁等の9都道府県警察において試行した。

(2)都道府県公安委員会

① 組織

 都道府県公安委員会及び方面公安委員会は、都、道、府及び指定県では5人、それ以外の県及び北海道の各方面では3人の非常勤の委員によって組織されており、委員は都道府県知事が都道府県議会の同意等を得て任命する。ただし、道、府及び指定県の場合は、委員のうち2人の任命はその道、府及び県が包括する指定市の市長がその市議会の同意を得て推薦した者について行う。
 
図1-3 都道府県公安委員会委員の構成(平成23年12月31日)
図1-3 都道府県公安委員会委員の構成(平成23年12月31日)
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② 活動

 都道府県公安委員会は、運転免許、交通規制、犯罪被害者等給付金の支給裁定、古物営業等の各種営業の監督等、国民生活に関わりのある数多くの行政事務を処理するとともに、管内における事件、事故及び災害の発生状況と警察の取組、治安情勢とそれを踏まえた警察の各種施策、組織や人事管理の状況等について、定例会議の場等で、警察本部長等から報告を受け、これを指導することにより、都道府県警察を管理している。
 都道府県公安委員会は、おおむね月3回ないし4回の定例会議を開催するほか、警察署協議会への参加、教育委員会等の関係機関との協議、警察活動の現場の視察等により、治安情勢と警察運営の把握に努めている。また、このような活動の状況について、ウェブサイトにより紹介している。
 
警察署協議会委員と意見交換を行う山口県公安委員会委員(中央)
警察署協議会委員と意見交換を行う山口県公安委員会委員(中央)
 
兵庫県公安委員会のウェブサイト
兵庫県公安委員会のウェブサイト

事例①
 平成24年2月、群馬県公安委員会委員は、「少年非行、安全対策」をテーマに、同県教育委員会委員との意見交換会を開催し、少年非行の現状と今後の対策について協議した。
 
教育委員会委員と意見交換を行う群馬県公安委員会委員(右から二列目)
教育委員会委員と意見交換を行う群馬県公安委員会委員(右から二列目)

事例②
 福岡県公安委員会では、暴力団事件の多発を踏まえ、福岡県警察に対し、暴力団対策の一層の取組強化を求めるとともに、福岡県知事、福岡市長、北九州市長、福岡県警察本部長と共同声明を発表したほか、国にも対策を要請した。また、23年11月、北九州市で開催された「暴力追放福岡県民大会」に出席し、参加者に市民一丸となった暴力団追放運動の推進を訴えた。

(3)苦情処理及び監察の指示

 都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し文書により苦情の申出をすることができるが、都道府県公安委員会は、苦情の申出があったときは原則として処理の結果を文書により申出者に通知している。平成23年中は全都道府県公安委員会において1,168件の苦情を受理した。
 また、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは具体的又は個別的な監察の指示をすることができ、これまで、神奈川県公安委員会(13年4月)及び奈良県公安委員会(同年7月)が、警察職員による不祥事案の発生に際して各県警察に対し監察の指示を行ったほか、予算執行に関する不適正事案の発生に際して、北海道公安委員会(16年3月)及び福岡県公安委員会(同年4月)が、各道県警察に対し監察の指示を行った。

事例
 24年3月、長崎県西海市における殺人事件に伴う一連の警察の対応について、千葉県警察、長崎県警察及び三重県警察において検証を行ったが、検証結果の報告書に習志野警察署におけるレクリエーション旅行に関する事項が記載されていなかったことなどが報じられた。
 千葉県公安委員会の厳正な管理の下、千葉県警察は、警務部長を長とし、監察部門を主体とする体制を編成し、再検証を行った。なお、国家公安委員会も千葉県公安委員会に対し、調査に対する点検の徹底を要請した。
 再検証に当たって、千葉県公安委員会は4回の臨時会議を含め計7回の会議を開催し、随時調査状況の報告を求めるなど厳正な点検・指導を行った。
 再検証の結果、レクリエーション旅行が警察の対応に影響したと考えられること、また、千葉県警察の組織運営の観点からの問題として、幹部による組織管理の不備、被害者・国民の視点の欠如及び「警察改革の精神」の不徹底が明らかとなったことから、これらについての効果的な方策等を検討することとし、検討結果を公安委員会に報告してその点検を受けた上で、ガイドライン等としてとりまとめ、実施することとした。

(4)公安委員会相互間の連絡

 国家公安委員会と各都道府県公安委員会は相互に独立した機関であるが、その職務の性質から、常に緊密な連絡を保つため、各種の連絡会議を開催している。平成23年中は、国家公安委員会と全国の都道府県公安委員会委員との連絡会議を2回開催し、都道府県公安委員会による警察の管理の現状等についての意見交換を行った。
 また、23年中は、各管区及び北海道において、管内の府県公安委員会相互、道公安委員会と方面公安委員会相互の連絡会議が合計13回開催され、国家公安委員会委員も出席し、各都道府県の治安情勢やそれぞれの取組についての報告や意見交換が行われた。
 このほか、都道府県公安委員会相互間の意見交換や、都、道、府及び指定県の公安委員会相互の連絡会議などが開催された。
 
全国公安委員会連絡会議
全国公安委員会連絡会議

事例
 24年4月、和歌山県公安委員会委員が福島県を訪れ、東日本大震災の被災地を視察するとともに、福島県公安委員会委員と大規模災害発生時における公安委員会活動の在り方についての意見交換を行った。

 第2節 公安委員会の活動

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