第2章 組織犯罪対策の推進

第2章 組織犯罪対策の推進

第1節 暴力団対策

1 暴力団情勢

暴力団は、近年、伝統的な資金獲得活動や民事介入暴力、行政対象暴力等に加え、その組織実態を隠蔽しながら、建設業、金融業、産業廃棄物処理業等や証券取引といった各種の事業活動へ進出して、企業活動を仮装したり、暴力団と共生する者(注1)を利用したりするなどして、一般社会での資金獲得活動を活発化させている。

また、公共事業に介入して資金を獲得したり、各種公的給付制度等を悪用した詐欺事件等を多数敢行するなど、社会経済情勢の変化に応じた多種多様な資金獲得活動を行っている。

さらに、繁華街や住宅街における拳銃を使用した凶悪な犯罪も後を絶たず、依然として社会にとって大きな脅威となっている。

警察では、社会経済情勢の変化にも留意しつつ、暴力団犯罪の取締りの徹底、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)の効果的な運用及び暴力団排除活動を強力に推進している。加えて近年は、暴力団排除のための施策を幅広く盛り込んだ条例を制定する地方公共団体が相次ぐなど、社会が一体となった暴力団排除の気運が高まっている。

注1:暴力団に資金を提供するなどして、暴力団の資金獲得活動に協力し、又は関与する個人やグループの存在がうかがわれる。これらの者は、表面的には暴力団との関係を隠しながら、その裏で暴力団の威力、資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図っており、言わば暴力団と共生する者となっている。

(1)暴力団構成員等の推移

暴力団構成員及び準構成員(注2)(以下「暴力団構成員等」という。)の推移は、図2―1のとおりである。その総数は、平成8年から16年にかけて緩やかに増加してきたが、17年から減少している。

22年中の山口組、住吉会及び稲川会の3団体の暴力団構成員等の数は、18年から減少しているが、総数に占める割合は7割以上に及んでおり、依然として寡占状態にある。中でも山口組の暴力団構成員等の数は暴力団構成員等の総数の44.4%(注3)を占めている。

図2―1 暴力団構成員等の推移(平成13~22年)

注2:暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与するものをいう。

注3:山口組の暴力団構成員の数は、全ての暴力団構成員の数の48.1%を占める。

(2)山口組の情勢

山口組は、その暴力団構成員等の数に加え、多くの暴力団と友誼(ぎ)関係(注1)等を構築することにより、大半の暴力団に影響を及ぼし得る地位を獲得しており、山口組による一極集中の勢力関係が生じている。その山口組の傘下組織の一つである弘道会は、山口組を事実上支配し、山口組を一層強大化させる原動力となっている(注2)

注1:他団体との間で、首領、幹部同士が擬制的血縁関係を結び義兄弟になるなどして作り上げられる関係をいう。

注2:山口組・弘道会対策については2章1節2項コラム1 参照

(3)暴力団の解散・壊滅

平成22年中に解散・壊滅した暴力団の数は228組織、所属する暴力団構成員の数は1,472人であり、このうち山口組、住吉会及び稲川会の3団体の傘下組織の数は181組織(79.4%)、所属する暴力団構成員の数は1,260人(85.6%)である。

(4)暴力団の指定

平成23年6月1日現在、暴力団対策法の規定に基づき22団体が指定暴力団として指定されており、22年中は、14団体(注3)が7回目の指定を受けた。

表2―1 指定暴力団一覧表(22団体)

注3:六代目山口組、稲川会、住吉会、四代目工藤會、四代目旭琉会(指定時は三代目旭琉会)、沖縄旭琉会、六代目会津小鉄会、五代目共政会、七代目合田一家、四代目小桜一家、四代目浅野組(指定時は三代目浅野組)、道仁会、二代目親和会及び双愛会


第1節 暴力団対策

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