第5章 公安委員会制度と警察活動の支え

6 シンクタンクの活動

(1)警察政策研究センター

警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、警察の課題に関する調査研究を進めるとともに、警察と国内外の研究者等との交流の窓口として活動している。

<1> フォーラム等の開催

関係機関・団体等と連携して、国内外の研究者・実務家を交えて社会安全等に関するフォーラム等を開催している。

表5―3 警察政策フォーラムの開催状況(平成22年)

事例〔1〕

平成22年11月、フランス政府の幹部を招き、外国人犯罪対策をテーマとしたフォーラムを開催した。大学教授、警察庁職員等がパネリストとして参加し、活発に意見交換した。

フォーラムの開催

フォーラムの開催

<2> 大学関係者との共同研究活動の推進

大学関係者と共同して研究活動を行っている。最近の研究活動として、慶應義塾大学大学院法学研究科との諸外国のテロ対策法制等に関する共同研究、早稲田大学社会安全政策研究所との少年非行・被害防止及び外国人犯罪に関する共同研究等がある。

<3> 大学・大学院における講義の実施

警察政策に関する研究の発展及び普及のため、一橋大学国際・公共政策大学院、早稲田大学法科大学院、中央大学法科大学院、首都大学東京都市教養学部、法政大学法学部等の大学・大学院に職員を講師として派遣するとともに、特別講義を行っている。

大学・大学院における講義の実施

大学・大学院における講義の実施

<4> 警察に関する国際的な学術交流

ストックホルム犯罪学シンポジウム等の国際的な学術会議等に参加し、日本警察に関する情報発信を行っている。韓国警察大学治安政策研究所及びフランス高等治安・司法研究所との間で協定を締結し、警察に関する国際的な学術交流を実施している。

警察に関する国際的な学術交流

警察に関する国際的な学術交流

事例〔2〕

22年6月、韓国・ソウルで開催されたアジア警察学会において、振り込め詐欺対策について発表するとともに、子供を犯罪から守る施策に関するパネルディスカッションに参加した。

事例〔3〕

22年11月、米国・サンフランシスコで開催された米国犯罪学会に参加して、振り込め詐欺の手口とその対策に関して発表を行った。

(2)警察情報通信研究センター

警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動に関わる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備や情報通信技術を悪用した犯罪対策に活用されている。

研究例

次世代移動通信システム等の高度化に関する研究

次世代移動通信システム等の高度化に関する要素技術の研究として、通信が可能なエリアの検討を行うため、アンテナ高が200メートルを越える場合、距離と電波の減衰の関係を示す既存のグラフから求められる近似式が無いことから、当該関係を高精度に示す近似式を考案した。

(3)科学警察研究所

生物学、医学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究員が、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止等についての研究及び開発を行っている。また、各都道府県警察からの依頼により、事件、事故等に係る鑑定や検査を実施している。

研究例〔1〕

犯罪情勢に応じた市民の犯罪対処行動の促進に関する研究

日常的な施錠習慣やひったくり防止カバーの使用、防犯ボランティア活動等の犯罪対処行動を取ることが、その個人の犯罪被害リスクをどの程度軽減するかを統計学的に分析した。また、駐車場での防犯キャンペーン参加者に対して各種の防犯情報を提示するとともに自転車錠を配布し、その後の錠の使用状況を測定する社会実験を通じて、犯罪対処行動を効果的に促進するための情報発信手法を開発した。

駐輪場での社会実験

駐輪場での社会実験

研究例〔2〕

高度な交通事故分析技術の開発

従来の交通事故鑑定では、路面痕跡、車体変形等から、物理法則等に基づいて速度等を推定してきたが、近年、電子技術の進展により、車載装置が記録したデータから、速度等の情報を直接得ることが可能となってきた。そのような車載型事故記録装置の一つとして実用化が進んでいるのが、イベントデータレコーダ(略称EDR)である。EDR は衝突前後数秒間の車速やアクセル、ブレーキの使用状況等を記録しているが、交通事故鑑定に活用するためには、装置の特性把握や記録データの精度、信頼性の検証が不可欠である。そこで、実際の交通事故を想定した様々な衝突形態の実車実験を実施して、EDR による解析手法を確立するための研究を行っている。

精度・信頼性検証のための実車衝突実験

精度・信頼性検証のための実車衝突実験


第2節 警察活動の支え

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